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“旧態依然”からの脱却を JISAの新会長に棚橋康郎氏就任
2005/06/06 15:00
週刊BCN 2005年06月06日vol.1091掲載
ソフト開発は旧態依然とした体質から抜け出さなければならない──。コンピュータベンダーやシステムインテグレータ(SI)、ソフトハウスなどは、そう考えている。「情報化ニーズが高まっているのに利益が出ない」、「仕事はあっても、納期遅れや赤字プロジェクトになっている」──。自社の業績を精査して、頭を抱える経営者は少なくない。中国やインドでのオフショア開発により、人件費を抑えることで黒字を確保する方法も“改革”の1つだろう。しかしこれでは技術の蓄積はできない。日本のソフト産業はどう変わるつもりなのだろう。(川井直樹(本紙副編集長)●取材/文)
IT需要拡大の波に乗れ
■「十分な成果をあげているとはいえない」
5月30日。情報サービス産業協会(JISA)の新会長に棚橋康郎・新日鉄ソリューションズ会長が就任した。棚橋会長は、就任の挨拶で「問題点を解決し魅力ある産業に、日本の情報サービス産業はならなければならない」ことを強く訴えた。しかし、その情報サービス産業界にあって、「旧態依然とした体質を改めるために、思い切ってJISA役員の若返りを図るべきだろう」と皮肉な目を向ける若い経営者もいる。あるSIの経営トップは、「人月単価とかこれまで何度も改めようという動きはあった。しかし、何も変わらなかった」と笑う。本当に業界が改革を求めてきたのか、というわけだ。
2005年2月、JISAは「新たなJISAの役割と使命について」(最終報告)をまとめた。これをまとめた「JISAの役割と使命に関する委員会」の委員長を務めたのが、棚橋新会長。こうなると、「結局、棚橋さんが引き受けるしかない道筋ができた」と業界内ではその報告書の“重さ”を実感している。
「新たなJISAの役割と使命について」と題する報告書。IT化が進む社会でニーズは拡大していながら、それでも採算性の悪化に苦しむ企業が多いことなどを業界全体の問題として、「業界自らの向上」に対して、これまでのJISAの活動は「十分な成果をあげているとはいえない状況」だった。
産業構造の改革の障害として、「情報サービス産業の国際競争力を強化する活動が行われていない」とし、その原因の1つに、JISA会員企業の中に「プライムコントラクタ企業とサブコン企業が混在している」ことを挙げたり、報告書は業界の体質批判を含めて、相当厳しい内容となっている。これを見た会員企業の関係者の中には、「その通り」と快哉を叫ぶ向きもあるが、その内容に露骨に嫌悪を示す経営者もいる。「言うことはもっともだが、難しいことばかり」と眉をひそめる。
この報告書をまとめたことが今回の会長就任につながった、と見る会員企業のトップは少なくない。「あれだけの報告書をまとめた委員長なのだから、自ら改革の先頭に立つべきだろう」という声が聞こえてくる。
■“産業の空洞化”の声も
しかし、実際問題としてソフト開発の多重下請け構造は存在するし、ユーザーのセキュリティ強化などIT化は進めたいが、なるべく投資はしたくない、という体質も変わらない。かつてハードは高価で、ソフトは付属品扱いだった。今ではハードの低価格化が進み、システム構築やソフト開発までも低価格化の要求は激しくなっている。コストの安い方法を探して海外へのシフトも進み、言葉は古いが“産業の空洞化”もささやかれている。
企業や公共分野、そして家庭でもIT化は進み、そのためのシステム開発ニーズは確実に今以上に高まってくる。それでもソフト開発企業の採算性を云々しているようでは、国際競争に勝てるはずがない。SI業界の誰もが、業界の姿を「旧態依然としている」と認識している。しばしば建設業界との類似性も持ち出されることでも分かる。
ITは企業経営の基盤であり、国家の基盤ともなる。それを支えるSI業界が、業績悪化に苦しむ矛盾は早く解決されなければならない。
ソフト開発は旧態依然とした体質から抜け出さなければならない──。コンピュータベンダーやシステムインテグレータ(SI)、ソフトハウスなどは、そう考えている。「情報化ニーズが高まっているのに利益が出ない」、「仕事はあっても、納期遅れや赤字プロジェクトになっている」──。自社の業績を精査して、頭を抱える経営者は少なくない。中国やインドでのオフショア開発により、人件費を抑えることで黒字を確保する方法も“改革”の1つだろう。しかしこれでは技術の蓄積はできない。日本のソフト産業はどう変わるつもりなのだろう。(川井直樹(本紙副編集長)●取材/文)
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