その他
進まないプリンタのリサイクル
2005/04/25 15:00
週刊BCN 2005年04月25日vol.1086掲載
低価格と間接販売がネックに
パソコンに続き周辺機器の義務化も予想
企業にとって重要な経営課題の1つに「環境」がある。環境負荷を低減し、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出をいかに抑えるか──環境経営は21世紀を生きる企業にとって不可欠だ。コンピュータや周辺機器などIT関連企業の多くが環境対策に熱心で、毎年の「環境報告書」の作成やCO2排出抑制、リサイクルといった環境対策に積極的だ。そうした企業でも、プリンタのリサイクルとなると手詰まりの様子を見せている。(川井直樹(本紙副編集長)●取材/文)
■回収は自治体の一般廃棄物ルート、リサイクル素材はコスト面に課題
2003年10月にスタートした家庭系パソコンのリサイクル。04年度(04年4月-05年3月)の回収台数は22万7677台。四半期別の回収台数をみると、四半期ごとに上昇している。
家庭系パソコンのリサイクルを推進しているパソコン3R推進センターによれば、「回収の際に、プリンタはどうすればいいのか、という問い合わせがよくある」(海野隆・理事・事務局長)という。パソコンを買い替えたついでにプリンタも買い替えるというのはよくあるケース。また、年賀状をつくる時期になって、新しいプリンタに買い替えるというユーザーもあるだろう。
こうして発生する廃棄プリンタについて、現段階ではリサイクルするルートはない。自治体が行っている一般廃棄物の回収に頼るしかない。家庭系パソコンについては、リサイクル費用が本体やディスプレイなどにより、メーカー回収の場合でデスクトップ本体およびノートブックが3150円、CRT(ブラウン管)ディスプレイが4200円などと決まっている。
関係者によれば、「パソコンに対して周辺機器であるプリンタのリサイクルが義務化されないのは、価格が安いためでもある」という。一般的なパソコンの価格は10万円程度から30万円程度。家庭用で一般的なインクジェットプリンタは、その10分の1程度の価格だろう。
プリンタでもリサイクル可能な素材を回収するためには、いずれにせよ手分解が必要となる。そのためのコストを負担しなければならないとすれば、リサイクル費用もパソコンに近い金額になるだろう。もともとの製品価格が安いため、リサイクル費用は割高感を与える。
セイコーエプソンの神林事業所(長野県松本市)は、プリンタなどの修理・保守の拠点。それに加え、リサイクル拠点であるエプソンエコロジーセンターもあり、パソコンだけでなくプリンタのリサイクルを実施する。
リサイクルの事業主体であるエプソンロジスティックスは、一般廃棄物と産業廃棄物の中間処理業の許可を得ている。そして、中部・北陸エリアの事業系顧客やエプソン社内の使用済み情報処理機器の分解・リサイクルを行っている。対象はコンピュータからプリンタ、スキャナ、デジタルカメラ、液晶プロジェクタと同社の商品を網羅する。
プリンタもプラスチックや金属など、リサイクル可能な素材を多く用いて作られている。スキャナを一体化した複合機では、ガラスベッドに使われるガラスも発生する。手分解により分けられた素材だが、「ガラスなどは引き取り手がない」(市川武治・セイコーエプソンCSR・環境本部地球環境推進部課長)と、回収した素材のリサイクルに手を焼いている様子。
実は、リサイクルの難しさはそこにある。リサイクル素材の使用にはコストの面を含めて限度がある。通常、バージン素材に比べてリサイクル素材は割高だ。廃棄物の回収量を上げて再生原料を“生産”しても、需要がなければ販路はない。廃棄物の運搬や回収にはエネルギーが必要となる。あるリサイクル関係者が言うように、「地球環境負荷という収支から見た場合、廃棄物として扱った方がいい場合もある」ということも事実である。
企業の多くは、「パソコンリサイクルや家電リサイクルのように法制化されない限り、手出しできない」との本音も聞こえる。エプソンの場合も、産業廃棄物削減のための取り組みとして、周辺機器もリサイクルしている。しかし、「リサイクル技術やリサイクルしやすい設計や開発など、得るところは多い」(中野清美・セイコーエプソンCSR・環境本部地球環境推進部課長)というメリットを追求することも重要だ。
■沖データ、ポイント制で消耗品回収、中古部品リユースも検討
これまでプリンタ部品のリサイクルで一般的なのは、レーザープリンタのトナーカートリッジやインクジェットプリンタのインクカートリッジなどの消耗品。その一方で、本体や機構部品のリサイクルには積極的に乗り出していない。その理由の1つが販売形態にあるという。
同じOA機器でも、複写機のリサイクルは業界挙げての取り組みにより回収・リサイクル率が高い。「複写機はリース販売がほとんどで、ユーザーの所在地や機種、使用台数や交換の時期などがはっきりしている」(業界関係者)のが理由だ。プリンタの場合、個人ユーザーはもちろん、企業ユーザーに対してもほとんどが代理店を通じての売り切りだ。
沖データは3月から、新ラインのページプリンタ「Cシリーズ」の発売に合わせて、業界で初めて消耗品回収のポイントプログラムを開始した。トナーカートリッジや感光ドラムなどの消耗品回収を申し込むことで、ネットマイルの特典と交換できるポイントを付与する制度。沖データNIP事業本部サプライ事業部の藤崎治事業部長によれば、リサイクルの推進というよりは、「交換トナーなど純正品の使用を促すため」という。しかも、「代理店販売でメーカーには顧客のデータがない。ポイント制で顧客を把握し、サービス充実にもつなげる」ことを目指している。
沖データのポイントプログラムの登録ユーザーは、現段階では200人程度。今後、ユーザー数を増やすために、「サーバーなど社内システムを強化していく」(藤崎事業部長)考え。さらに、中古市場にも注目している。「中古の本体をオーバーホールして寄付したこともある。中古部品のリユースなどのニーズが出てくる可能性はある」(同)という。
レーザープリンタ、インクジェットプリンタとも、家電や家庭系パソコンのように法律でリサイクルが義務付けられているわけではない。しかし、「周辺機器に対してもリサイクル制度が始まることも十分考えられる」(セイコーエプソンの市川課長)というように、「いずれは…」という認識では一致しており、その準備も進められているようだ。
| |||||||||||
続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。
(登録無料:所要時間1分程度)
新規会員登録はこちら(登録無料) ログイン会員特典
- 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
- メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
- イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。 - 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!…etc…
- 1
