日本情報技術取引所(JIET、二上秀昭理事長)の神奈川支部は、ほかの支部に比べると、加盟のシステム会社間で横の連携が緊密だ。会員数は現在117社。南出健治支部長は41歳。もっとも若い支部長だ。会員が連合して大型案件を共同受注する「バーチャル・カンパニー」構想を温めている。「コミュニケーションを重視、商談の後は必ず飲み会も設けている」と語る南出支部長に、神奈川支部の運営方針などを聞いた。
コミュニケーションを最重要視
■安定した会員数 ――JIETとの関わり、また、神奈川支部設立のいきさつを教えてください。
南出 JIETの存在を知ったのは、設立直後だったと思います。知り合いのシステム開発会社の社長から紹介され、すぐ入会しました。神奈川支部は、97年にスタート、私も発起人の1人ではあったのですが、1年後に「おまえ支部長をやらないか」と打診を受けました。最初は断ったんですよ。まず頭にあったのは年齢。30何歳だったかな、メンバーの中で一番若い。先輩を差し置いてという思いがありました。最適の人がいるでしょうとお話をしていたのですが、よく考えてみると、挑戦し甲斐のある仕事だなと思えてきて、引き受けることにしました。
――神奈川支部の現状、また特徴は。 南出 現在の会員数は117社です。会員数が安定しているのが特徴ですね。入会者の微増は続いていますが、退会者が少ないのです。
運営に当たっては、コミュニケーションを非常に重視しています。たとえば、商談会の後は、必ず情報交換会を開催しています。有り体に言えば飲み会ですけどね。ビジネスの基本は信頼関係だと思っています。この社長とならやっていけるな、というのは、表面的な付き合いではなかなか分からないところがあるわけですが、飲み会などを通じて本音で語り合えるようになると、そこが見えてくるようになります。
また、毎年4月には、座談会形式の勉強会を開催しています。会員の中には、金融業や、製造業に強い企業、組み込み系が得意な企業と、様々な企業がいるわけですが、そうした自分の強いところの業界の現状を紹介し合うという形を取っています。
■下請け構造はいずれ崩れる ――ところで、現在のシステム開発業界の現状をどう見ておられますか。下請け構造、ピラミッド構造は崩れそうで崩れていませんが。 南出 少し、私の会社(オーパシステムエンジニアリング)の宣伝をさせていただきますと、大学3年の時、親父(南出健一社長)に相談されて、会社創立メンバーに名前を連ねました。21歳だったかな。オフコンのシステム開発などを手がけてきたんですが、私自身はパッケージシステムをやりたいとずっと思ってきました。受託開発というのは、堅いビジネスです。でもそれは、リスクを負わないことの裏返しなんですね。下請け構造の中にいると、気を遣うのは親会社だけで良いのです。でも、私自身は、こういう世界に安住したくないとずっと思ってきました。
それで、生産管理に絞ったパッケージシステムの開発に力を入れてきたんですが、それがやっと形になってきました。4年前に、Working.NET(ワーキング・ドットネット)として商品化したのですが、OBCさんの奉行シリーズのアドオンシステムとして認知された昨年から倍増ペースの伸びを見せ始めています。ここに来るまでに20年かかりましたが、リスクもある代わり、大きな見返りも期待できる世界に入ることができたと考えています。
受託システム開発業界の現状については、今のピラミッド構造は早晩、大きく変化するだろうと考えています。
製造業の場合、がちがちの下請け構造=世界に名だたる「ケイレツ」がバブル崩壊、製造業の国内空洞化現象と同時に、がらがらと崩れていったわけですが、下請けの中でも本当に力のあるところは、ちゃんと生き残り、新たな展開、発展を始めています。
それと同じ現象が、システム開発の世界でも起こるでしょう。今の業界構造というのは、20世紀のメインフレーム全盛時代に築かれたままだと思うのです。
システム開発の方法論も変わってきていますので、ピラミッド構造の破壊から再構築のシナリオが進むと思っています。
■システム開発はブランドビジネスだった ――ここ数年、大手システム開発会社の苦戦が目立ちます。背景には何があると見ますか。 南出 お客様がコンピュータシステムが本当に役に立つのかどうか、投資に見合うリターンがあるのか、非常にシビアな目で見るようになったのです。これは我々の業界が他の業種と同じような成熟産業になってきたということだと思います。
私もパッケージビジネスを始めて、これまでのシステム業界というのは、「ブランドビジネス」の世界だったと改めて痛感しているんです。言ってみれば化粧品と同じですね。原価は200円、これを1000円で売り出したら売れなかったのに、1万円にしたら売れ出したという話があります。
弊社の製品であるWorking.Netは、メインフレーマーと呼ばれるメーカーや海外製のERPと呼ばれる生産管理パッケージと対等以上に戦えるんです。彼らのシステムは非常に高価ですが、高いがゆえに信用しても良いだろうというムードがずっと続いてきました。
ところが、弊社のシステムを使ってくださったユーザーは、最初は安いゆえに心配したが、大丈夫だった、本当にいい買い物をしたと喜んでくださいます。こうしたユーザー事例が増えていますので、大手・ERPベンダーは怖くないというのが、私の今の実感です。
――JIETの会員の多くは、中小としてくくられる方々だと思いますが、そうした層には厳しい時代が来ると。 南出 それは2つの側面があると思います。切磋琢磨していないところは厳しくなるかもしれませんが、本当に力を持っているところは飛躍のチャンスになるはずです。
製造業と同じことがシステム開発業界にもいえるなと感じています。企業規模の大小に関係なく、努力し、力のあるところは伸びる、そんな業界にしていきたいというのが、私の考えです。その1つのステップとして、理事会の場などでは「バーチャル・カンパニー」構想を唱えています。
■バーチャル・カンパニーに活路 ――バーチャル・カンパニーですか。どんな構想なんですか。 南出 中小とひとくくりにされる企業の中にも、確かな技術を持った企業はたくさんあります。こうした確かな技術を持った企業が、連合し共同受注する道はあるはずだというのが私の考えです。1社10人の技術者でも、10社集まれば100人/月の仕事ができるようになります。そのためには経営者同士が信頼しあえないといけませんが、バーチャル・カンパニーを何とか形にしたいというのが私の願いです。
――最後に、JIET会員になって良かったと思いますか。 南出 それはもちろんです。いろいろな人に巡り会え、啓発しあえるようになったのは、JIETのメンバーになったからです。私も無給の支部長ですが、今後もJIET発展のために微力を尽くしていくつもりです。
――ありがとうございました。【PROFILE】
1963年、横浜市生まれ。41歳。和光大学人文学部芸術学科卒。大学3年の時、父親以下3人で、横浜市中区にオーパシステムエンジニアリングを設立。創立当時は、オフコン用のシステム開発からスタート、「下請け仕事のうまみ、つらさ」をあじわって来た。4年前にパッケージビジネスを開始し、生産管理システム「Working.NET(ワーキング・ドットネット)」を市場に投入、「倍増ペースの伸び」を見せている。02年、専務取締役に就任。従業員約20人。