帳票システムの開発・販売大手、ウイングアークテクノロジーズ(内野弘幸社長)は、「Excel」や既存のドキュメント、帳票などをHTMLに変換し、簡単にウェブベースの入出力画面を設計できるフォームアプリケーションサーバー「StraForm-X(ストラフォームエックス、STX)」を開発し、昨年6月から出荷を開始した。STXは、HTMLやXML、J2EEなど標準技術を採用していることから、「IBM製ミドルウェアと親和性が高い」(谷口功・StraForm事業部事業部長)と、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)と技術・営業両面で協力体制を強化した。特に、既存システムの資産を有効活用してオープンなSOA(サービス指向アーキテクチャ)におけるドキュメント、帳票、入力サービスに関してアライアンスを組んでいる。
標準技術とIBMミドルとの親和性高い
地方販社開拓を日本IBMが支援 SOA環境のドキュメント・帳票などで協業

STXは、「Excel」や「Word」、紙で運用している既存のドキュメントや帳票などをHTMLに変換し、プログラミングをせずに手軽にウェブ入出力画面を設計できるのが特徴。ドキュメント・帳票などユーザー企業で現在使用している仕様のままウェブ環境で利用できる業界初の製品といえる。
基幹システムでERP(統合基幹業務システム)などを採用し、データ統合を進める企業は増えているが、「部門にあるドキュメント・帳票類はバラバラでシステム化されてなく、データ管理面で内部統制の強化に対応できない」(谷口部長)のが現状だ。
こうした状況を改善するため、STXは、HTMLなどの標準技術を全面採用し、部門に所属する「システムアドミニストレータ」レベルの担当者でも、ウェブ化できるようにした。ウェブブラウザへのプラグインも必要としないため、システム開発を担当するSIerにとっても、ユーザー企業のウェブ開発や変更に対し迅速に対応できる。STXで入力したデータは、XMLファイルとして吐き出せるので、ERPなど業務システムとの連携も容易だ。
ウイングアークは、同社の帳票システムをウェブ環境で運用するための帳票開発支援ツール「Super Visual Formade(SVF)」で、IBM製のミドルウェアとしてウェブアプリケーションサーバー「WebSphere」などを採用し、日本IBMと協業を開始して7年以上になる。
STXは、「WebSphere」だけでなく、オープンソースの「Tomcat」でも稼働できるが、「STXの出荷開始以来、保険会社など本格的な業務システムへの適用例が多く、信頼性や分散処理する上でのサポート体制などに優れているIBM製ミドルウェアとの組み合わせで提案していく」(谷口部長)と、日本IBMと「日本版SOX法」などをテーマに共同セミナーなどを活発化している。
帳票システムを扱うウイングアークと、帳票と連携が必然の基幹システムの開発・販売を得意とする日本IBMのユーザー企業は、共通していることが多い。一方、部門システムは、ともに新規開拓の「ホワイトマーケット」である。両社はすでに、この市場を開拓する共同プロジェクトを走らせている。谷口部長は「地方に強みをもつ日本IBM系のビジネスパートナーに対し、STXをPRしてもらっている。当社は、地方販社に接点があまりないだけに、非常にありがたい。地方販社は、STXをキラー製品として新規開拓ができる」と、拡販戦略上の相乗効果に満足感を示す。
STXは、出荷開始10か月で大手企業を中心に30社へ導入した。両社は現在、IBMが提唱するSOA環境とSTXを組み合わせた提案方法を模索している。企業で扱う情報の大半は、情報システムに取り込まれていないといわれる。日本IBMが預かる多くの既存基幹システムの情報をSTXの標準技術でデータ化することは、企業の情報活用を活性化する手立てとして有力であるといえる。
【ユーザー事例】ポイント「STX」で煩雑な店舗の家賃精算を解決
自社ブランドを全国約300店舗で展開するカジュアルウェア専門店チェーンのポイント(黒田博社長)は、ここ数年、店舗数を急拡大するなかで、スピード経営を実現するために「経営情報システムの一元化」が急務になってきた。これまで、IBMの「AS/400」による各種システムを連携して稼働。そのなかで、売上高に応じて大きく変動するデベロッパー(大家)から請求される家賃の精算システムは、Excelによる既存の仕組みが煩雑であり、一元化に向けたシステム上のネックであった。このフロント部分を課題解決に導いたのがウイングアークテクノロジーズの「ストラフォームエックス(STX)」である。
ポイントは1953年に創業。現在、「ローリーズファーム」など、8つの自社ブランドを展開。今年度は2つの新ブランドを立ち上げる。店舗はすべて直営店だ。今年度(07年2月期)から3年にわたる中期経営計画では、「年間80店舗」の店舗増を計画している。

「AS/400」による基幹システムの構築は94年春から開始。店舗POSデータなどの販売管理システムのほか、各種業務システムや物流システム、EIP(企業情報ポータル)の「Lotus Notes」などを随時連携させてきた。デベロッパーの家賃精算は、「Excel」などによる仕組みを非公式に導入。しかし「請求伝票は書式がバラバラで、電子データでなく紙ベース。熟練担当者が丸1日かけて手作業で入力する。しかも、全社オフィシャルでなかった」(渡辺裕幸・執行役員情報システム室情報システム室長)という。
家賃は、同社の一般経費の中で、最も変動が著しい項目。将来的に「店舗別にブランドや売上高などの情報を多角的に把握し、次のアクションに結び付けるための経営情報システムを構築する」という目標に向けて、データ統合をする上で大きな障壁となっていたのだ。
これに対し、日本IBMから薦められたのが「STX」。一度は既存のパッケージ「ビル管理システム」などを自社用に再構築することを検討した。しかし、最終的には「デベロッパーの請求書に合わせた形式で、熟練者でなくても簡単入力でき、ウェブ画面を当社で容易に作成できる「STX」の採用を決めた。画面を自由自在に並べ替えたり、エンターキーで入力できるのも魅力」として、独自の「デベロッパー家賃システム」を構築した。
フロント部分に限らず、日本IBMに「AS/400」を中核としてシステムの全体最適化を依頼。業務プロセスをSOA(サービス指向アーキテクチャ)に基づき図式化するソフトウェア「WebSphere Business Integration(WBI)」などを利用し、再構築した。「STX」の入力データはXMLファイルとして格納できるため、既存システムのデータと連携が可能になった。
昨年11月に着手して、近く全体が本格稼働する。「入力の人件費は3割削減でき、家賃精算業務が標準化されたことで、次月の経費見込み額が打ち出せる」と、再構築の効果に今から期待を寄せている。