コンシューマ機器の融合が進む
製品・サービスの提案が主流に
米国家電協会(CEA)が主催する世界最大のデジタル機器総合展示会「2007インターナショナルCES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)」が米国時間の2007年1月8-11日の4日間、ラスベガス(ネバダ州)で開催された。今回のCESでは、コンピュータや家電、ネットサービスなどを連携させた展示が多かった。エレクトロニクス分野の技術革新が進むなか、最新技術を駆使してライフスタイルの快適性を訴える提案型の製品・サービスが活発化していることがうかがえた。(佐相彰彦●取材/文)
■デジタル機器の利便性を提案 基調講演にユーザー企業が登壇 「2007CES」は、来場者に対して最新技術を前面に押し出した製品をアピールするというより、デジタルライフによる利便性を提案するとの意味合いが強かった。開幕初日の1月8日、基調講演にゲイリー・シャピロ・CEAプレジデント兼CEOが登壇し、「パソコンなどコンピュータ機器による映像機能の搭載や、HD(ハイ・ディフィニション)オーディオの登場など、さまざまなデジタル・レボリューションが起こっている。今年は一段と新しいコンバージェンス(統合性)が生まれる可能性が高い」と挨拶。「こうした技術革新を安全性や快適性を含めて消費者にきちんと伝えていかなければならない」と訴えた。基調講演にはエレクトロニクス業界のキーマンに加え、ウォルトディズニーのロバート・アイガー社長兼CEOやCBSのレスリー・ムーンヴェス社長兼CEOなどもスピーカーとして登壇した。
このことについてシャピロ氏は「コンテンツ配信業者がコンシューマに対してサービスを提供するための最適な製品やシステムの導入が当たり前になっている。エレクトロニクス分野のユーザーとして製品・サービスの利便性を来場者に伝えてもらうためにスピーカーとして選んだ」としている。
■連携のカギに「ビスタ」が浮上 PCメーカーは対応製品を出展 各製品の連携を容易にするソフトウェアが、マイクロソフトの新OS「Windows Vista(ビスタ)」との見方もある。CES前夜祭の1月7日、同社のビル・ゲイツ会長兼チーフソフトウェアアーキテクトが基調講演し、「誰もがインターネットを活用するようになり、デジタルライフの世界が当たり前になりつつある。ところが、デジタル機器を取り巻く環境は、コネクティビリティがまだ足りない」と指摘。デジタル機器の接続を可能とするのが「ビスタ」であることをアピールした。
ゲイツ会長は「ビスタ」の登場で、「これまでの枠を超えて、製品として提供するのではなく、“サービス”として提供できるようになる」と強調した。CESでは「ウィンドウズ・ビスタ・パートナー・パビリオン」と呼ばれる特設会場を設け、パソコンメーカーや周辺機器メーカーなどの製品とビスタを連携させることで可能になるライフスタイルを提案していた。
各パソコンメーカーも、「ビスタ」対応新製品をCES会場で披露した。ヒューレット・パッカード(HP)は、タッチパネル操作が可能な「TouchSmartPC」を展示。キッチンやリビングなどにパソコンを置き、電話伝言のメモ書きなどがパソコンでできることや、画面上にレシピを映し出してチェックしながら料理ができるといったデモを行っていた。ほかにも、東芝がパソコンに保存してある映像を薄型テレビ「レグザ」で視聴できるコーナーを設置したほか、ソニーはパソコンの新製品としてリビングの雰囲気を意識した、ホワイトカラーの円柱型モデルを発表した。
■デジタル機能が自動車業界に波及 メーカー間のアライアンスがカギ  |
| CES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー) | | CEAが主催する世界最大のエレクトロニクス総合展示会。「2007インターナショナルCES」で40周年を迎えた。今回は、世界130か国から約2700社のエレクトロニクス関連企業が参加、過去最大規模となった。「ラスベガス・コンベンション・センター(LVCC)」を中心に、「ラスベガス・ヒルトン」や「サンズ・エキスポ/ザ・ベネチアン」などホテル内でも出展企業がブースを設置しており、すべての会場を合わせると180万平方フィート(約550平方キロメートル)のスペースとなった。来場者数は、1月8-11日の4日間で14万人を超えた。 | | | |
「2007CES」の会場では、自動車関連ブースを集めたホールがあり、参加メーカーが車内に搭載したコンピュータ機能のデモを実施していた。
シャピロ・CEAプレジデント兼CEOは、「最近では、自動車でも無線LANによるインターネットサービスが当たり前になりつつある」と、デジタル機能がエレクトロニクス業界だけでなく、自動車業界にまで広がっていることを説明する。
提案型ブースが主流になっていることや、ほかの業界にも波及していることを踏まえ、コンシューマによるデジタル・ライフの実現に向け、“製品連携”がひとつのキーワードといえそうだ。シャピロ氏は、「コンピュータと家電、ネットサービスが1製品に統合することは、現段階であり得ないだろう。各メーカーは、いかに自社製品がさまざまな他社製品と接続できるかに焦点をあてなければならない」としている。
そのためには、各ベンダーによるアライアンスの活発化が需要増大のカギということになる。