変化するCOMPUTEX台北2005
台湾企業の底力が見え隠れ
5月31日から6月4日までの5日間、台湾最大のトレードショーとして名高い「COMPUTEX台北2005」が開催された。これまでは米国や欧州などからの来場者が大半を占めていたが、今回は中国やロシア、中東などからの来場者も多かった。こうした地域は、台湾企業がビジネスを拡大するうえで重要地域に挙げる国ばかり。COMPUTEX台北は“商談を行う場”として知られているだけに、台湾企業と取引するために来場したバイヤーも多い。中国との関係を深めている台湾のIT関連メーカーが、一方ではグローバルビジネスを加速させている姿が垣間見えた。(佐相彰彦●取材/文)
■参加1288社、2853小間を出展 来場者は前回に比べ8%増 「COMPUTEX台北2005」は、参加企業数が1288社と昨年を若干下回ったものの、ブース数は2853小間で過去最高。台北世界貿易センターのホール1からホール4までを使い、台湾の大手組立パソコン用パーツメーカーをはじめ、米国や日本など海外ITメーカーなど多くのベンダーが出展した。台湾最大のトレードショーといわれているだけあり、大規模なイベントになった。
ホール1は、液晶ディスプレイをはじめ、デジタルカメラ、プロジェクタなどのパソコン周辺機器やメディアなどを展示する企業が中心。台湾の大手パソコン周辺機器メーカーのベンキューが大きなブースを設置していたのが目立った。
ホール2では、アサステックやギガバイト、エーオープン、シャトルなど大手パーツメーカーがマザーボードやベアキットPCなどの新製品を出展していた。
ホール3は、台湾ベンチャー企業がブースを連ねた。キャラクター入りのベアキットPCやPCクーラー、アップルコンピュータの「マックミニ」に似たデスクトップパソコンなど、独自色を強く打ち出した製品を展示して会場を盛り上げる。ホール4では、インテルなど大手チップメーカーや通信関連機器メーカーが製品を展示。また、韓国や香港、マレーシアなど海外出展社がパビリオンを設置した。
来場者数は、5日間を通じて前回に比べ1割弱増え2万8254人。COMPUTEXの事務局を務める台北コンピュータ同業協会(TCA)によれば、昨年までは米国や欧州、日本などからの来場者が大半を占めていたが、今年は例年と異なり、インドや中国、東南アジア、ロシアなどからのバイヤーが多かったという。
■米国や欧州以外に活路 各社、グローバルビジネスに拍車 これまで台湾企業は、米国企業や欧州企業が中国市場に参入するための“橋渡し役”となる面もあった。そのため、昨年のCOMPUTEXまでは中国参入の販路を作ろうとする欧米企業の関係者が多かったという。今回、ロシアや東南アジア、中国など今後IT市場拡大が見込まれる地域からの来場者が多かったのは、台湾メーカーが自社ブランド製品を次々と開発して世界に名を売り出し始めており、ワールドワイドでのビジネスを拡大しようと力を入れているためだ。
ギガバイトでは、「これからIT需要が伸びる地域は、大きなビジネスチャンスが訪れる地域でもある。まずはリーズナブルな価格の中位機種や下位機種などを市場に投入して知名度を上げていく」(デビット・チャン・ゼネラルマネージャー)としており、中東のマザーボード市場で45%のシェアを獲得してトップに君臨するだけでなく、ロシアでは40%、アフリカ地域でも35%などと高いシェアを獲得している。
ベンキューも、「フォーカスエリアを定め、グローバルビジネスの拡大を図る」(ケイ・ワイ・リー会長兼CEO)考え。なかでも中国市場は、「機能面やデザイン面にこだわるユーザーが増えており、付加価値の高い製品が多く売れる」(ピーター・チェン副社長)と、利益につながる地域と捉えている。
米国や欧州のメーカーのOEM(相手先ブランドによる生産)をビジネスの主軸にしていたパーツメーカーは、OEM先の市場が成熟しつつあり、ビジネスとしての“旨味”が薄れてきている。
欧米や日本でのビジネスについてギガバイトは、「シェア増加を狙わずに、高機能製品の発売に専念する」(チャン・ゼネラルマネージャー)方針を掲げており、こうした地域向けに習得した品質や技術などのノウハウを生かし、将来は発展途上国向けにも高付加価値製品を投入することを目論んでいる。
これらベンダーは、中国をはじめとしてロシアや東南アジアなどのIT未開拓市場でビジネスを拡大するための販路の整備など、虎視眈々とグローバルビジネスを加速する準備を進めてきた。
来場者に変化が表れた点では、台湾企業が自社ブランドの販売で世界中で知名度が上がっているということが挙げられる。今回のCOMPUTEXは、台湾企業のグローバル戦略が着実に成果をあげていることをはっきりと示したイベントとなった。
 | COMPUTEX台北 | | | | | 台湾最大のトレードショー。毎年、1000社以上の企業が参加する。組立パソコン用パーツをはじめ、パソコン周辺機器メーカーが最先端技術を駆使した製品を展示する。 来場者は海外のバイヤーなどが多く、その大半は取り引きを行うことを目的として訪れる。会場内は、日本で開催されるIT展示会とさほど変わらないものの、商談をする場として積極的に活用されているという点では大きく |  | その性格が異なっている。 今回は開催25周年を迎えた。オープニングセレモニーでは、共同主催団体である対外貿易発展協会(TAITRA)の許志仁董事長と台北コンピュータ同業協会(TCA)の黄崇仁理事長が登壇したほか、馬英九台北市長と謝長廷行政院長が来賓として招かれた。さらに、台湾のIT企業の研究および商品開発を奨励するために設けられた「優秀製品賞」の表彰式なども会期中に行われた。 | | |