その他
PDA、業務用端末に活路 セキュリティニーズで需要高まる
2005/04/18 15:00
週刊BCN 2005年04月18日vol.1085掲載
国内PDA(携帯情報端末)市場は、これまで全体の大半を占めてきたソニーが撤退することで、コンシューマ市場の減衰にさらに拍車がかかることになりそうだ。店頭での販売を続けるシャープは今後も「ザウルス」の積極的な展開を続けるとしており、これまでのノートパソコンと携帯電話の中間のようなイメージの払拭を狙って、ビジネスマン向けの新機能を搭載する方針を示している。一方、法人向けのPDAビジネスは堅調だ。セキュリティニーズの高まりへの対応やソリューション開発で、今後さらにビジネス市場で受け入れられるという見方も出て来た。(田澤理恵●取材/文)
ベンダー各社、カスタマイズで差別化へ
■シャープはコンシューマ向けを継続
PDA市場の大半を占めているソニーが今年7月以降の生産販売中止を明らかにしたが、ソニーと同じくコンシューマ市場に製品を投入しているシャープは、ビジネスの継続を明確にしている。昨年11月に続き今年3月にも新製品を投入した。「パソコンや携帯電話、電子辞書などの専用端末と異なる新たな製品に育てる」(情報通信事業本部移動体通信事業部新モバイル端末開発プロジェクトチーム)方針を打ち出し、積極的な販売を続けていく。また、PDAの殻を破る新たな戦略で従来のイメージを払拭していく方針も示している。
一方、法人向けPDAのベンダーはビジネス拡大に前向きだ。日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、2002年の旧コンパックコンピュータとの合併を機に店頭販売を終了した。コンシューマのPDA用途は「いずれ携帯電話に置き換わる」(山上正彦・日本HPパーソナルシステムズ事業統括モバイルビジネス本部プロダクトスペシャリスト)としてビジネス用途を見込み、法人向け戦略にシフトした。現在、売り上げの8割が法人向けとなり「前年同期比60%増」と好調だ。今年、住友信託銀行向けに「指紋認証機能付きPDAを納入した反響が大きい」など、個人情報保護法施行に関連した需要が拡大しているという。
■業務用は「年間10-20%の伸び」
早くからビジネス向けに軸足を移したカシオ計算機は、PDAやハンディターミナルのハードウェアと業種別のアプリケーションを合わせたソリューション型の事業戦略を強化する。「ハードウェアだけの販売では価格競争に巻き込まれる」(手塚裕一・カシオ計算機システムソリューション営業統轄部企画推進部モバイル企画室室長)として、ソリューションを組み合わせることで差別化を図る。案件は、「企業のシステム刷新や4-5年に1回の割でリプレース需要が発生」しており、業務用PDA事業は「年間10-20%の伸び率で成長」する。急激な市場拡大ではないが安定した成長が期待できるという。
日立製作所は、PDA本体を今年2月に入って全面的にシャープからの調達に変更した。「端末はバリエーションの1つ」(荒井達郎・ソリューション統括本部ビジネス部産業流通・間接販売担当部長)に過ぎないことから、ハードウェアの開発には投資をしない考えだ。2月から新たに「モバイルソリューション」として展開を始め、今年度(06年3月期)モバイルソリューション事業全体で売上高約150億円を目指す。
さらに、4月から販売を開始する記憶装置を内蔵しないセキュリティパソコン「フローラSe210」の「セキュアクライントソリューション」の商談から「最終的にPDAを採用する」(同)というケースも出てくることを期待する。セキュリティパソコン1台26万円に対して、PDAは9万円程度。「コスト面で再評価」され「PDAでも十分戦力になる」として、新たな需要発生につながることを狙っている。
法人向けにシフトした各社はカスタマイズによるソリューション強化で差別化を図っている。「導入事例の反響から新規契約に結びつくケースが多い」(日本HPの山上プロダクトスペシャリスト)ことや、「これまで以上に使い勝手が良くなっている」(日立の荒井担当部長)という。「携帯電話では小さすぎ、ノートパソコンでは大きすぎる」という需要には、PDAが企業の目的に応じてカスタマイズできることや使い勝手の良さが再認識されつつあると、PDAに残留するベンダーは実感している。
国内PDA(携帯情報端末)市場は、これまで全体の大半を占めてきたソニーが撤退することで、コンシューマ市場の減衰にさらに拍車がかかることになりそうだ。店頭での販売を続けるシャープは今後も「ザウルス」の積極的な展開を続けるとしており、これまでのノートパソコンと携帯電話の中間のようなイメージの払拭を狙って、ビジネスマン向けの新機能を搭載する方針を示している。一方、法人向けのPDAビジネスは堅調だ。セキュリティニーズの高まりへの対応やソリューション開発で、今後さらにビジネス市場で受け入れられるという見方も出て来た。(田澤理恵●取材/文)
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