日本情報技術取引所(JIET、二上秀昭理事長)の東京支部は、会員企業が今年1月末現在で577社で、JIETの総会員数の半数以上を占める大所帯だ。東京支部を代表する森川健一支部長・アイリス社長は、「地方支部の模範となるように運営していく」と、東京地区の会員増と商談会の改革を進めている。東京支部は、JIET設立当初は「本部扱い」だったが、2003年6月に独自予算を持つ支部へ昇格した。今後、会員獲得のためにどんな運営をしていくかなど、森川支部長に聞いた。
情報収集と人脈作りの場
■03年6月、予算持った支部に ――東京支部が設立された経緯を説明してください。
森川 1996年4月のJIET創立以来、東京支部は、「本部扱い」という位置づけで東京地区の「商談会」を実施していました。JIETとしては設立当初から、地方進出は大きなテーマとして取り組み、関西や九州などに地方支部を設立してきましたが、地方支部の場合独自予算で商談会を開催してきました。東京支部の予算は、本部の予算と扱いが一緒だったのです。
しかし、全国の地方支部がある程度確立されてくると、他支部と同じにした方が良いだろうということで、03年6月に本部から切り離し、東京支部を独立させました。
――東京支部に予算が配分され、活動自体はどう変わったのですか。 森川 それまでは、本部の理事が東京支部代表者の代行をしていて、スタッフも本部の人間が兼任していたわけです。
商談会開催までには、案件探しや商談会の案内配布など、結構繁雑な事務作業が必要なわけですが、支部予算を持ち専任スタッフを抱えることができるようになったことで、会員へのサービス向上が図れるようになりました。
――東京支部の会員企業は、現在何社ですか。また、東京支部には、求人案件が集中しているせいか、地方会員が東京支部の商談会に参加していますね。 森川 東京支部の会員企業は、今年1月末現在で577社あります。
JIETの仕組みは当初から、入会地域にかかわらず、1カ所への会費納入だけで全国の商談会に参加できるように作ってあります。ですから、地方支部に在籍していても、東京支部の商談会に参加することは自由です。本社が地方で、東京地区を中心に営業展開する会社が多いので、東京支部の商談会に地方会員が多数参加しています。
――全国の総会員数(1068社)の半分を抱える東京支部のJIETでの役割は重要ですね。 森川 東京支部の商談会は、基本的には地方支部の模範になるようにしていきたいと考えています。ただ、東京支部と地方支部の商談会は、必ずしもイコールではありません。地方支部は、会員数が最大でも150社程度で、案件の規模も違うので、地方独自のやり方があります。
たとえば、商談会当日に、案件を出した側と受けた側で、グループミーティングを実施しているなど、非常に密度の高い付き合いをしています。東京の場合、出席者が多いので、商談会当日にグループミーティングまで開くのは時間的に無理なんですが、会員の親密度を高めるには良い仕組みだということで、月に2回「ミニ商談会」を開くことにしました。
支部同士が切磋琢磨、良いところは取り入れていこうという意識は双方が持っていますね。
■横の情報交換こそ重要 ――ここのところIT業界の景気は良く、技術者不足が深刻なためか、JIETに頼らなくても食べていけるという声も聞こえてきますが。 森川 確かにそうおっしゃる方もおりますね。1万円はもったいないから退会させてくれと。
でも、それは心得違いだと言ってるんですよ。景気は変動するものですから、いつ案件不足の時代が来るかもしれない。そうした時に重要なのは、情報、人脈なんです。常に情報を集め、人脈を作っておくこと、経営者にとってこれ程重要な仕事はないわけでしょ。JIETの商談会、ミニ商談会はそうした場として最適だと思うんですよ。1万円が惜しくて、そんな最適な場を活用しないなんて、私にはちょっと考えられませんけどね。
――東京のIT技術者の人月単価が高いので、地方に案件を頼みたいという声もあるようですが。 森川 一時期、確かに東京は高かった頃があるんですが、この2、3年で様変わりしています。大手ベンダーのコスト切り下げ圧力が強くて、人月単価は確実に下がっています。
■JIETは開かれた場 ――大手ITベンターの間には、自社で下請け構造をつくり、ソフト会社を囲い込む動きもあるようですが。 森川 確かに「協力会」のような組織をつくる動きはありますが、私の想像するところ、最後の狙いはコスト削減対策なんだろうと思っています。がちがちの下請け構造の中に入ることが良いことなのかどうか、それは各社の判断ですが、少なくともJIETは開かれた場、勝手に言いたいことが言える場として運営されています。
たとえば、規模はそう大きくはありませんが、素晴らしいユーザーと取り引きして、しっかりとした仕事をしている会員も多いのです。私としては、そうした仲間を増やしていきたいですね。
現実に案件を数多く持っているのは大手ITベンターなので、そうしたベンダーさんとも仲良く付き合いながら、タテの関係だけでなく、中小ソフト会社のヨコの情報交換もできる場、それがJIETの役割だろうと考えています。
■理事会は侃々諤々 ――ところで、理事には手当は出るのですか。 森川 出ません。全くの無償奉仕です。私でも、月に4、5回はJIET回りの会合に顔を出していますが、二上さん(二上理事長)となると何十時間、JIETの仕事をしていることか。頭が下がりますね。
――理事会の議論は活発なんですか。 森川 それはもう。個性的な人が多いですからね、侃々諤々やり合ってますよ。二上さんは、俺のアイデアをつぶすのが理事会の役割か、と時々ぼやいてますが、最後はまとめておられる。人徳ですね。それに、理事全員が、勝手なことを言いながらも、JIETを何とか大きくしようという点では共通認識を持っています。
――ありがとうございました。【PROFILE】
1950年、北海道美唄市生まれ。拓殖大学商学部卒。73年、朝日エンジニアリングに入社し、電気・電子計測制御系の数値計算業務などに携わる。80年9月、29歳で、医療、金融などのシステム開発などを一括受注する芝情報開発(現・アイリス)を7人の技術者などで起業して社長に就任した。現在のアイリスは、従業員約100人。