「INTEROP」は用途提案が主流に
急成長が期待されるIP電話関連ソリューション
ネットワーク関連機器を中心としたビジネスが新しいステージに入る。このほど幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催されたネットワーク関連の展示イベント「INTEROP TOKYO 2005」では、顧客のビジネスを成功に導くためのアプリケーションソフト中心の“ネットワークソリューション”を展示するブースが目立ち、これまで主流だった、単に“ネットワークを構築する”ためのビジネスから、用途提案をアピールしたビジネスに変わろうとしていることを物語っていた。ハードウェア一辺倒だったネットワークビジネスが陳腐化する一方で、ネットワークソリューションビジネスに参入する企業が一段と増える可能性が高まっている。(佐相彰彦●取材/文)
■N+Iが「INTEROP」に改名“動かす”から“活用”へ ネットワーク関連最大規模のイベント「NETWORLD+INTEROP」は、今年5月の米ネバダ州ラスベガスでの開催から「INTEROP」に改名された。改名の理由は、これまでマルチベンダー間で相互に接続して動くかどうかという「相互運用性」に焦点を当ててきたが、ブロードバンドなどネットワーク環境の急速な発展でネットワーク接続の可否が重要ではなくなったという意味合いを込めたためという。
ユーザーが製品を選ぶ時のポイントは用途提案。ネットワーク関連機器だけでなくデジタル家電機器やソフトウェアなどを含めた“ネットワークソリューション”の提供が、ビジネスの拡大には不可欠である。今後は、多様化した製品やサービスをITシステムの中にどのように適合させていくのかを主眼に置いたイベントに位置付けることを目的に、今回から「NETWORLD」を外したわけだ。
INTEROP事務局によれば、コンシューマと法人ともにネットワークへの接続は当たり前となり、今後は各ハードウェアや各システムがつながることで、コンシューマでは一段と快適な暮らしを実現でき、法人であればネットワークソリューションで業務効率を図れることがポイントという。こうした市場の変化を背景に、ネットワークベンダー各社の成否はニーズに合ったシステムをいかにタイムリーに提供できるかにかかってくることを、INTEROPでは示していきたい意向だ。
米ラスベガスで開催された「INTEROP」では、各ベンダーがモバイル端末を中心としたIPコミュニケーションシステムを展示しているのが目立った。千葉の幕張メッセで行われた「INTEROP TOKYO 2005」では、セキュリティを切り口としたパビリオンが人気を集めていた。
ブースを覗いてみると、各ベンダーの提供するネットワークシステムは、技術的に異なる部分はあるものの、ハードウェアに大きな差があるわけではない。つまり搭載するアプリケーションソフトで、いかにユーザーのメリットとなる“ネットワークソリューション”を提供できるかに焦点を当てる展示に傾注していたようだ。
■1社で提供かマルチベンダーか IPテレフォニーは2極化の方向へ ワールドワイドのネットワーク関連分野で急速に成長するといわれているのがIP電話を中心としたIPテレフォニービジネス。通信コストが安くなるなどをアピールし、PBX(構内交換機)からIP電話にリプレースするという企業が続出している。そのため、これまでPBXビジネスを手がけてきたベンダーだけでなく、コンピュータ機器ベンダーが次々と参入している状況で、市場は混戦状態となっている。
しかも、ベンダー各社では自社製品だけでネットワークシステムを提供していくスタンスと、複数企業とアライアンスを組むマルチベンダー化で好対照を成している格好だ。
ワールドワイドで自社製品のビジネスを徹底しているのが米シスコシステムズ。ルータやスイッチ、IP電話機を拡販するためにIP電話向けアプリケーションソフトの開発に力を注いでいる。同社は、他社に先駆けてIP電話ビジネスに着手し、一時はワールドワイドのIPテレフォニー市場でトップシェアを誇っていたが、競争激化のなかで他社にシェアを奪われた。何としてでもIPテレフォニー分野で主導権を握ることに躍起になっている。
アプリケーションソフトウェアの開発に力を入れ、ハードウェアは他社製品でも構わないというのが米アバイアや仏アルカテル。IPテレフォニービジネスのコアになるソフトウェアの開発で主導権を握るという戦略だ。両社とも核となるソフトウェアを開発しており、日本市場でのビジネス拡大にも力を入れ始めた。アバイアはパートナー数を増やすためパートナープログラム「デベロッパーズコネクション」をこのほど策定し、日本のシステムインテグレータ(SI)を中心にパートナーの開拓を図っている。
仏アルカテルの日本法人であるアルカテルは、これまでスイッチだけにとどまっていたビジネスを、ソフトウェアをベースにパートナー企業とのアライアンスを強化していく方針だ。
日本市場は、沖電気工業やNECなど古くからの通信機メーカーがPBXビジネスでシェアを占めていた。これら大手メーカーがIPビジネスでもシェアが高いものの、日本市場は米国や欧州などと比べIP電話の普及が遅れているといわれている。ワールドワイドでのビジネスの拡大に向け、海外ベンダーは1社製品で提供するか、マルチベンダー化で提供するかを見定め、日本市場に本格参入する方針。今後、ネットワークビジネスはアプリケーションソフトを中心とした競争が一段と激化することになる。
 | INTEROP | | | | | 米国や日本などで開催されるネットワーク機器関連で最大のイベント。昨年までは「NETWORLD+INTEROP」だったが、今年5月に米ネバダ州ラスベガスで開催されたイベントで「INTEROP」に一本化された。 今年6月6-10日、千葉・幕張メッセで行われた「INTEROP TOKYO 2005」は、日本では12回目の開催。毎年300社前後が出展しており、社内ネットワークを中心とした展示が多いといえる。 |  | 今年も「セキュリティ」をはじめ「IPコミュニケーション」や「エンベデッド」などのパビリオンに来場者が集まった。最近では、デジタル家電機器がインターネットに接続するなどコンシューマ市場でのネットワークビジネスも拡大する可能性が高いため、「ユビキタスネットワーキングパビリオン」を設け、ユビキタス社会の実現に向けた技術を披露していたブースもあった。来場者は毎回15万人前後を集めている。 | | |