米国のIT企業視察の旅も終わりに近づいてきた。最初に訪れたマイクロソフトでは、久々に新OSをリリースする同社の意気込みに触れることができた。iPodの大ヒットに沸くアップルなど元気な企業を訪問し、さらにはシリコンバレーのPC販売店の様子をこの目で確かめた。(吉若 徹●取材/文)
現地の店で見たこと、聞いたこと
日本のPC販売店と異なる点は
シリコンバレーは、1990年代の代表的プレーヤーであったコンピュータのハードウェア、ソフトウェアベンダーからYahoo、グーグルなどのインターネット関連ベンチャーに勢力図が変わってきた。
PC販売店の品揃えは様変わり-主役は薄型テレビにシフト-
主役交代に歩を合わせるように、シリコンバレーのPC販売店もWindows 95が発売された頃と比べると様変わりしている。
ベスト・バイ、マイクロ・センター、コンプUSA、フライズ・エレクトロニクス、サーキット・シティなどIT関連販売店の今の目玉は大型サイズの薄型テレビである。どの店舗も薄型テレビのコーナーを広く設け、20インチ前後のサイズから100インチのリアプロジェクションタイプまで取り揃え、迫力のある陳列で来店客にアピールしている。
各店で必ず見かけるのがホームシアターの提案コーナーだ。50インチ前後の薄型テレビにサラウンドシステムを組み合せ、ソファーを置いてリビングルームを演出し、映画館の雰囲気を訴求している。
どの店も専任の販売員を配置して顧客の対応に余念がない。展示してある薄型テレビのおおよその販売価格はHP製の50インチプラズマHDテレビが2600ドル、ソニー製40インチ液晶HDテレビが3000ドル、ソニー製60インチリアプロジェクションテレビが3500ドルである。薄型テレビのほか、デジタルカメラ、携帯オーディオ、DVDプレーヤー、携帯電話などに各店とも注力している。

デジタルカメラは日本製のオンパレードだ。日本の家電店のデジタルカメラコーナーが、そのままカリフォルニアの販売店に移ってきたように見える。
携帯オーディオコーナーはiPodの独壇場である。ケースなどサプライグッズも数多く陳列され、生活者に溶け込んでいる様子がうかがえる。米国も日本も販売店の事情は同じようだ。
コンテンツの豊富さに圧倒される-目的買いの顧客が多い-
米国の販売店と日本の販売店の相違点は、陳列されているDVDコンテンツの量である。音楽CDも含めて、旧作から新作まで豊富に展示・販売されている。日本の販売店ではDVDおよびCDのコンテンツはハードウェアの販売を促進する役割で陳列されているが、米国ではDVDやCDそのものを目当てに買いにくる顧客が多い。販売店の多くが郊外のショッピングセンターで大型店舗を展開しており、陳列スペースが広いことも理由のひとつだろう。
店舗の販売員からは「大型テレビ、DVDレコーダーがよく売れる」という声が聞かれた。CATVが発達し、映画やショービジネスが産業として隆盛にある国柄からなのだろう。

HPはHPブランドとコンパックブランドのダブルブランドで店頭展開しているが、店頭で販売されているパビリオン・メディア・センターのスペックと価格を見て驚いた。CPUにインテル製Core2Duo、メモリは1ギガバイト、HDDは1テラバイト、DVD、TVチューナーがついて1400ドルである。店頭販売のHDDが1テラバイトの容量まできた。しかも1400ドルという値段だ。100ギガバイトのHDDがすごいと驚いていたのはつい最近のことだったのに。それにプリンタや周辺機器、サプライ品の品揃えも豊富だ。
米国のビジネスマンは移動する際には常にノートPCを携行している。空港やカフェテリアでは、時間さえあればノートPCを開いてメールや文書をチェックしている。この様子も日本とよく似ている。
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今回、米国で業績が好調な企業6社を訪問した。どの企業も好業績に裏づけされて、活気があり、元気な様子を垣間見た。
80年代からIT産業をけん引し、ビジネスを展開していたマイクロソフト、アップルコンピュータ、ヒューレット・パッカード、アドビシステムズ、トレンドマイクロの各社は、いずれもビジネス市場、コンシューマ市場を明確にターゲットとした製品作りに注力し、市場拡大にチャレンジし続けている。その努力の成果として、PCがビジネスや人々の生活のなかに日用品として浸透している様子がうかがえた。(おわり)