弥生・竹之内 Longhornの位置づけは、各社と同じです。当社では、Longhornに搭載される固有の機能を調査・研究しています。スタンスとしては、年内にLonghorn環境で「弥生シリーズ」が動くことを可能にします。
Longhorn固有機能に対する考え方としては、SQLサーバーやライセンスのあり方を含めた議論になります。単年度の議論ではなく、ユーザー企業の状況を見つつ、ビジネス的な判断をする必要があると考えています。
司会 ここまで、06年と07年の業務ソフト市場のトピックを聞きました。これを踏まえ、07年はどんな販売戦略、パートナー戦略で臨むのか、その方向性を述べてください。
OBC・大原 Longhorn準拠の「次世代製品」やSaaS型などの提供が、需要を喚起するうえで、どんなユーザー層に適用するかを考えることが重要です。当社は、マイクロソフトのアーキテクチャにフォーカスした戦略を打ち出していますので、今秋に向けLonghornに対応した製品ラインアップを揃えることは必須です。
内部統制対応やSaaS型サービスなどは、必然性が生まれないと、導入されにくい。そのため、当社製品だけでは、需要喚起が難しいので、上流工程でコンサルティング会社などとの連携が必要になります。上流工程から関与していかなければ、他社製品と連携していくなかで当社製品が参加しにくい状況が出てきます。そのビジネスに参加するために、必要なパートナーと組んで、当社の差別化製品を拡販していきます。
昨年10月に提供を開始した企業の内部統制文書作成ツール「奉行DOCUMENT Pack」は、従来にない製品です。セミナー参加企業へ販売していくツールですが、その際にニーズを探る意味で重要な製品です。そのなかで、当社の既存製品だけでなく、他の製品を含めてソリューションを整備する必要性を再認識したわけです。
PCA・折登 話題となっている内部統制は、当社も重要視しています。ただ、OSKのように大塚商会の製品や情報系ソフトなど幅広い製品をもつベンダーと、業務ソフトだけのベンダーとの温度差はあります。
当社でも内部統制をテーマにしたセミナーを開催すると、非常に集客がいい。半面、内部統制を強化するなかで、企業活動を阻害する要因も出てきています。その負担やコストを軽減すべく製品開発しています。
内部統制以上に、消費税改正のほうが“本命”と見ています。過去を振り返ると、消費税の改正は最もビジネス・インパクトがあるのは周知の通りでしょう。当社単独で年間10-20億円の“特需”が期待できます。改正を含め2010年頃まで見据え、中期戦略を立案することが大事です。
現在、「Dream21」というフラッグシップ製品がありますので、それをしっかり売り切れるパートナーとの連携に注力しています。また、デジタル複合機(MFP)との連携を見据えた製品開発をしていくことが重要になっています。
弥生・相馬 ネットワーク版を出して2年が経ちますが、現在全国でパートナーとして600社強と契約していますが、まだまだ足りません。

ただ、“数の論理”ではなく、パートナーの質が問われています。東京・名古屋・大阪の商圏でパートナーをいかに強化するかが重要。「売れる販社」でなく「売る販社」を育成することに注力します。パートナーの得意分野を生かした戦略をとります。
当社が最も弱いのが、コピー販社など事務機系販社などをどう活用するかが、昨年と違う展開になります。販社別の得意分野へ顧客を、どう誘導するかが課題になります。
OSK・田中 OBCと同じく、上流のコンサルティング・パートナーから最終のハードを絡めたサポート・パートナーまで、大塚商会チャネルなどを経由して、質を高める拡販を増やします。昨年に比べ、新規販社が30社弱増えています。
もともとの事務機系販社のチャネルを生かしつつ、当社で情報系と基幹系を事業化していますので、MFPの画像システムとERPを連携させることなどを、より強化したいと思います。
ただ、大塚商会のマーケットは、東京・名古屋・大阪に集中していましたので、それ以外の政令指定都市などに対しては、材料を売るだけでなく、特に中堅・中小企業は正社員が不足していることに配慮が必要です。だから、パートナーとサービス体制を組んでいかないと、ERPなどを拡販することは難しいと考えています。今回参加の各社とも、変にテリトリーを奪い合うのではなく、得意・不得意をカバーしつつ連携していきたいです。
応研・岸川 「建設大臣」を出した当初は、建設系コンサルタントを付けて、“ドンブリ勘定”の見直し徹底を意識づけてきました。非営利法人や企業でも、IT統制やディスクロージャーなどが重要になるなかで、既存のコンサルティング・パートナーと築いた連携ノウハウを生かし、今年から上流からの支援を強化しています。
当社製品で足りないワークフローや承認に必要な機能は、パートナーの製品と融合させて提供することに力を入れる。昨年から、こうした動きを強めているので、これを地域に根づかせる展開をしようと考えています。
座談会を終えて
今回、座談会に参加した国産業務ソフトウェアベンダー5社は、マイクロソフトのアーキテクチャにフォーカスした事業展開をしている。それだけに、プリンタドライバの未整備やJIS規格への対応遅れなどで、Vistaがビジネス市場で立ち上がらない現状に不満を抱いていた。
一方、64ビット対応のLonghornリリースを機にした“特需”への期待は高まる一方だ。各社は「次世代製品」と称して、新プラットフォームを年内に出すべく、急ピッチで開発を進めている。
実は、今回の記事では省いたが、「次世代製品」を議論するなかで、SaaS型などのオンデマンド事業への取り組み状況に言及した。ほとんどのベンダーが「SaaS型ビジネスは、パッケージビジネスと共存できるか?」などとリサーチを開始していることが判明した。Longhornでシステム環境が64ビット化され、その次に訪れる“新しい波”として認識しているのだ。
また、内部統制強化の動きに応じて、既存の販社だけでなく、上流工程のコンサルティング会社や開発パートナーの充実を進め、競合ともいえる国産・外資系ERP(統合基幹業務システム)ベンダーなどとの製品連携を強化する傾向にあることも分かった。
業務ソフトベンダーは、自社単体の製品だけでなく、他社の業務ソフトや情報系システム、コンサルティング会社などと連携を強めていくことが必須となっているようだ。