ここ数年、低迷が指摘されていた開発系SIer(受託ソフトウェア開発を中心とする情報サービス業)に明るさが戻ってきた。業界の観測気球とも言える約300社の株式公開企業のうち、昨年11月末までに半期決算を発表した195社の業績を集計すると、「開発系SIer」の収益回復が目立っている。とはいえ、システム開発コスト低減圧力に歯止めはかかっておらず、併せて経済指標であるサービス価格の下落という懸念材料もあり、手放しで喜んではいられない。情報サービス産業はデフレスパイラルから脱皮しつつあるのだろうか。
独立系では収益回復傾向が顕著に
05年度中間決算から何が見えるか
208社の業績比較:概要 メーカー系、ユーザー系の非上場企業を加えた208社のうち、前年同期と比較が可能な205社に限定して、「売上高」「営業利益」「経常利益」の補正値を算出した。売上高は04年度同期比3.2%増の3兆6164億4800万円、営業利益は14.5%増の2220億3000万円(営業利益率6.14%)、経常利益は18.0%増の2490億700万円(経常利益率6.89%)だった。
通期予想は補正値ベースで、売上高は6.2%増の6兆9915億9100万円、経常利益は16.0%増の4222億2000万円となっている。営業利益予想は未公表の企業が多いため比較から外した。ITサービス産業の業況は総じて「曇りのち晴」といっていい。
資本系列で見ると「メーカー系」は減収減益、「ユーザー系」と「独立系」は増収増益だった。特に「独立系」の収益率が大幅に回復している。業態別では「開発系SIer」「パッケージ系」「ネット系」「ゲーム系」は増収増益、「システム販売系」は減収減益だった。
新興SIerの好調が目立つ 開発系SIerに限ると、売上高規模別では「1000億円以上」の営業利益が19.0%増(営業利益率8.2%)と健闘しているのに対し、「300億円以上-1000億円未満」の準大手が低迷している。独自のSI事業を推進している企業の赤字転落が影響した。
資本系列別では、「ユーザー系」「独立系」ともに2ケタの伸びを見せ、特に「独立系」は営業利益率が6.4%に増加した。不採算プロジェクト再発防止に向けた積算の最適化やリソース配置の見直し、価格低減圧力に対応した外注先の絞り込みなどが効を奏した。
「10億円以上-50億円未満」の新興企業の多く(83社中56社)が増益となっているのも注目していい。株式上場別業績概要でマザーズ組、ヘラクレス組が高い伸びを示しているのと一致する。
1部上場3社が減速 全体の平均伸び率は3.2%増だが、ネット系、ゲーム系の高増収に支えられての数値であって、開発系SIerに限ると2.7%増に落ちる。さらに株式公開企業に限ると、売上高が0.7%減、純利益は30.2%減だった。ただし大きな欠損を出したアイネス、インテック、大幅な減収となったCSKホールディングスの3社を除くと、連結売上高は2.9%増の1兆8407億4900万円、純利益は1.2%増の484億9100万円となる。
開発系SIer152社のうち54社が欠損となったこと、特に上位陣が総崩れ的に収益を悪化させたのが要因だ。アイエックス・ナレッジ、インフォコム、NJK、テスク、電通国際情報サービス、日立ソフトウェアエンジニアリングなど2中間期連続赤字の企業が少なくない。
好不調がはっきりしている原因は、不採算プロジェクトだ。アイネスをはじめSRA、アルゴ21といった受託系のリーダー群が「ヨレ・プロジェクト」(SRAの鹿島亨社長)の後始末に追われている。「5+1」(コンピュータ・メーカー5社+NTTデータ)やユーザー系情報サービス会社の下請けに徹していれば特別損失を計上することもなかっただろうが、元請け的地位を確保する通り道の痛みということになる。
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