上期の全体傾向は増収増益だが、「開発系SIer」のうち不採算プロジェクトを下期にも引きずることが確実なケース、上期で処理を終えたものの下期での再発を織り込むケースなどで通期予想に強気・弱気が表われている。開発系SIerは、個々の企業別に見れば好不調があるにせよ、全体の経常利益率が1ケタ台にとどまっている。産業・社会のシステムを担うIT専門集団が、ネット系・ゲーム系企業群との収益率比較で企業価値が過小評価される要因ともなっており、株式公開組を中心に2ケタ台への回復努力が求められる。(ジャーナリスト・佃均)
・1面掲載記事、
「情報サービス業208社の業績集計 開発系SIerの業績に明るさ戻る」から読む収益率の低さが過小評価の要因
■上位組は2ケタの増収増益 企業別ランキング(表2)でみると、半期の売上高1000億円超は7社、500億円超は19社だった。トップはNTTデータで、売上高は前年並みだが、経常利益は前年同期比18.1%増と伸びた。2位につけた大塚商会は、売上高で8.2%増、経常利益は35.7%増と大幅な伸びを達成し、経常利益でもNTTデータに迫る額となっている。

3位には、売上高で1706億3000万円と健闘したダイワボウ情報システムが食い込んだ。第4位のNTTコムウェア、5位の野村総合研究所は、2ケタの増収と同時に、経常利益も50%を上回る伸びで、開発系SIerの復調を印象づける業績となっている。
上位25社のうち売上高が04年度中間決算から減少したのは、13社だった。減収率が最も大きかったのは、15位のCSKホールディングス(▲24.6%)で、次いで大きかったのは11位の日立ソフトウェアエンジニアリング(▲24.3%)。CSKホールディングスは旧CSKの機器販売事業をグループ会社に移管したことが影響した。日立ソフトは、04年度から推進しているハードウェア販売の縮小(前年同期比▲55.5%)が要因となっている。
■経常利益トップはヤフー
経常利益率トップはインターネット・サービスのヤフーで、前年同期比38.0%増の376億円。個人向け有料コンテンツ配信サービスやインターネット物販などが好調に拡大し、連結ベースで親会社のソフトバンクの業績回復に貢献している。
208社の集計企業全体での経常利益率ランキング(表3)では、オービックビジネスコンサルタントがトップだった。同社の利益率57.33%、ヤフーの53.48%は、その収益構造やビジネスモデルを開発系SIerやシステム販売系企業が研究する価値がある。
また、グループウェアのサイボウズ、認証サービスの日本ベリサイン、システムコンサルティングのフューチャーシステムコンサルティングが健闘している。
上位陣はインターネット・サービスやパッケージソフト系が占めた。セキュリティ関連ソフトのトレンドマイクロは店頭でのパッケージ販売ばかりでなく、インターネットによるダウンロード販売が急速に売り上げを伸ばしている。ブロードバンド化率の向上が背景にある。
フェイス、サミーネットワークス、イマジニア、バンダイネットワークスなども携帯電話向けオンライン・ゲームやエンターテインメント・コンテンツの配信サービスが利益率を押し上げた。いずれもブロードバンド化を背景としており、2001年度にスタートしたe-Japanプロジェクトの恩恵を受けた。
この記事は、昨年12月、有限責任中間法人IT記者会がまとめた情報サービス関連企業208社の05年度半期業績(『IT記者会Report』12、13)を参考にした。売上高や営業利益ばかりでなく、業務別売上高、従業員1人当り売上高・利益率などを調査しているが、ここでは紙面の都合から全体の概要を記すにとどめた。詳細は同会頒布のCD-ROM版(32,000円)を参照されたい。問い合わせは、電話03-3519-6030/FAX03-3519-6031