国産業務ソフトウェアベンダーの主力ターゲットである中堅中小企業市場は今年、数年来の〝特需〟にわきそうだ。「会社法」の創設や税制改正などが相次ぐほか、マイクロソフトのプラットフォームが大きく変更されることで、新たな需要が見込めるためだ。こうしたチャンスを活かすために、各社はどのような製品・販売戦略を展開するのか。応研、OSK、オービックビジネスコンサルタント(OBC)、ピー・シー・エー(PCA)、弥生の、国産業務ソフト大手5社のトップに集まってもらい座談会を開催した。(06年2月1日、BCN本社にて収録)
【出席者】
応研
原田明治社長
岸川 剛取締役営業部長
OSK
田中 努専務取締役
宇佐美 慎治専務取締役
オービックビジネスコンサルタント(OBC)
和田成史社長
大原 泉取締役
ピー・シー・エー(PCA)
大炊良晴社長
折登泰樹常務取締役営業本部長
弥生
相馬一徳取締役
竹之内 学執行役員
石井成樹(本紙編集委員)●司会/谷畑良胤●文/大澤邦彦●写真
64ビット化で業務ソフトも新次元に
2005年の業況 好景気で各社増収を計上 保守、サービスが順調に拡大
──2005年はIT業界全体として「好景気」にわいた年でした。そのなかで、業務ソフトベンダーである皆さんの会社の業績はどのように推移したのでしょうか。
大炊(PCA) 05年は、営利法人と非営利法人向けの業務ソフトで、中堅企業向けERP(統合基幹業務システム)の「PCA Dream21」を積極的に展開しました。今年度(06年3月期)は、第3四半期の売上高が前年同期比3.3%増で、経常利益は10%増えました。前年比では増収増益ですが、期初の目標値に対しては、マイナスで推移しています。
新規ソフトのうち、スタンドアローン製品は前年比数%減。これは、新規獲得がここ数年縮小傾向にあるためです。逆に、単価の高いネットワーク製品が伸びて、スタンドアローン製品の落ち込みをカバーしました。ただ、ソフトの販売は前年と同ベース。全体の売り上げが伸びたのは、保守・サポート契約(ストック)やその他サービスが堅調だったからです。
原田(応研) 05年度(05年12月期)決算は、売上高が前年度比約8%増でした。当初、前年比10%は伸ばせると踏んでいましたが、昨年後半に減速。それでも昨年度に比べて売上高が伸びたのは、ここ数年拡販に力を入れている売上・仕入れ・在庫統合型ソフト「販売大臣」の売れ行きが好調だったのが大きな理由です。
ERPを含めて上位のLANとWAN環境での導入が進み、全体の売り上げを押し上げました。また、昨年リリースした医療法人向けソフト「医療大臣」や、公益法人向けソフト「公益大臣」の引き合いも増えています。
相馬(弥生) 弥生の業務ソフトはこれまで、量販店に販売を依存してきました。今年度(05年10月-06年9月)は、販売、財務、給与関連のスタンドアローン製品で累計出荷約12万本を超える予定。内訳は、約半数が量販店を通じた販売で、残りはインターネット通販や会計事務所、地域販社での流通。スタンドアローン製品は前年比、2ケタ伸びています。
昨年は、量販店POSデータの業務ソフト分野で、販売本数シェアが38%、金額ベースでは56%でした。競合他社が価格を下げるなかで、当社は据え置きました。本数の伸びは緩やかであったものの、金額ベースのシェアが上がり、他社との差も拡大しています。
ビジネス全体では、PCAさんと同様に、ストックビジネスが安定しています。登録ユーザー数は現在55万社弱で、保守契約が11万件を超えました。これらが収益に貢献し、昨年度(05年9月期)は売上高が2ケタ成長しました。
さらに昨年5月には、後発ながら、ネットワーク版「弥生会計NE」を発売し、昨年末までに約250社に納入しました。今後は、スタンドアローン版の市場から、さらに上位クラスの市場にもターゲットを移行させていく計画です。
田中(OSK) 05年度(05年12月期)は、単体の売上高が約25%増えました。その中で特に成長したのは、文書管理システムやワークフロー製品などの情報系ソフト製品群である「eValue(イーバリュー)」で、売上ベースでは前年度比約50%伸びました。
特に成長したのは、親会社の大塚商会と連携して取り組んでいるセキュリティ関連製品の販売や、中堅中小企業向けのコンサルティング、ERP「Smileα(スマイルアルファ)」など。「Smileα」は、大塚商会以外の「外販」のウエートが高くなりました。情報系ソフトとERPの融合効果が生まれた年でした。
和田(OBC) 当社は、スタンドアローン版、ネットワーク版、新ERPを提供しています。昨年は新規プロダクトの発売が減り、その煽りを受けてスタンドアローン版の売上高が横ばいでした。ネットワーク版と新ERPは伸ばすことができ、保守・サポート契約も堅調に推移。05年度(06年3月期)第3四半期は、前年同期比で売上高が横ばい、経常利益が同19%増えました。
DOS/V時代、ウィンドウズ時代から遡って考えると、現在は、次世代の「64ビット時代」への転換期を迎えていると感じています。05年は、新時代への転換を迎える最後の年であり、そのための地固めをしてきました。
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