創業から5年も経たない研修・セミナー事業のベンチャー企業が、中堅SIerのシーイーシー(CEC)グループのブログシステム「OpusSquare BLOG(オーパススクウェア ブログ」を導入した。自社サービスの強みと特徴を公開するだけでなく、ユーザーとの意見交換のツールとしても使用。集客力が高まり「ブログシステムは最強の営業担当者」と評価する。ITリテラシーも決して高くなく、投資予算も少ないベンチャーにどんな提案が受け入れられたのか。決め手は「分かりやすさ」だった。(木村剛士●取材/文)
IT知識ないベンチャーでもブログをフル活用
CECのOSSベース製品を採用
■自社をPRできる手段を模索 宣伝をITに託す CECの「オーパススクウェアブログ」を導入したのは、2003年創業のファイブスターズアカデミー。企業・団体向けにセミナーや社員研修事業を手がける。足立好穂代表取締役が専業主婦から一転、セミナー講師として8年間の経験を積んだ後に設立した。
足立氏自身も年間約250日講師業務を行うほかに30人の講師を確保。大手コンピュータメーカーの新卒社員約700人向けの研修を手がける予定もある。売上高はまだ小さいながら倍々で伸びている。
ファイブスターズがオーパススクウェアブログの導入を決めたのは昨年秋。成長路線を歩むなかで顕在化してきた問題を解決するためだった。講師数は増え続けていたものの、従業員数10人にも満たない規模のため営業担当者が不足していた。また、会社の強みをアピールしたり、講師の特徴を知らせる取り組みもほぼ皆無だった。インターネットの活用も、ITリテラシーが高くないため「ほとんど更新していなかったホームページを持っていた程度」。
営業やマーケティングの担当者を早急に増やすことが難しかったなかで、ウェブ上でのプロモーションに活路を見出そうと、足立氏は漠然と考えていた。
提案活動に動いたのは、CECのSI子会社であるシーイーシーソリューションズ(CECソリューションズ)の山田治典・システム部グループマネジャー。オーパススクウェアブログの製品企画から設計も手がけた生みの親で営業の陣頭指揮も執る。提案活動を開始してから約1か月でのスピード受注。昨年11月に開発をスタートし、今年5月から本格運用を開始した。
構築したブログサイトでは、会社の強みやアピールポイントなどの基本情報のほか、セミナーで人気のあるカリキュラムのダイジェスト動画を掲載。足立氏や講師陣のブログサイトもリンクした。更新が簡単なため足立氏は毎日ブログを更新しているほか、講師陣も定期的に情報をアップデート。これにより、ブログポータルサイトへのアクセスが急増して、受注が増えた。ユーザーの意見・要望も数多く耳に入るようになったという。稼働してまだ半年程度だが、「現時点で投資は回収できたと思っている」と足立氏は評価する。
■競合を蹴散らした「分かりやすさ」素早い提案と低予算が奏功 オーパススクウェアブログは、CECが推進するオープソースソフトウェア(OSS)をベースにした「OpusSquare」シリーズの一製品で、今年5月に本格的に販売を始めた。納入実績は大手航空会社など26社。ファイブスターズは第一号ユーザーだった。
「導入企業数はまだ少ないが、約30社への提案で26社から受注した。受け入れられる確率は非常に高い」(山田グループマネジャー)。発売後1年間で200本の販売を狙っている。
OSSベースのシステムで、ウェブサーバーには「Apache(アパッチ)」、データベースには「MySQL」、スクリプト言語には「PHP」を使う。一般的な商用ブログシステムに比べて低価格で構築でき、ソフトのライセンス料は100万円(1000ユーザー版)。ファイブスターズは、この1000ユーザー版を購入し開発・構築も依頼して約200万円でつくりあげた。
提案から1か月でというスピード受注の裏には、山田グループマネジャーの独特の提案手法があった。提案開始直後に模擬ブログサイトをファイブスターズ用に開設。足立氏の要望に沿って、そのつどカスタマイズ開発を無償で提供していった。1か月後には満足できる内容になり、そのまま受注につながったわけだ。受注後は、運用までの期間を利用してブログ更新のための教育まで施すサポートサービスも受注に寄与した。
実は、オーパススクウェアブログを導入する前、2社のSIerからブログシステムの提案を受け、そのなかの1社に任せるはずだった。それが一転、後から割って入ったCECソリューションズに任せた。
CECソリューションズに乗り換える動機となったのは、提案の早さと分かりやすさだった。「ITの知識がなく、BLOGが何なのかが分からないなかでも、一から説明してくれ、迅速に要望を反映して模擬サイトで実証してくれたのが大きかった。他社は、横文字ばかりで説明が難しかったり、発注を決めた後でもなかなか話が進まなかったり問題があった」と足立氏は振り返る。
ファイブスターズのプロジェクトは、構築まで含めて約200万円という決して大型とはいえない案件。だが、CECソリューションズではオーパススクウェアブログがきっかけとなり、さまざまなオプションサービス提供につながり、ビジネスが広がっている。
| ユ | | こんな提案が欲しい | | ユーザーに聞くSIerに求めるモノ | | | 私も含めファイブスターズの社員は決してITの知識が豊富なわけではない。また、IT予算が多くもない。今回のブログシステムの導入もかなり思い切った投資になったが、営業案件の増加にも結び付き、投資した分のメリットはあった。すでに回収できているという認識を持っている。 今回すでに提案をもらっていた2社を断り、CECソリューションズに | | | 乗り換えた理由は、説明の分かりやすさと迅速な提案だった。何社かSIerの提案を聞いていたが、専門用語が多く理解しにくい部分が多かったため、分かりやすい言葉で説明してくれるCECソリューションズの提案が勝った。 ブログはもちろんIT全体に明るくない当社がSIerに求めるのは、「バカにしないで一から説明して欲しい」「見放さないで欲しい」ということ。IT業界では当たり前な単語でも、分かりやすく懇切丁寧に説明してもらうのが一番ありがたい。(談) | | │ | | ザ | | │ | | の | | 眼 | |