その他
ITSS Ver.2 各企業がカスタマイズ、肉づけすべき
2006/10/09 14:53
週刊BCN 2006年10月09日vol.1157掲載
IT技術者不足とIT企業の人材育成力の低さを打開するツールとして国が用意したITスキルの国家的指標「ITスキル標準(ITSS)」。今年4月、初めてのバージョンアップを図った。ただ、ITSSはこれまで導入の困難さや、導入後の成果の不透明さが叫ばれているツールでもある。失敗例も少なくない。ユーザー企業の観点からITSS普及支援活動を行うNPO「ITSSユーザー協会」の専務理事を務め、ITSS作成も支援する高橋秀典氏などへの取材をもとに、ITSSの普及が進まない理由と“正しい”使い方を探った。(木村剛士●取材/文)
人材育成戦略なき活用は逆にマイナスに
■ITSSは万能ではない 企業ごとに指標設定せよ
「ITスキル標準の定義内容は共通指標として活用し、自社のビジネス戦略に合わせて企業固有の定義内容に置き換えた指標を設定することが求められる」──。
今年4月に公表されたITSSの最新版「ITSS Version2概要第1部」の一部をそのまま表記した。この一文を明記した点に、これまでの問題点が浮き彫りになっている印象を受けた。重要なポイントは、「(ITSSをもとに)企業固有の定義内容に置き換えた指標を設定する」の部分だ。つまり、「それぞれの企業がITSSをカスタマイズ、または肉づけせよ!」ということを意味している。
ITSSで定めた定義内容は、あくまでどの企業にも当てはまる共通項目しか明記されていない。必要なスキルをすべて定義することはできないため、共通項目だけが明記されている。各IT企業にとって、ビジネス戦略や事業領域が異なる以上、育成しなければならない人材のスキルも当然ながら変わる。活用する場合は、自社のビジネス戦略や業務スタイルに合わせて内容を加える必要があるというわけだ。
ITSS初期版が公表された時から数えれば12月で4年が経つ。もともと、こうした見解は、ITSS初期版が発表された当時から指摘されていた。しかし、ITSSの定義内容が、それぞれの職種に必要なすべてのスキルを明記してあるように感じるIT企業が多かったため、混乱が生じていた。この混乱が、企業のIT人材育成戦略に貢献するケースが少ない大きな理由でもあった。Ver.2の概要にこの項目を明記したことが、それを裏づけている。
ITSS Ver.2の作成をユーザーの立場から支援したITSSユーザー協会の高橋秀典専務理事は、この言葉を盛り込んだ意味の大きさを強調する。「人が財産のIT企業にとって、人材育成は極めて重要な経営戦略。ITSSをあくまで共通指標として考え、その後職種ごとに自社固有のスキルを加える企業が少なかった」と話している。
■形だけを取り入れてもダメ 人材育成戦略を練り直せ
ITSSで失敗するのは、ITSSで定めた定義内容をそのまま用い、各社員のスキルと照らし合わせて人事・評価制度に反映してしまうケース。換言すれば、単純に今の社員のスキルをITSSをもとに評価しただけで、その後の人材育成戦略まで踏み込めていない企業ともいえる。“肉づけ作業”がされていないため、自社のビジネスには合わないという問題が生じたわけだ。
高橋専務理事は、ITSSの活用が進まない根本的な理由をこう指摘する。「そもそも人材育成戦略がないままでITSSを使うところが間違っている。『難しそう』という先入観から、ITSSの中身をしっかりと把握していない企業も多い。自社に今、何が必要なのかをまず定義し、ITSSの中身を熟知したうえで、ITSSはあくまで参照モデルとして活用することが大事だ」。
ITSSの利用による成果が上がらないのは、その定義内容や職種の問題ではなく、ITSSへの理解度の低さ、企業の経営における人材育成戦略のプライオリティの低さという基本的なところに問題がある。IPAやITSSユーザー協会などのIT産業団体が、活用のための解説書などを豊富に提供しているにもかかわらずだ。
基本的な部分、内容をしっかりと明記してバージョンアップしたITSS。ITSSが公表されて4年ほど経つが、いまだこのような基本的な内容に対して理解が浅いことに問題を感じる。IT産業界の人材育成に対する意識の低さを物語っている気がしてならない。
IT技術者不足とIT企業の人材育成力の低さを打開するツールとして国が用意したITスキルの国家的指標「ITスキル標準(ITSS)」。今年4月、初めてのバージョンアップを図った。ただ、ITSSはこれまで導入の困難さや、導入後の成果の不透明さが叫ばれているツールでもある。失敗例も少なくない。ユーザー企業の観点からITSS普及支援活動を行うNPO「ITSSユーザー協会」の専務理事を務め、ITSS作成も支援する高橋秀典氏などへの取材をもとに、ITSSの普及が進まない理由と“正しい”使い方を探った。(木村剛士●取材/文)
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