XMLデータの争奪戦が激化している。大手データベースベンダーが相次いでXMLデータへの対応を強化。これに対抗するXML専用データベース(XML専用DB)ベンダーも機能強化を打ち出す。主要な文書フォーマットや業務ソフトがXML対応を加速させていることなどからXMLデータの生成数は急速に増える。このデータの格納先としてのXMLデータベース(XMLDB)の需要が拡大。戦略の成否次第ではDB市場全体の勢力図に異変が起きる可能性もある。
大手DBベンダーVS専用DBベンダーの構図
XMLデータベースを巡っては日本オラクル、日本IBM、マイクロソフトの主要DBベンダー3社がこぞって既存のリレーショナルデータベース(RDB)とXMLDBの機能を一体化した“ハイブリッド型”を投入。これに対抗する新興DBベンダーはXML専用DBで切り崩しにかかる構図になっている。
RDBの顧客基盤を持つ大手3社はバージョンアップなどのタイミングでXML機能を盛り込んだハイブリッド型を売り込む。顧客は既存システムに大きな手を加えなくてもXMLDBの機能が得られ、ハイブリッドDBベンダーはXML専用DB陣営と一戦を交えずにXML需要を取り込めるメリットがある。
一方、XML専用DBを主力とするベンダーは処理スピードと柔軟性で対抗する。東芝ソリューションは2006年11月に、既存データをXML形式に変換する機能を盛り込んだ新版XML専用DBの販売を開始。RDBやグループウェアのノーツなど複数箇所で管理されるデータをXML形式に変換し、自社のXML専用DBへ取り込む。顧客企業内で分散するデータをXML専用DBで一括してコントロールしようという戦略だ。
ユーザーはXML専用DBから必要な情報を抽出し、経営分析や内部統制の強化に役立てる。さらにデータを探し出す検索エンジンに自然言語処理機能を追加。よりスムーズに目的となるデータを引き出せるように改良した。XML専用だけに「処理速度の速さは世界トップクラス」(東芝ソリューションの齋藤稔・プラットフォームソリューション事業部商品企画部参事)。テラバイト級の大容量データにも対応する。
同じくXML専用DBを開発するサイバーテックは「ハイブリッドで重厚長大になると、逆に柔軟性が低くなる」(橋元賢次社長)と、統合化ばかりが最良の選択ではないと指摘する。まずは非定型データの多くを占める表計算ファイルやワープロ文書などを手早くXMLデータベースに収納し、必要があれば基幹業務システムのRDBとデータ連携させる。フロントエンドの情報を管理するのに基幹系システムまでさかのぼって刷新していては時間とコストがかかる。
これに対して大手ベンダーは、「既存システムのDBであらゆる情報が記録できれば利便性が高まる」(日本オラクルの北嶋伸安・システム製品統括本部営業推進部Grid Computingグループシニアマネージャー)といった見方や「ユーザーはデータの形式を気にする必要はない」(マイクロソフトの深瀬正人・サーバープラットフォームビジネス本部プロダクトグループアプリケーションプラットフォームマネージャ)などとハイブリッド型DBによる統合化の利便性を主張している。「ハイブリッド型DBの処理速度は飛躍的に向上している」(日本IBMの渡邉宗行・ソフトウェア事業ブランド事業推進インフォメーション・マネジメント事業部事業部長)とパフォーマンスでも優位に立つとしてXML専用DBをけん制する。
現在、主要な文書フォーマットや業務ソフトのXMLへの対応が急ピッチで進行している。マイクロソフトが07年1月末、一般向けに販売を始めるオフィス2007もXML対応を大幅に強化する。これまでファイルサーバーなどに保管されていたデータをDB化すれば再利用が容易になるばかりでなく、内部統制もかけやすい。
XML需要の拡大はDBの買い換えを促進する材料にもなるだけに、大手DBベンダーと専用DBベンダーのつばぜり合いが激しさを増すのは必至だ。