その他
JISA、厳しい環境での船出 新体制発足、“魅力ある産業”目指す
2005/06/20 15:00
週刊BCN 2005年06月20日vol.1093掲載
情報サービス産業協会(JISA)は6月10日、東京都内のホテルで、棚橋康郎新会長(新日鉄ソリューションズ会長)体制が発足して初の正副会長会議を開いた。新しいJISAの体制では、5つある委員会を6人の副会長が分担して代表する形を初めて採用するなど、これまでとは委員会のあり方も異なる。ソフト・サービス産業を取り巻く環境が厳しくなるなかで、JISA新体制の船出は決して順風満帆とは言えない。役員の発言の中にも、これまでのJISAのあり方に対する批判も飛び出してくる。(川井直樹(本紙副編集長)●取材/文)
国際競争力、透明性ある取引など課題山積
■5つの委員会を新たに設置
6月10日に開かれた初めての正副会長会議で、2005年度の事業計画が承認された。
この中で委員会については「企画委員会」、「法制度委員会」、「技術委員会」、「取引・市場委員会」、「国際委員会」の5つが新たに設けられた。今回の新体制で特徴的なのは、それぞれの委員会を6人の副会長が分担して代表を務めることだ。
まず、企画委員会。ここは太田清史・野村総合研究所副会長(6月23日付でアルゴ21社長に就任予定)が委員長となり、副委員長を春日正好・アイエックス・ナレッジ最高顧問が務める。法制度委員会の委員長は、瀧浪壽太郎・電通国際情報サービス社長、技術委員長は山下徹・NTTデータ常務経営企画部長。取引・市場委員会は有賀貞一・CSK代表取締役が委員長、国際委員会は西條温・住商情報システム顧問(6月28日付に会長に就任予定)が委員長という具合だ。それぞれの副会長に責任を預けることで、委員会活動を活発にしていく腹積もりのようだ。
ソフト・サービス業界はIT社会の実現を担う存在にもかかわらず、厳しい労働条件からいわゆる「3K職場」と言われるようになった。今年度の活動の基本方針の第1番目に、これを払拭するために「魅力ある産業へ」を掲げた。「今頃気がついたのか、と批判されそうだが、自覚したことが重要だ」と棚橋新会長は言うが、こうしたソフト・サービス産業の体質は以前から指摘されてきたことではなかったか。
JISAの会員企業同士でも、元請けと下請け、さらに孫請けといった“身分制度”が存在する。利益確保のために、下請け叩きは当然行われるし、そのため下請け中心のシステムインテグレータ(SI)を中心に厳しい労働環境は当たり前になっている。それはスキルの低さやソフト開発の品質にも影響する。ユーザー企業から寄せられる、SIに対する不満の第1が「提案力の不足」である。これもスキルの低さが起因していないだろうか。そして品質の問題は自らの首を絞めることになっていないだろうか。
■中小ソフトウェアの淘汰に危機感
ある副会長は、「これまで理事会は機能していなかった」とまで言い切る。名だたる大企業の首脳が集まりながら、業界としての結束力を強化することはできなかったということだ。それが今のソフト・サービス産業の置かれた立場をもたらしたともいえる。
JISAは、これまで対極にあったメーカー団体である電子情報技術産業協会(JEITA)との連携や、ユーザー団体である日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)との連携にも言及している。また、これまでは全く頓着してこなかったように見える国際競争力についても、事業計画の中では、オフショアへの開発移行が進む状況から、「国内の中小ソフトウェア企業の淘汰が懸念されている」と危機感をにじませ始めた。しかし、開発コスト削減のためにオフショア開発を進め、結果的に中小企業を圧迫しているのはJISA会員会社自身でもある。
JISA役員の1人は、「これまでは佐藤雄二朗前会長が強烈な個性でJISAを引っ張ってきた。これからは1つずつ問題を解決していく」と語り、それが各委員長に副会長を配したことだと語る。問題は広く、そして深い。これまでに時代の変遷で消滅した業界団体も少なくない。技術、国際競争力、透明性のある取引など、直面する諸問題に対し解決の方向性をはっきり示す時だろう。
情報サービス産業協会(JISA)は6月10日、東京都内のホテルで、棚橋康郎新会長(新日鉄ソリューションズ会長)体制が発足して初の正副会長会議を開いた。新しいJISAの体制では、5つある委員会を6人の副会長が分担して代表する形を初めて採用するなど、これまでとは委員会のあり方も異なる。ソフト・サービス産業を取り巻く環境が厳しくなるなかで、JISA新体制の船出は決して順風満帆とは言えない。役員の発言の中にも、これまでのJISAのあり方に対する批判も飛び出してくる。(川井直樹(本紙副編集長)●取材/文)
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