ERP(統合基幹業務システム)「グランディット」を開発・販売する次世代ERPコンソーシアム(幹事会社・インフォベック)は、4月1日からビジネスパートナーを通じたグランディットの販売を本格化する。ビジネスパートナーは、システムインテグレータを中心に来年度(2006年3月期)末までに50社に増やす。グランディットの今年度(05年3月期)の販売本数はコンソーシアム全体で約30社(受注ベース)の見込みだが、来年度はビジネスパートナーの活動が本格化するのを受け、100-200社、金額ベースで25-50億円の販売を目指す。
業種やエリア別の販売チャネルを整備
グランディットは、これまでコンソーシアムのメンバー8社による直販が中心だったが、4月以降はこれと並行してビジネスパートナーによる販売も本格化させる。ビジネスパートナーは、コンソーシアム8社がそれぞれ独自の戦略により募集する。重視する業種や業務、地域などによって、「メンバー各社が特色あるビジネスパートナーを募り、チャネル網を構築する」(インフォベックの山口俊昌・取締役マーケティングユニット)と、収益を最大化できる体制をメンバーが独自の判断で構築する。
販売チャネル網を整備すると同時に、コンソーシアム8社が得意とする業種・業務に向けたアドオン(追加)モジュールも4月以降、順次開発する。業種・業務に最適化したアドオンモジュールとメンバー独自の販売チャネル網との相乗効果を狙う。コンソーシアムのメンバーは建設業、アパレル小売業、医薬業、部品商社、総合商社など、業種・業務に特化したモジュールの開発を個別に進める。
コンソーシアム方式による大幅な開発コスト削減や、完全ウェブ対応というグランディットの製品力による差別化などを目的に結集した8社だが、本来は「市場での競合もあり得る“呉越同舟”」(グランディット関係者)といった側面も持ち合わせている。メンバーがコンソーシアムの利点を最大化すると同時に、この事業を巡っての競合を避けるため、メンバーによる個別のビジネスパートナー施策や得意分野の深耕戦略などを推進する。
一方で、コンソーシアム全体で取り組む施策もある。グランディットの基盤を強化するため、EDI(電子データ交換)ではインターコムと、連結決算ではディーバと、帳票管理ではウイングアークテクノロジーズとそれぞれの分野で提携するなど、特定分野で優れたノウハウを持つISV(独立系ソフトウェアベンダー)との連携を進める。すでに4社と連携しているが、来年度に向けてさらに「3-4社との提携」(山口・インフォベック取締役)を視野に入れる。
また、今年1月から「グランディット公式教育コース」を順次開設しており、4月以降、グランディットの販売・導入に関する資格認定制度を発足させる。コンソーシアムのメンバーや新しく加わるビジネスパートナーのスキルを向上させ、円滑な事業拡大につなげる狙い。来年度末までに1000人の受講を見込んでおり、販売チャネルの拡大とスキル向上を両立させる。
コンソーシアムでは、ビジネスパートナー網の整備や業種モジュールの拡充、ISVとの連携強化、スキルアップを目的とする資格認定制度などの施策により、来年度にグランディットの販売本数で100-200社(受注ベース)、金額で25-50億円を目指す。来年度中にはコンソーシアムのメンバーに新たに2社が加わり、計10社体制になる見込み。2008年度(09年3月期)には、国内中堅企業向けERP市場全体の約2割に相当する300億円の事業規模に拡大させる。“呉越同舟”を逆手にとって強みに転換できるかが成功のカギと言える。
■次世代ERPコンソーシアム
「グランディット」を開発・販売する次世代ERPコンソーシアムは、ITエンジニアリング、インフォコム、ウチダユニコム、NECネクサソリューションズ、オリンパスシステムズ、双日システムズ、ジェイアール東日本情報システム、日商エレクトロニクスのシステムインテグレータ8社で構成される。
コンソーシアムの幹事会社を務めるインフォベックは、インフォコムの子会社。インフォベックは2003年10月に設立され、04年10月までに財務会計や販売調達、人事給与などグランディットのフルラインアップのモジュールを揃えた。