狙いは有力リセラー500社獲得
「まずはIBMを知ってもらう」
日本IBM(大歳卓麻社長)は、x86系サーバーシリーズ「IBM System x」の拡販のために「1000社の新規パートナーを年内に獲得」という挑戦的な数字をぶち上げた。年間販売台数などのコミットメントなしに入れる敷居の低い販売代理店制度を新設。この制度を武器にして「2年以内にx86系サーバーでトップシェアを狙いたい」という威勢のよい声も聞こえる。しかし、大胆な目標数値とは裏腹に、同社の担当部門は意外に冷静だ。「まずはIBMのよさを知ってもらうことが先決」と、敷居の低いパートナー制度で他社系販売会社を招き入れ、最終的に何社とリセラー契約を交わせるかが勝負という。(木村剛士●取材/文)
■付帯条件は一切なし 低い敷居で販社呼び込む 日本IBMが新たに獲得を目指す1000社のパートナー制度は、年間販売台数の目標設定や認定技術者保有の義務づけなどの契約条件を一切排除した。極端にいえば、売らなくても支援が受けられる極めて敷居の低い内容となっている。「まずはIBM製品を知ってもらい触れてもらうことから始める」(富澤和馬・パートナー事業担当代理)というわけだ。
この新プログラムでは、日本IBMからの営業支援もあり、パートナー向け総合支援制度「PartnerWorld」へ参加できるとともに、販売実績に応じた報奨制度の対象にもなる。まさに至れり尽くせりの厚遇だが、同社にすればそれでも他社系販社を自陣営に取り込むメリットは大きい。実力のある販社であれば、さらに手厚い支援を準備して、販売目標設定などの条件があるリセラー契約にまで持ち込みたいというのが、最終的な狙いだ。
「1000社のうち半分の企業とリセラー契約を結べれば」と、富澤氏は具体的な目標数値を頭に描いている。同社のリセラーは現在約300社。計画通りに進めば、その1.5倍以上の販社が新たに「IBM System x」を担ぐことになる。
■卸販社にも大きな恩恵 シェア上位狙う構図描く 同社のリセラーは「ボリュームディストリビュータ」と呼ばれる卸販売会社の下に位置して、IBM製品を仕入れる場合はこのボリュームディストリビュータを通じて製品供給を受ける。IBMによれば、昨年から、ボリュームディストリビュータに「IBM製品をより多く扱ってもらうような関係づくりを着々と進めていた。しかし、その下に位置するリセラーとIBMとの距離は遠かった」ことから、リセラーに対して、ダイレクトに支援することにしたわけだ。
付け焼き刃的な対応ではなく、昨年から動いていた施策であることを富澤氏は強調する。今回の戦略が奏功すれば、ボリュームディストリビュータにとっても恩恵は大きい。卸とリセラーのパイプを太くすることで、エントリークラスの販売台数を増加させれば、x86系サーバーで確実にシェア上位に食い込む構図が見えてくる。
■すでに50社が新制度に参加 2年以内にトップシェア狙う 5月下旬から6月上旬にかけて新パートナー獲得のために東京、大阪、名古屋の3か所で開催した「リセラー(販売代理店)勧誘セミナー」。会場にはこれまでIBMとつき合いのなかった約100社のITベンダーが参加した。そのうち「半分の50社は新代理店制度に参加する意向を示した」。まずは順調な滑り出しだという。
日本IBMのx86系サーバーのシェアは、台数ベースでトップ3にも入れていない(ノーク・リサーチ調べ)。今回の新代理店制度では、x86系サーバーだけでなくエントリーストレージやプリンタなどの機器販売も対象だが、焦点はやはりx86系サーバーの台数シェアアップだろう。日本IBM社内では、「勝たなきゃいけない分野。2年以内にトップシェアの座を射止めたい」という声もある。すでに競合メーカーの流通網が出来上がっているなかで1000社という数字は現実的ではないという印象もあるが、他社製品を担ぐ販売店が「契約条件がないなら参加するだけしてみよう」と試験的に加入することも考えられる。ポイントはコモディティ化し製品面で差別化要素がなくなりつつあるx86サーバー分野で、IBM製品を担ぐメリットをいかに訴求できるかだろう。
x86系サーバーは急成長マーケットで、今年度の市場全体の伸び率は二ケタ成長も見込めるという声も多い。メーカーシェアは、NEC、デル、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の3強争いの構図だ。まずはこの一角に食い込められるかがIBMの戦略の是非を測るうえで最初の試金石となる。
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| 日本IBM、金額シェアはトップだが台数はふるわず | ガートナージャパンがまとめた2005年の日本市場におけるサーバー(x86系およびUNIX、メインフレーム、オフコンなどを含む)出荷実績をみると、日本IBMのシェアは台数ベースでは13.9%で5位だが、金額では19.8%で首位に位置する。ハイエンドのサーバーやブレードサーバーなど単価の高いサーバーが売れているが、エントリーモデルには弱い面を象徴している。 ガートナーでは、x86系および「Itanium」搭載サーバーの伸び率が高いと分析している。x86系サーバーをいかに拡販できるかが、サーバー台数シェアに大きく影響してくる。 |  | | | |