日本オラクルは6月1日付で大幅な組織再編を断行した。より高度な提案力を持ち、専門性の高い組織体制にしたのが特徴だ。「ユーティリティ・コンピューティング」を本格的に志向するための〝布石〟との見方もあり、今後の同社の業績を支える意味で重要な再編となった。今回の再編に関して、東裕二・取締役副社長執行役員最高執行責任者に聞いた。
「サービスとしてのソフト」を加速―東裕二取締役副社長インタビュー
──大幅な組織再編になったが。
東 今回の組織再編では、データベース(DB)を中心にした「システム事業統括」とERP(統合基幹業務システム)などアプリケーションを扱う「インダストリー&アプリケーション事業統括」の2つの戦略部門に明確に分けた。「専任セールス化」を図るのが目的だ。
──これまでの体制とどこが違うのか。
東 新体制では営業担当が、DBとアプリケーションに分かれ、それぞれの製品に関して、より専門的な知識を身に付けるようにする。従来は、顧客を担当する営業が、DBとアプリケーションの両面を担当していたが、企業システムが複雑化し、当社製品を適切に導入する上で専門性が必要になった。これにより、例えば、「3人月」で受注していた案件が「2人月」で対応できるようになるなど、生産性が上がる。
──「ユーティリティ化」へ向けた布石という見方があるが。
東 米オラクルのラリー・エリソン会長は、「Software as a service(サービスとしてのソフト)」を提唱している。現在、ソフトは個別製品として販売しているが、次の10年は、ソフトは所有するために購入するのではなく、サービスとして使う時代が来る可能性がある。そこへ向けた「移行期」ということになる。
──具体的には、何が変わるのか。
東 当社では「オンデマンド」のサービスを提供している。今後、このオンデマンド環境を拡大し、オラクル製品の継続的なバージョンアップやシステム稼動環境のモニタリング、ボトルネックの抽出──などを継続的に提供できるようになる。
──パートナーにも「専門性」を共有させるのか。
東 当然、パートナーにも共有してもらう。今年度(2006年5月期)当社では、製品ラインを「DB」、「フュージョンミドルウェア」、「ビジネスアプリケーション」の3層にすべく作業を進めている。この方針に基づき組織再編したので、パートナープログラムが分かりやすくなる。
──この組織再編が業績に与える影響は。
東 今回の組織再編は、「専門性」ともう1つ「成長性」というキーワードを包含している。昨年度は、増収増益を達成したが、今後、この増収増益幅をさらに拡大するための再編といえる。