その他
e-Japan戦略は進んでいるか
2005/04/18 15:00
週刊BCN 2005年04月18日vol.1085掲載
評価専門調査会、第4次中間報告書まとめる
「IT利用環境指標」と「成果指標」を提案
e-Japan戦略の取り組みを評価する評価専門調査会(庄山悦彦座長=日立製作所社長)がこのほど、第4次中間報告書をまとめた。「5年以内に世界最先端のIT国家になる」との目標を掲げてスタートしたe-Japan戦略も節目の年を迎え、来年3月の時点で5年間の取り組みを総括する必要があることから、専門調査会ではインフラ整備など利用環境の整備状況を評価する「IT利用環境指標」29項目、国民や企業の利用状況などの成果を評価する「成果指標」39項目を提案した。今後は、報告書でも指摘しているように、各府省などから指標の妥当性を巡って議論が活発化する一方、残り1年、より具体的な成果の実現に向けて評価指標を意識した施策が展開されることになりそうだ。(千葉利宏(ジャーナリスト)●取材/文)
■「06年以降にさらに飛躍するために」国家IT戦略の積極的推進が目的
小学校の通信簿を見ると、国語、算数など教科ごとに具体的にどのような項目で評価したかが示され、それぞれ「よくできました」、「できました」、「もっとがんまりましょう」などと評価される。中学、高校と進むに連れ、教科ごとひとまとめに5段階などの数字でバッサリと評価されるようになるが、「育てていく」と「ふるい分ける」との考え方の違いもあるだろう。
第4次中間報告書では、冒頭に「これまでの取り組みの総括を行うのは、2006年以降にさらに大きく飛躍するためである」との認識を確認した。特殊法人改革のように悪い点数をつけてふるい落とすのが目的ではなく、06年以降も国家IT戦略を積極的に推進し、市場や産業を育て、人材を育成し、利用者の利便性、国際競争力を高めていくための評価であることを改めて強調。その共通認識のうえで、スケジュール通り、節目となる06年3月のちょうど1年前に、具体的な評価指標(案)を示したわけだ。
評価指標は大きく2つに分かれている。1つは、情報通信インフラや法律・制度などの整備状況、サービスの導入状況などを評価する「IT利用環境指標」。もう1つは、情報通信インフラなどを活用してどのようなサービスが実現して利用されているかを評価する「成果指標」である。具体的な指標の抽出は、これまで政府や各府省がe-Japan戦略I、IIやe-Japan重点計画などのなかで打ち出してきた政策・施策の考え方や目的を踏まえながら、指標として適当なものを導き出した。評価される側の政府や各府省としても、これまで勉強してきたはずの問題ばかりが試験に出て評価されるわけで、今になって「ちょっと、その問題を出題するのは止めて」と逃げるわけにもいかないところだ。
具体的に、どのような評価指標が提案されたのか。「IT利用環境指標」は、主にインフラ整備に取り組んだe-Japan戦略I(01年1月策定)に基づいて、ネットワークインフラ整備、電子商取引、電子政府など重点5分野の環境整備状況について、国際比較も踏まえながら評価できる指標とした。
例えば、電子政府に関する指標は、電子申請が利用可能かどうかを示す「電子申請システム整備率」、実際にどれぐらい利用されているのかを示す「法人・個人の申請における電子化率」、行政の効率化や簡素化への取り組み状況を示す「業務・システム最適化計画策定率」など7項目を提案している。
「成果指標」は、IT利活用に踏み込んだe-Japan戦略II(03年7月)の医療、食、生活など先導的7分野のなかから抽出した。分野ごとに「実現したいこと」が具体的に明記されており、時間の短縮、コストの削減、質(満足度)の向上などの成果をあったかどうかを見ることができる指標とした。
先導的7分野の中にも電子政府の項目が含まれているが、成果指標としては「電子政府・電子自治体ポータルサイトの活用度と利用者の満足度」、「申請手続きにかかる費用・時間」、「システム導入・更改後における固定的支出の削減率」などを提案。IT利用環境指標と比べると、利用者の便益や、経費削減などのより具体的な成果を求める指標となっている。
■政府と府省のやる気をどう引き出すか、提言の施策への反映が課題
今後の課題は、評価指標ごとの“点数のつけ方”と、それに基づいた“指導方法”をどうするかだろう。もちろん先生と生徒の関係とは違うわけだが、e-Japan戦略の「更なる大きな飛躍」に向けて、客観的な評価を国民に示すとともに、政府や各府省のやる気を引き出していく必要もある。あまり明確な点数をつけると役所が反発しそうだし、不明確では国民にとって判りにくく、悩ましいところだ。また、評価指標も、簡単なものから難しいものまで難易度はさまざま。一律に評価してしまうと、各府省が点数を取れなさそうな施策を敬遠する恐れも出てくる。困難な課題にも積極的に挑戦できるような点数のつけ方が必要かもしれない。
第4次報告書では、「指標を定める真の目的は、評価にともなう改善(Action)をもたらすこと」と言い切っている。専門調査会は「ナビゲート」という表現を使っているが、PDCAサイクルの考え方を定着させ、回していくための“指導方法”をどうするかがポイントになるだろう。昨年9月にまとめた第2次中間報告で、フィッシュボーン(魚の骨)と呼ばれる特定要因分析の手法で、課題を可視化して体系的に整理する方法を導入した。
昨年12月の第3次中間報告書では、医療についてこの手法を使った分析を試み、今後の取り組みへの提言を行った。この提言内容は、厚生労働省の「標準的電子カルテ推進委員会」が3月末にまとめた最終報告(案)の中にもきちんと書き込まれるなど、PDCAサイクルが回り出す兆しも出てきている。特定要因分析を行った上で、成果指標の達成度合いを見ることで、「制度的なボトルネックが明らかにできる」とも指摘しており、専門調査会では成果指標を上手く使いながらボトルネックの解消を図っていくことを狙っているようだ。
これまでの中間報告書では、注目度が高い特定分野について重点評価を行ってきたが、今回もIT戦略本部からの要請で「教育・人材」について重点評価を実施した。「学校の情報化」、「あらゆる人の情報アクセス向上と各場面におけるIT利活用の促進」、「国際競争力向上につながるIT人材の高度化」、「遠隔教育による個に応じた多様な学びの実現」の4つについて、課題解決に向けた提言を行っており、今後の施策にどのように反映されるか注目される。
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