今年3月期に本決算を迎えた株式公開のITベンダー/SIer205社(回線リセラー、携帯電話販売、店頭販売を除く)の2005年度業績がまとまった。本号と次号の2回に分けて、売上高の上位200社のランキングを掲載するとともに、規模別、業態別などで業績を分析してみる。
〔205社の概要〕
上場市場別の内訳は東証1部が61社、2部が24社、ジャスダック(JQ)が62社、東証マザーズが30社、ヘラクレス22社、名証セントレックスが3社、大証2部・名証2部・福岡Qボードが各1社となっている。
また業態別の内訳は受託系SIer(ソフト開発/事務計算等情報処理/システム運用管理)が115社、販売系SIerが33社(情報処理・通信機器販売系14社、ソフト製品販売系19社)、ネットワークSIerが10社および、ネットサービス系が28社、ゲーム/コンテンツ系が19社だった。
■1・2部上場組は回復 ベンチャー企業が苦戦 205社の05年度業績は、売上高が前年度比5.7%増の8兆8948億4600万円、本業の利益を示す営業利益が同4.1%増の6432億4300万円、純利益が同26.3%増の4045億100万円だった。営業利益率は0.1ポイント減の7.2%、純利益率は0.7ポイント増の4.6%だった。
上場市場別に見ると、東証1部の61社は売上高が前年度比5.0%増の6兆6950億8600万円、営業利益は同4.7%増の5560億3400万円、純利益は同22.5%増の3596億2700万円となっている。売上高全体に占める割合は75.3%で、04年度と比べ0.4ポイント減少した。
東証2部上場24社の売上高は前年度比7.7%増の8777億7300万円、営業利益は5.5%増の312億1600万円、純利益は69.1%増の179億8600万円だった。売上高全体に占める割合は9.9%で、04年度と比べ0.2ポイント増加した。
ジャスダックの62社は売上高が同5.4%増の6481億2300万円、営業利益が3.4%減の349億2900万円、純利益は36.0%増の152億1600万円だった。また新興企業が多い東証マザーズの30社は売上高が同42.7%減の2087億9000万円、営業利益が19.2%減の169億9000万円、純利益は21.3%減の186億700万円となっている。ベンチャー企業の低迷が目につく。
■ネット系の好調続く 受託系の利益率上昇 業態別では、受託系SIer(115社)の売上高は前年度比3.8%増の4兆8889億6700万円、営業利益は17.1%増の3103億9900万円、純利益は22.8%増の1765億2700万円だった。営業利益率は0.7ポイント増の6.4%、純利益は0.6ポイント増の3.6%となっている。ここ数年、毎年0.3ポイント平均で下落していた純利益率が上昇に転じたが、歯止めがかかったかどうか判断は微妙なところだ。
販売系SIer(33社)は売上高が3.1%増の1兆5255億7900万円、営業利益は12.3%増の605億9500万円、純利益は68.8%増の382億300万円だった。内訳を見ると、情報処理・通信機器販売系(14社)の売上高は前年度比2・9%増の1兆3799億1700万円、営業利益は同13・3%増の395億6600万円、純利益は132・5%増の236億9400万円。ソフト製品販売系19社の売上高は5.4%増の1456億6200万円、営業利益は10.3%増の210億2900万円、純利益は16.6%増の145億900万円となっている。
ネットワーク系SIer(10社)の売上高は0.6%減の7086億7100万円、営業利益は18.0%減の256億6100万円、純利益は3.1%減の160億1500万円だった。
ネットサービス系28社の売上高は前年度比32.5%増の6197億7700万円、営業利益は5.0%増の844億4800万円、純利益は2.1%減の505億3700万円、純利益率は2.9ポイント減の8.2%だった。このうちインターネット・サービス7社に限ると、売上高は37.0%増、営業利益は33.4%増、純利益は43.9%増、純利益率は1.0ポイント増の20.4%と好調を持続している。
ゲーム/コンテンツ系19社の売上高は10.1%増の1兆1518億5200万円、営業利益は13.5%減の1621億4000万円、純利益は43.8%増の1232億1900万円だった。
■年商1000億円超が27社 100位のハードル高く 今号に掲載した上位100社を見ると、売上高1000億円超の企業が27社で、2004年度決算より4社増えた。今回1000億円企業となったのは20位のスクウェア・エニックス(前年度28位)、21位の住商情報システム(同30位)、24位のインボイス(同25位)、27位のトランス・コスモス(同24位)の4社。
全体が増収傾向にあるため、上位100社にランク入りするのは昨年度が売上高113億円台だったが、今回は132億円台とハードルが高くなった。
受託系SIerでは115社中57位まで、販売系SIerでは33社中15位まで、ネットワーク系SIerでは10社中9位まで、ネットサービス系では28社中10位まで、ゲーム/コンテンツ系では19社中7位までが上位100社に入った。ネット系SIerの健闘が目立つ。
■上位陣の順位にも変動 CSKHDは体質改善売上高のトップは2004年度に引き続きNTTデータだった。前年度比6.2%増の9072億円と好調を維持しており、1兆円規模に王手をかけた。第2位のセガサミーホールディングス(セガサミーHD)と3500億円以上の開きがある。またセガサミーとダイワボウ情報システムの間も売上高で1800億円近くの差があるため、当分上位3社は揺るぎそうにない。
以下、順位の変動を見ると、前年度5位だったCSKホールディングスと7位だった野村総合研究所が入れ替わった。CSKホールディングス(CSKHD)はハード販売事業の見直しと今年4月から実施されたソフトウェア会計処理実務規定への対応で売上高を減らしたが、営業利益は4.5%増、純利益率は2.4ポイント増と、収益体質を大幅に改善している。
野村総合研究所、住商情報システム、CRCソリューションズ、ソランといった受託系SIerは、グループ会社との経営統合や関連会社の吸収合併で今業績が注目された。合併効果が売上高に現われた野村総合研究所と住商情報システムに対して、CRCソリューションズとソランは大きな変化がなかった。
■営業利益でセガサミーがNTTデータを逆転 企業の業績や事業規模を比較するメジャーメントは売上高だけではない。営業利益、経常利益、純利益などで見ると、まず営業利益では1191億4400万円(前年度比13.4%増)のセガサミーHDがトップ、821億3300万円(同36.5%増)のヤフーが第2位だった。売上高トップのNTTデータは営業利益では第3位、売上高5位の野村総合研究所が第4位につけた。また純利益ではトップがセガサミーHD、第2位がヤフーだったが、第3位にCSKHDが入った。以下、NTTデータ、コナミ、野村総合研究所、スクウェア・エニックス、伊藤忠テクノサイエンス、ソニーコミュニケーションネットワーク、オービック、新日鉄ソリューションズ、コーエー、カプコンの順となっている。
ちなみに営業利益率が10%以上だったのは21社(ヤフー、オービックビジネルコンサルタント、コーエー、オービック、セガサミーHD、日本システムディベロップメント、サイベネットシステム、日本デジタル研究所、メイテック、野村総合研究所、スクウェア・エニックス、ビック東海、もしもしホットライン、図研、フェイス、松下電工インフォメーションシステムズ、DTS、ゼンリン、セゾン情報システムズ、CSKHD、日信電子サービス)だった。次号では101位-200社のSIerについて分析する。
・続けて(下)を読む この記事は、今年5月、有限責任中間法人IT記者会がまとめた情報サービス関連企業205社の2006年3月期決算を参考にした。売上高や営業利益ばかりでなく、売上原価や一般管理費などの推移も調査しているが、ここでは紙面の都合から全体の概要を記すにとどめた。詳細は同会発行の「IT記者会Report」(Vol.2/No.8)またはホームページ(http://www.itkisyakai.jp/)を参照されたい。問い合わせは、電話 03-3519-6030/FAX 03-3519-6031