国産業務ソフトウェアベンダーの主力ターゲットである中堅中小企業市場は今年、数年来の〝特需〟にわきそうだ。「会社法」の創設や税制改正などが相次ぐほか、マイクロソフトのプラットフォームが大きく変更されることで、新たな需要が見込めるためだ。こうしたチャンスを活かすために、各社はどのような製品・販売戦略を展開するのか。応研、OSK、オービックビジネスコンサルタント(OBC)、ピー・シー・エー(PCA)、弥生の、国産業務ソフト大手5社のトップに集まってもらい座談会を開催した。(06年2月1日、BCN本社にて収録)
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ウェブとの連携で新たな活用領域も
販売戦略 従来通り、訪販チャネル強化 ハードメーカーにも接近
──皆さんの話を聞いて、製品体系が大きく変わることが実感できます。これに伴い、販売戦略も変わってくると思うのですが、現状と今後の販売戦略について教えてください。
折登(PCA) それほど大きくは変わらないと思いますよ。当社の販売は、訪販系ディーラー経由にシフトしています。現在、最も販売に力を入れているERP「Dream21」では、新たにSIerや大手ハードメーカーなど、大きな顧客層をもつチャネルの開拓に注力しています。
「Dream21」は販売開始から3年が経ちますが、こうしたチャネル開拓の効果は徐々に出始めており、導入企業が500社を超える実績をあげています。
最近は、250万社に及ぶ中堅企業以上の市場が成熟してきているとの印象をもっています。これは、リプレース市場に移行してきていることを物語っています。オフコンのダウンサイジングを推進する企業などが対象になるでしょう。こうした企業に対し、顧客ニーズに基づく提案をしていくためにも、パートナーとのアライアンスを強めていく必要があります。
一方で、業務ソフト単体のビジネスだけでは顧客を納得させるのが難しくなっている状況もあります。システム全体の最適化を進める企業が多く、システム全体を見渡した提案が求められるケースが増えているからです。
フロントオフィス系や業種特化のシステムとの連携を図らないと、顧客のニーズはつかめません。そのため、SIerなど80社近くのベンダーとアライアンスを組み、当社の業務ソフトと連動したシステム提案を強化しています。
岸川(応研) ここ数年は、MFP(デジタル複合機)を扱う訪販系ディーラー経由の売上比率が高くなっています。一昨年からは、大手ハードメーカーとのアライアンスも強化しています。業務ソフトはパッケージであるとはいえ、機能が複雑化しています。例えば、ダウンサイジングでERPを導入する際には、既存システムを継承する必要があり、細かな要望が多くなっています。
規模を含め、シンクライアントやFT(無停止型)サーバーなどを勧めたり、サーバー台数やCPUの数まで提案しないと、企業の要望に対処できなくなっている。このため、大手ハードメーカーが提供するハードのスペックを検証する作業を強化しています。
既存のソフト資産と当社のERPをつなぐなかで、販売チャネルの「特約店」が潤う戦略を進めています。その結果、中堅SIerとの協業が増え、他社とのパッケージ連携も40社程度に増えました。また、非営利法人向けでは、数年前から社会福祉法人への販売を強化していますが、ここへ向けては税理士のコンサルティング集団を生かし、移行作業を進めています。
当社はこれまで、本社が福岡県にあることから、営業体制がどちらかというと「西高東低」でした。ただ、ERPビジネスを進めるなかで、関東圏のマーケットでの需要が高まり、東京の営業スタッフを増強してきました。今春には、「東京支社」を「東京本社」に昇格させます。
田中(OSK) 当社のターゲットはほとんどが民間企業です。一部、公益法人はありますが、あらゆる業種業態に満遍なく納入できています。販売戦略は、製品別に3つに分かれています。完全ウェブ対応のERP「SmileIE」は昨年、ライセンス数が大きく伸び、案件が大型になっています。中堅エリアは、既存システムとシトリックスプレゼンテーション・サーバー(旧メタフレーム)を利用したシステムが増えています。中小エリアでは、CTI(電話やFAXをコンピュータに統合したシステム)や顧客管理が売れました。大塚商会経由でMFPを導入する企業が多いことから、当社でも訪販ディーラーによるチャネル販売が多くあります。1年前に強化した「外販」のチャネルは100社ほどに増えました。
相馬(弥生) 量販店チャネルは、大手2社が強くなっています。今後は、郊外店を含め、展開を拡大していきます。昨年、ネットワーク版を発売したため、今年は訪販チャネルの開拓が課題です。弥生の前身(ミルキーウェイ)では、訪販系チャネルを活用していましたが、最近は量販店への依存度が高まっているために、危機感をもっています。
現在、当社の業務ソフトを拡販する「弥生ビジネスパートナー(YBP)」は全国に約500社ありますが、これをさらに拡大することが課題です。このうち、主にネットワーク版を拡販するパートナーを150-200社程度に増やしたいと考えています。ただ、営業体制からすると、各社に比べ人員が少なく、パートナーとの同行営業もなかなかできません。その分、製品力でどの程度カバーしていくかがポイントになります。
大原(OBC) ウィンドウスNT時代から製品開発をスタートし、ウィンドウズ95の32ビット対応で大きくチャネル戦略を強化して躍進することができました。企業の要望に応えられるように、この時代から全国的なパートナー制を構築してきました。これは、継続的に強化していきます。
日本全国どこで当社製品を購入しても同一レベルの導入ができるように「OCIP(OBCサーティファイド・インストラクションプロバイダ)」制度を敷き、認定されたインストラクターが450社、2300人に及ぶ人材が育っています。これをベースに、ネットワーク販売を順調に拡大することができました。
また、ERPのカスタマイズを手がける「OESP(OBC・ERPソリューション・パートナー)」が約300社あります。この関係を強化しつつ、開発状況や方向性をいち早く伝えることで、拡販体制が強化できました。「SQLサーバー2005」対応版の出荷に際しても、スムーズにシステム移行ができるように、こうしたパートナーとの関係を強化していきます。ただ、従来のパートナーでは、リプレース市場に向けた取り組みが難しい部分もありました。そこで、PCAさんと同様に大手ハードメーカー系列の旧オフコンディーラーのチャネルを開拓しています。
昨年、子会社として「ビズソフト」を設立しました。従業員30人以下の中小・零細企業や「会社法」に対応して起業する人に向けた業務ソフトを量販店や会計事務所を通じて販売します。
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