JavaとLinuxを中心とした企業システムの受託開発を手がけるテンアートニ(喜多伸夫社長)は昨年8月、同社初となる業務パッケージの第一弾としてSFA(営業支援システム)「TenArtni SFA+(SFAプラス)」を自社開発し、販売を開始した。SFAプラスには、IBM製のミドルウェアを標準搭載。同社が多くのミドルウェアのなかでこれを選択した理由は、技術的な優位性だけではない。「新規プロダクトなので拡販面に不安があった。日本IBMの質が高くて大がかりなパートナー戦略に乗ることが有益と考えた」(山﨑靖之・執行役員プロダクト&SIビジネスユニットWebソリューション部長)との判断が働いた。
質の高いパートナー戦略に魅かれて 技術・拡販支援のスピード感に驚き
初の業務アプリ開発をIBMベースに

テンアートニのSFAプラスは、同社が独自開発したシステム開発の生産性を上げる共通基盤「TenArtni Ninja─VAフレームワーク」をもとに開発した中小企業向けの業務パッケージだ。今後は、この共通基盤で開発したパッケージを「TenArtni Enterprise Applications」シリーズとして、SFA以外にCRM(顧客情報管理)などの業務パッケージを順次拡充する。
SFAプラスは、「受託開発案件のボリュームを上げるため、新しいビジネスモデルを構築しよう」(山﨑執行役員)と考案。2004年末に社内起業制度でプロジェクトが発足し、05年8月までに製品化。受託開発を手がけたユーザー企業の声を反映して、第一弾としてSFAを手がけたという。
テンアートニは、設立以来、オープンソースに特化した受託開発を行ってきた。この方面での技術力に長けていることから、IBMのウェブアプリケーション「WebSphere1.0」の当時から、技術者向けトレーニング講習をアウトソーシングで請け負っていた。「WebSphere」の扱いに慣れていたことや拡販力と、技術力の両面での期待もあり、開発段階から日本IBMの協力を得た。

通常、業務パッケージの完成まで1年は要する。だが、SFAプラスは8か月程度で製品化に成功した。「(親会社である大塚商会の)テストマーケティングを経て、機能を追加したので時間を要したが、実質5か月で完成していた」と、当時を振り返る。
開発段階では、日本IBMの技術検証拠点「IBM東京イノベーション・センター」の技術者が来社し、推奨ハードウェアを利用した技術検証などを共同で実施。「日本IBMの技術支援のスピード感には舌を巻いた」という。
当初、SFAプラスのミドルウェアとしては、価格を安価に抑えるため、オープンソースベースのミドルウェアを選択することも検討した。しかし、日本IBMの販路を生かし共同マーケティングが展開でき、ミドルウェアを拡販することで両社にメリットがあると判断。IBM製の「WebSphere」とデータベース「DB2」の採用に至った。
SFAプラスは、他社のSFAに比べ、後発製品となる。だが、「顧客の営業スタイルに合ったSFAにしたい」と、先行するSFAの機能を研究し尽くした。他のSFAにない機能の一例として、企業が営業戦略の一環で開くイベントの登録者や取引先と、実際の案件との関連づけができ、イベントの効果測定をする「マーケティング管理」機能を搭載したことがあげられる。また、SFAプラスを利用する営業担当者がいくら増えても「ライセンスフリー」で、他社製に比べ格安である。
販売開始以来、SFAプラスは4社に導入した。「例外を除き、検証済みのIBMミドルウェアを乗せたSFAプラスを推奨する」という。
現在、大塚商会の販売網を通じて営業活動を展開している。一方で、日本IBMの営業担当らが案件を発掘し、同行営業を展開中。テンアートニは、日本IBM内の業種別事業部や販社などに、営業のパイが広がっていくことを実感している。
【ユーザー事例】長井紙業決め手は、低価格と早期導入
飲食店を中心にした箸袋や和紙などを製造・販売する長井紙業(長井邦浩社長)は昨年12月、営業人員を増やし1人1台にノートパソコンを割り当てたのを機に、テンアートニのSFAプラスを導入した。これまでは、営業担当2、3人で1台のパソコンを利用し、月次の営業報告などをメールで行っていた。飲食店向け販売は、「商品開発に力を入れ、アイテム数を増やせば、確実に売上高が伸びる」(長井貞利・常務取締役)と、地域特性や業態などに応じたニーズを的確に把握し、情報共有することで、さらなる成長を見込めると、SFAプラスを導入したという。
長井紙業は、2000年にオラクルのデータベースを利用した販売管理ソフトを導入していた。しかし、営業日報など、営業活動をデータベース化したシステムがなかった。他の営業担当者の行動履歴を参照できず、前任者の活動内容や各担当者の得意先へのアプローチ方法などを確認できなかったことから、営業活動の情報を共有化する仕組みを探していた。
当初、情報共有システムとして、市販のグループウェアを採用するか、SIerに依頼して独自システムを開発するかを検討した。そんな折、大塚商会からSFAプラスの提案を受け、低価格で導入が早く、簡単操作で情報共有できることなどが決め手となり採用。導入までの1か月間は、SFAプラスをIBM製のIAサーバーに導入し、試用期間として利用環境を確認し、データマスターに関する打ち合わせを2回しただけで、今年1月に実運用へ移行した。
全従業員94人のうち、営業担当者は東京本社、大阪、仙台の3拠点で現在14人。営業担当1人当たり、飲食店に箸袋などを卸す割り箸や食材などの業者150-200社の得意先を定期的に訪問。「ルートセールス」が主体で既存の販売網はできているため、ある程度の売り上げは立つ。しかし、「箸袋しか納入していない業者にキッチンペーパーを勧めたり、新規開拓をするよう営業担当の意識改革をする」(長井常務)ことに役立てようとしている。

SFAプラスの運用を開始して間もないが、現在は、日々の活動内容報告を主体に利用が進む。特に重視しているのがクレーム情報の収集だ。これまでは、個別に値引きなどで対処していたが、この情報をもとに品質改善や新たな商品開発に結びつけている。
SFAプラスの目標管理機能を活用して個人目標設定や達成度、進捗管理なども実践する。「これまでは営業所単位で売上目標があり、全体責任だった」ため、個人責任体制を明確化していく。印刷用の画像データをウェブで閲覧できる仕組みも構築中で「将来的にウェブ上で受発注できる仕組みにする」。同社のシステムは、さらにアップグレードしそうだ。