オフショア開発と地方開発会社が脅威に
直接受注やパッケージ販売の開始も
ITベンダーの下請けでソフトウェア開発を手がける首都圏の中小ソフト開発会社が、変革を迫られている。オフショア開発や、相対的に開発コストの安い地方のソフト開発会社を活用するITベンダーが増えているのが要因だ。国内外問わずライバル企業が増えたことで、「案件は増えているが開発単価は下がっており、利益確保が難しい」状況だからだ。打開策として、エンドユーザーから直接受注するケースや、パッケージ販売を始める企業も出てきた。“単なる下請け開発”では生き残れないという危機感から、新たなビジネスに乗り出す動きもある。(木村剛士●取材/文)
■受託ソフト案件数は上向き しかし低価格化要求は続く 企業のIT投資が復活し、受託ソフト開発案件の数も「2003年頃から増えて、上向き傾向にある」と、中小ソフトハウスの意見は一致する。なかには、「開発者が足りず、案件がさばききれない」(日本ブレーンの菅原安広社長)との声もあるほどだ。ただ共通して言えるのが、「案件数は増えても低価格に対する要求は厳しく、単価は下がっている」という現実だ。ITベンダーからの下請けが中心で、営業力が乏しい中小の開発会社にとっては、低価格化要求に応じるしかなく、受託案件の数は増えても利益確保が依然厳しいわけだ。
低価格化傾向に歯止めがかからない理由として、「オフショア開発」と「地方のソフト開発会社」の存在を挙げる関係者は多い。
中国やインドをはじめとする海外のソフト開発会社を活用するITベンダーが増えた結果、受託開発が中心のソフトハウスにとっては、海外企業が競合となるケースが増えている。電子情報技術産業協会(JEITA)、日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA)、情報サービス産業協会(JISA)の3団体が共同でまとめた調査レポートによると、03年のソフト開発の海外へのアウトソーシング金額は、前年比で中国は167.3%増、インドでは230.8%増で推移している。
大手ITベンダーからの案件を中心に受託開発を手がけるソフト開発会社のトップは、「インドや中国のソフト開発会社を使えるノウハウもないはずなのに、要求してきた金額に応じなかったら、『オフショア開発を使う』と半ば脅してくるベンダーもいる」と嘆く。
一方で、地方のソフト開発会社を活用する動きも目立っている。オフショア開発を手がけるノウハウを持たないITベンダーが、首都圏のソフト会社よりも開発単価の安い地方の開発会社に外注先をシフトしているためだ。外注費削減の施策として、海外ソフト開発会社の代わりに、地方のソフト開発会社を活用し始めているのだ。
中堅システムインテグレータのシーイーシー(CEC、新野和幸社長)の猪狩正・事業企画本部副本部長兼企画推進部部長は、「コスト削減を狙いに、(外注先として)地方のソフト開発会社を活用していくことを検討している」と話す。日本の“開発文化”を熟知しており、言葉の壁もない日本企業の方が、たとえ海外企業より人月単価が高くても、十分コスト削減につながると感じている。
オフショア開発の代表的拠点、中国のソフト開発会社は、日本の首都圏の開発者に比べ、人月単価は約3分の1が相場。また、地方のソフト開発会社は、「首都圏のソフト開発会社に比べ20-30万円ほど人月単価が安い」(日本情報技術取引所の二上秀昭理事長)。
エンドユーザーからのコスト削減要求が厳しさを増すなか、オフショア開発と地方のソフト開発会社を活用していく傾向が強まるのは当然の成り行き。首都圏の中小ソフト開発会社にとっては、大きな脅威となっているのだ。
■利益確保はますます困難に“利益なき繁忙”からの脱却が急務 下請けでの受託ソフト開発事業がメインの情報処理システム研究所(諏訪長司代表取締役)は、この状況に危機感を感じ、新たなビジネスモデルを模索していた。その結果、自主営業によるエンドユーザーからの直接受託に乗り出した。
現在、売上高に占める下請けビジネスの比率は全体の70%以上だが、エンドユーザーからの案件を増やし、下請けビジネスとエンドユーザー向けビジネスの比率を半々にする方針で、自社の営業担当者を増やし始めた。20年以上の開発実績から、強みである建設業や人材派遣業を顧客ターゲットに、案件獲得に人的リソースを集中し始めた。
諏訪代表取締役は、「開発者の人月単価は下げ止まる可能性はあるものの、上昇に転じることは期待できない」と予測。「下請けビジネスに依存していたら、業績拡大どころか利益確保も難しくなってくる」と話す。
日本ブレーンは、当面は下請けでの開発事業に専念するため、下請けビジネスの人材補充を最大の課題としている。だが、エンドユーザー向けのシステム構築事業にも意欲を示す。自社開発したパッケージソフトを核にしながら、エンドユーザー向け営業体制の整備を進めていく考えだ。
小売業や医療分野を得意とするソフト開発会社、エスピック(島至社長)は、自社パッケージを中心にエンドユーザーからの直接ビジネスが、すでに売上高の半分を占めるまでに成長した。「『1人月いくら』というビジネスモデルからの脱却」(島社長)を標榜し、パッケージのラインアップを拡充してきたことが奏功している。
案件が増加しても“利益なき繁忙”に追い込まれているのが今のソフト開発産業の実態。オフショア開発と地方のソフト会社を活用する機運が高まっていることで、首都圏の中小ソフトハウスにとっては、ますます利益確保が難しくなりつつある。いち早く自社の強みを見つけ出し、いかにエンドユーザーと仕事ができるか。下請けからの脱却が一段と求められている。
 | オフショア経験企業は全体の23.1% | | | | | 電子情報技術産業協会(JEITA)、日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA)、情報サービス産業協会(JISA)の3団体が、それぞれの会員企業の中から251社を対象に行った海外取引に関する調査の結果によると、ソフト開発において「海外へのアウトソーシングを活用している」との回答は58社と全体の23.1%となった。 外国人技術者に期待する効果のトップは「人件費削減」で、次いで「開発要員の質および量の確保」となっている。 |  | 逆に、活用していない理由としては、「必要性を感じてない」が最も多かったものの、信頼できる外注先の確保や言葉の壁を不安要因に挙げる回答も上位に入った。活用したくても、ノウハウ不足からオフショア開発に踏み出せない企業もいるのが実態のようだ。 期待する効果では、コスト削減、開発者の確保に加え、「能力の高さ」を挙げる企業も約30%を占め、決して少なくない。技術レベルの高さを狙いにオフショア開発を活用しているベンダーも少なくないようだ。 | | |