その他
中国で市場開拓進むLinux
2005/03/14 15:00
週刊BCN 2005年03月14日vol.1080掲載
銀行からエネルギーまで、幅広い業種で活用
レッドフラッグ、クリス・ツァオ社長に聞く
ミラクル・リナックス(佐藤武社長)、中国レッドフラッグソフトウェア(クリス・ツァオ社長)、韓国ハーンソフト(ジョン・ジンビクCEO)の3社共同開発によるLinuxOS「Asianux(アジアナックス)」がバージョン2.0に進化、7月末からリリースされることになった。日中韓によるOSS(オープンソースソフトウェア)開発も進められるなど、東アジアでのLinux市場開拓が進んでいる。なかでも中国は、企業レベル、個人レベルでも今後のIT市場拡大に大きな期待がかかる。今回、来日した中国レッドフラッグのツァオ社長に、中国のLinux市場の展望などを聞いた。(川井直樹(本紙副編集長)●取材/文)
■中国の市場規模は約800万ドル 成長率も30-40%の見込み
──中国のLinux市場はこれまで政府系が中心と言われてきた。企業でのLinux活用も進んでいるようだが、中国全体でのLinuxのシェアは。
ツァオ サーバー市場で言えば30%程度をLinuxが占めている。デスクトップではやはりウィンドウズのシェアが大きく、Linuxはおそらく10%程度と小さい。レッドフラッグは、Linuxサーバー市場では50%以上のシェアを持っており、リーディングカンパニーとなっている。
2003年の中国のLinux市場は約800万ドルといわれている。04年の市場規模は、調査会社も発表していないが、当初年率50-60%の成長を予測し、やや下方修正しているが、それでも30-40%は市場が拡大する見込みだ。当社はその予測数値以上の成長を達成しており、初めて利益を出すことができた。
政府系だけではなく、銀行や保険、証券、教育、エネルギーなど広い業種でLinuxが活用されるようになってきた。ウィンドウズがセキュリティで様々な問題を抱え、企業OSには適さないと思われているなかで、中国では多くの企業がLinuxに移行している。
──中国政府がLinuxを支援している背景に何があるのか。
ツァオ ウィンドウズの中国での価格は2000元(約2万6000円)で、これは都市部の労働者の1か月の給与に相当する金額だ。さらにオフィスは4000元(約5万2000円)で、ウィンドウズとオフィスを併せて購入すると6000元(約7万8000円)になってしまう。非常に高額と言わざるを得ない。Linuxならばオフィススィートを加えても、10分の1程度の約600元(約7800円)で足りる。ウィンドウズやオフィスの価格は、中国では相対的に非常に高額というわけだ。このあたりに海賊版が出回る原因がある。
中国はWTO(世界貿易機関)加盟国であり、政府は政府系機関で海賊版など違法なソフトを使うことを厳しく禁じている。しかし、企業や個人レベルになれば衣食に事欠くようなこともある状況を考えれば、給料の何か月分にも相当するソフトは非常に高額だ。こうした状況を改善するには、価格の安いLinuxの方がメリットが大きいと考えているからだ。中国政府が違法ソフトの締め出しにかかっていることは、レッドフラッグにとってプラスになる面が多い。海賊版の代わりに金額的にも有利なレッドフラッグのLinux(紅旗Linux)を使ってもらえる期待がある。
■他社とは競合から協力の関係へ 世界の標準化団体とも連携
──中国でLinuxが普及しつつあることを狙って、競合ベンダーも中国に進出し始めた。
ツァオ レッドハットは最近北京にオフィスを構えたが、まだ規模的には小さい。ただ、2-3年前から中国進出を計画しており、今後事業が本格化してくれば強力な競合ベンダーになるだろう。
同じように中国国内のディストリビュータも規模が小さく、レッドフラッグと競合するというレベルまで達していないと考えている。しかし、これから重要なのは中国市場で競合するだけでなく、Linuxの市場拡大のために市場開拓で協力もしていくという姿勢だ。技術開発の面でも協力し、強くなっていくことでマイクロソフトに対抗できる勢力となることができる。
技術的な面では、当社は世界の標準化団体との関わりを深めている。フリー・スタンダード・グループ(FSG)のメンバーにもなっているし、最近ではOSDL(オープン・ソース・デベロップメント・ラボ)の3つのワーキンググループにも参加した。これらのコミュニティに参加することで、当社が技術的に認知されるとともに、標準化について当社も貢献できると考えている。
──アジアナックスもその1つと考えられるが、日中韓のOSS共同開発など、Linuxを中心として東アジア発の技術開発が進む機運が高まっている。
ツァオ IT分野では、今までは米欧が中心となって技術開発し標準化されてきた。しかし今、経済発展の中心はアジアに移ってきている。そのためソフトなど技術開発もアジアで行う方が有利になってきているのではないだろうか。私は、アジアの国々が、それぞれOSSの開発ができるような環境ができ、グローバルなIT企業との協力関係を緊密にして標準化にも貢献していくようになるべきだと考えている。
【中国政府、Linuxを積極的に活用】
●中心的な役割担うレッドフラッグ
日中韓によるOSS(オープンソースソフトウェア)の共同開発がスタートするなかで、日本のシステムインテグレータなどが注目していたのは、「中国政府でLinuxの活用が活発化している」ということだ。
これまでにも国家郵政総局(チャイナポスト)、中国科学技術院、国家安全部、全国総工会、国家科学技術部、中国烟草(チャイナタバコ)、北京市政府など、多くの国家機関でLinuxが採用されてきた。チャイナポストでは、「数千台のLinuxパソコンが活用されている」(クリス・ツァオ・レッドフラッグ社長)という。
これらのプロジェクトで中心的な役割を担ってきたのがレッドフラッグだ。レッドフラッグ=紅旗というのは、中国のナショナルフラッグ。中国政府のバックアップでLinuxの開発を進めてきた。レッドフラッグの設立は2000年6月。従業員は約100人。
レッドフラッグでは、LinuxOSや複数のOS上で稼動するアプリケーションソフトの開発とマーケティングを行っている。Linuxソリューションとして、レッドフラッグ・Linuxデスクトップ、ローエンドからハイエンドまで対応したレッドフラッグ・Linuxサーバー、組込みLinux、LinuxOSとレッドフラッグのプラットフォームを基盤としたセキュリティサーバーなども提供している。ただ、中国のLinux市場についてこれまで十分な情報が提供されてこなかったのも事実。日中韓OSS共同開発に関わるベンダーの担当者は、「中国政府の場合、セキュリティ、特に国防関連の要求でLinux開発を進めたと聞いている」とし、秘密のベールに包まれている面もあった。
日中韓でのOSS共同開発では、企業などでのOSS利用とともに政府調達にも大きな期待が寄せられている。中国政府はすでに実績があるが、韓国や日本ではこれからの段階。外圧に屈せずに、OSS開発利用が進められるかどうかが課題だ。
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