その他
大手SIerの人的資源開発 「女性の力」活用へ
2007/04/09 21:10
週刊BCN 2007年04月09日vol.1182掲載
大手SIerが女性の人的資源開発に相次いで乗り出している。女性が働きやすい職場環境を整えることで、男性に比べて高い離職率を低減させる。短期的には深刻化するSE・プログラマ不足の解消を狙いとしているが、中長期的にはビジネスモデルを刷新するうえで“女性の力を活用したほうが有利”との判断が働いている。国内SIerは欧米企業に比べて女性が活躍する場が少ないといわれてきた。だが、ここにきてようやく重い腰を上げ始めた。(安藤章司●取材/文)
重い腰を上げる
■まずは女性の採用数を増やす
日立ソフトウェアエンジニアリング(日立ソフト)は、子育て中の社員が柔軟に勤務体系を選べる制度を4月から新しく導入した。伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)も女性管理職が後輩の女性社員のキャリアアップを支援するメンター制度を5月から段階的に始める。各社がこうした取り組みを行うのは、女性の力が十分に活用できていない深刻な問題が横たわっているためだ。
数字で見ると日立ソフト単体ベースの社員全員に占める女性の比率は約11%だが、課長以上の管理職に占める比率はわずか3%。CTCも女性比率は約14%だが管理職以上になるとやはり3%弱に低下する。
また、男性社員全体に占める男性管理職の比率は日立ソフトが約13%、CTCでは約21%であるのに対して、女性社員全体に占める女性管理職の比率は日立ソフトが約3%、CTCは約4%とともに低い。仮に男女ともに同じ能力だとすれば、入社以降同じトレーニングを受け、同じ経験を積めば、理論的には管理職に昇進する比率も似通った数値でなければならないはずだ。
だが、現実問題として全社員に占める女性比率が10%そこそこでは、「女性が特殊な存在」(CTCの富田博取締役)になり、職場で浮いてしまう恐れもある。CTCは新卒採用数のうち女性比率2割以上を維持する目標を掲げ、日立ソフトでも来年は今年の2倍に相当する3割に増やす計画を立てる。女性社員を増やすことで働きやすい環境を整える考えだ。
■離職要因を取り除く
出産育児などを理由に、女性の退職率は男性の2-3倍高いといわれており、この点でも改善が進む。
日立ソフトでは4月からコアタイムのないフレックス制度を導入し、子供が小学校を卒業するまでの約12年間利用できるようにした。勤務時間も4-7時間のあいだで自由に選べる。従来はコアタイムを設定、短時間勤務をする場合も一律6時間と固定されていた。昨年10月から有志女性からなるワーキンググループを発足させ、働きやすい職場環境を検討してきた。この成果として「業界に先駆けた柔軟な勤務制度」(桑原弘美副社長)の導入にこぎ着けた。
CTCは勤務体系を改善するとともに女性管理職自らがロールモデルになって後輩をサポート。仕事のやりがいを伝えることで2010年までに管理職に占める女性比率の倍増を目指す。
これまでプログラミング作業は“女性に向かない”といわれ、女性の側も敬遠する傾向が強かった。しかし、現在は顧客企業の要望を聞き込んで使いやすい業務システムを設計するなどの上流工程に、より高い価値が見いだされるようになった。コミュニケーション力や柔軟な発想力が求められる仕事だ。プログラミングは中国やインドなど海外の協力会社でもできる。
付加価値の高いサービスや製品を生み出すには、綿密なマーケティング力や洞察力が欠かせない。日立ソフトやCTCでは、女性の人的資源開発はそのための有効な戦略として捉えているのだ。
ここで取り上げたのは大手SIerの事例だが、人材不足は企業規模の大小を問わず、襲いかかってくる。むしろ、人的資源に乏しい中小SIerこそが真剣に取り組まなければならない課題だ。女性の力を生かすことが企業の活性化につながることは間違いない。
大手SIerが女性の人的資源開発に相次いで乗り出している。女性が働きやすい職場環境を整えることで、男性に比べて高い離職率を低減させる。短期的には深刻化するSE・プログラマ不足の解消を狙いとしているが、中長期的にはビジネスモデルを刷新するうえで“女性の力を活用したほうが有利”との判断が働いている。国内SIerは欧米企業に比べて女性が活躍する場が少ないといわれてきた。だが、ここにきてようやく重い腰を上げ始めた。(安藤章司●取材/文)
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