中堅中小企業を主力ターゲットにする国産業務ソフトウェアベンダーは、今年が数年ぶりの“特需”を期待できる年であるとして、法令改正や新OSなどに対応した開発投資を拡大している。BCNが2月1日に実施した「業務ソフトベンダー座談会」で、大手5社が明らかにした。 今年は、「新会社法」など、基幹業務システムの変更を必要とする大型の制度改正や税制改正が相次ぐためだ。また、マイクロソフトの新OSや新データベース(DB)が出荷開始されることから、各社は対応版の開発を急いでいる。「日本版SOX法」の制度化も控え、システム負荷が増すことから、企業がより最適なシステム環境を構築するうえで、64ビット対応などに注目していることも、システムの再構築に向けたIT投資を促す“追い風”になると分析している。
64ビット対応も各社急ピッチで推進
「業務ソフトベンダー座談会」には、応研、OSK、オービックビジネスコンサルタント(OBC)、ピー・シー・エー(PCA)、弥生の国産大手5社の代表者10氏が参加した。今年は、制度改正や税制改正のほか、「日本版SOX法」を見据えた内部統制に関するシステム投資が増加するとの期待が高まっている。なかでもベンダー各社が力を注ぐのは、今年5月に施行される新法「会社法」への対応である。
弥生は、新会社法で「最低資本金規制」が削除され、理論上は1円で起業できることから、「起業する人が増える。今起業する人は、最初から業務ソフトを導入する可能性が高い」(竹之内学・執行役員プロダクトマーケティング担当)と、法施行と同時期に対応版を投入する計画だ。PCAは「新会社法に対する企業の対応に温度差があるが、啓蒙や動機づけ次第で需要に結びつく」(大炊良晴社長)と見ている。 OSKは「新会社法だけでなく、日本版SOX法に向けたセキュアなシステム環境を必要とする企業が増える」(田中努・専務取締役)と、大塚商会と連携したドキュメント管理システムやサーバー環境を見直す契機になると予測する。
OBCは、日本版SOX法や国際会計基準、連結納税への対応、64ビット環境への移行など「業務ソフト業界が大きな転換期を迎えている」(和田成史社長)ため、多岐に渡る製品展開が必要になると判断、開発体制を強化している。
また、公益法人向けに強みを発揮している応研とPCAは、今年4月から適用される新「公益法人会計基準」への対応版でしのぎを削る。非営利法人では、企業会計に近い財務諸表などの提出を義務づけられるため、両社は、新基準に対応した製品を相次ぎ投入。「改正に伴い、ほぼ全面リプレース需要が見込める」と、年度末需要に向け拡販体制作りにピッチをあげる。
新しく登場するOSやDBに対応する製品ラインアップを強化する動きも加速している。応研は「2-3月にかけて、ERP(統合基幹業務システム)の大臣シリーズをすべて新DBの『SQLサーバー2005』対応にする」(岸川剛・取締役営業部長)。OBCは「今年は、次世代64ビットへの地固めをする年」(和田社長)と位置づけている。
08年に制度化が予定されている「日本版SOX法」については、各社とも、具体的な対応を今年から開始する見込み。OBCの和田社長は「日本版SOX法に対応するため、従来のログ管理や権限設定、認証などをレベルアップする必要がある」と、自社のERPを含めパートナーのワークフロー製品を組み合わせた対応を検討している。PCAは「ログ管理が増大するので、サーバーを含めシステム全体のスペックを上げる必要がある。企業にどのタイミングでシステム移行を提案するかが課題」(大炊社長)と捉えている。
業務ソフト業界にとっては、中長期的に“特需”を生み出す要件が揃っている。パッケージだけでなく、ワークフロー製品などを組み合わせ、企業ニーズをもとにタイミングよく提案することで、需要拡大が期待できそうである。
・座談会の記事はこちら