企業向けの情報共有やナレッジマネジメント(KM)におけるトータルソリューション「REALCOM KnowledgeMarket」を提供するリアルコム(谷本肇社長)。汎用プラットフォーム向けとIBM製「Notes/Domino」向け製品があるが、双方の製品ともに2005年以降、IBMのミドルウェア「WebSphere」や「DB2」に対応し、KMソリューションの機能強化を図った。同社では、「Lotus/Notes(ノーツ)」市場は今が底辺と認識。今後、「ノーツ」ユーザーの多くは、使い慣れた機能を利用した業務継続の意思決定を加速する傾向にあることから、堅調な市場成長を見込んでいる。こうした市場に向けてリアルコムは、日本IBMと協力して「ノーツ」の価値を最大化するツールを拡販しようとしている。
Notes連携の知識管理ツールで協業
迅速で有効な日本IBMの技術支援生かす ISVへの明確な戦略に共感

リアルコムの事業は2本柱だ。「REALCOM KnowledgeMarket」ブランドによるパッケージソフトの提供と、それを導入活用するためのコンサルテーションである。
パッケージソフトは汎用プラットフォーム向け「REALCOM KnowledgeMarket Enterprise Suite」と、Notes/Dominoユーザー向けの「REALCOM Knowledge Market HAKONE for Notes」「同Notes Watcher」の計3種類。パッケージだけの提供と、コンサルティングを含めたソリューション提供の割合は件数で6対4、顧客数は約100社におよぶ。情報共有やKMという汎用的ソリューションであるため、顧客層は製造業から金融、サービス業まで幅広い。
「KnowledgeMarket」はグループウェア機能(メーラー、スケジューラー、ワークフロー)を持っていない。「したがって、純粋なグループウェアは競合相手というより連携相手。当社の製品は『WebSphere』のポータル機能を含めアプリケーションサーバー全体の中で動く」と谷本社長は、「ノーツ」との関係を絵解きする。
情報共有はすでに多くの企業が取り組んでいる。それにもかかわらずファイザー、ソニー、ニコン、鹿島建設といった名だたる企業が「KnowledgeMarket」を導入しているのは「もう一歩踏み込んだ情報共有にグレードアップしたいから」である。
例えば「Enterprise Suite」はウェブベースの次世代型グループウェアで、情報共有をしながら、いつ・誰が・どんな文書を出したのか、誰と誰がやり取りをしているのか、どういう人がプロジェクトに入っているのかといった「Who’s Who」(Know Who Database)を作ることができる。M&Aなど組織変更に伴う人的リソースの活用や、縦割組織の弊害を取り除くことが目的。この「Who’s Who」の機能を既存の「ノーツ」に付加したい顧客向けのパッケージが「HAKONE for Notes」。「Notes Watcher」は「ノーツ」上での情報共有のログを取り、それによっていつ・どの文書に・誰がアクセスしたかが分かり、何らかの情報漏えいが起きたときのセキュリティ対策を支援する。谷本社長は「こうした機能は従来の『ノーツ』でも提供しているが、個別文書でのアクセスログは取っていない。またそれを取るにはパフォーマンス、スケーラビリティに関する工夫が必要になる」と優位性を強調する。
リアルコムとIBMとの連携は、東京三菱銀行(当時)における「Enterprise Suite」の受注が発端。大規模なプロジェクトのプライムベンダーだった日本IBMに、東京三菱が「Enterprise Suite」の評価を依頼したことから始まった。これ以降、「ノーツ」ユーザーからのDB連携の要望なども多く、05年から関係が深くなったという。

「日本IBMは会社としての戦略が明確。ミドルウェアに特化したサービスカンパニーを標榜し、世界だけでなく国内も含めたISV支援を打ち出し、それがソフトウェア営業、ゼネラル・ビジネス事業部門などの実行部隊にまで仕組みとして徹底しており、当社のようなISVを育ててくれるという確信が持てる」という。
実は、日本IBMの強力な支援もあって、リアルコムは大塚商会とのパートナーシップにも着手した。「大塚商会がIBM製品を販売する際の起爆剤として当社製品を活用してもらうといった関係ができつつあり、今後はさらにこれも強化したい」と、2社間だけでなく、他のビジネスパートナーとの関係も深まりつつあるという。
【ユーザー事例】ららぽーと「KM」で情報共有し企業力を向上
ららぽーと(前田昌男社長)は、日本最大級のショッピングセンター(SC)「TOKYO-BAYららぽーと」(千葉県・船橋市、540店舗)を中核に25のSCを全国展開するほか、12店舗の「スヌーピータウン」でキャラクター商品の企画・販売も手がける。売上高123億円、従業員約370人。2006年秋には首都圏の川崎、豊洲、柏にもSCを新設予定で、08年度までに運営面積を倍増させる計画だ。
しかし、こうした拠点の拡大は、一方でナレッジ(業務知識・ノウハウ)の分散化や死蔵という事態を招きやすい。
つまり拡大に伴う組織変更や人事異動で、ナレッジも個別部署や個々の従業員に付随して移動する。ナレッジの共有化を図って同社が95年に導入したIBMの「Lotus/Notes」も「何でもデータベース(DB)化できるのでDBだらけになり、どこに何があるのか分からない状態になった」(廣島睦・情報システム室長)ことからナレッジマネジメント(KM)システムの導入検討を開始した。
「例えば10人規模のオフィスであれば全体の動きや情報が把握できる。それをバーチャルな形で全社的に構築することを目指した」という。1年半を費やして他社の導入事例を研究し、03年10月、リアルコムの「REALCOM Knowledge Market Enterprise Suite」を導入した。

決め手になったのは、「ノーツ」のDBに対する検索が「Knowledge Market」側からできたこと。
「ノーツ」でも物件単位での情報共有は可能だったが、“横串機能”がないため、より詳細な情報の共有ができなかった。それを実現するには「ノーツ」のカスタマイズが必要でコスト負担が大きい。
その点、「KnowledgeMarket」の低コストで操作が簡単という“お手軽さ”は魅力だった。実際、同社ではカスタマイズをすることなくそのまま導入した。
「Knowledge Market」は現在、ららぽーと従業員の9割が活用し、必要な情報を共有できるようになった。また情報発信も、必要な人や興味のある人に発信可能になった。
この実現には総務部やSC運営本部の運営企画部(当時)など、キーの部署を巻き込んだ社内啓蒙が奏功している。
「期待していた3つの効果のうち、情報共有および情報発信の2つは実現した。今後はQ&A機能の普及を図り、情報の積極的な提供に力を入れる」ことによって企業力を強化し、高品質のSC運営に取り組む。