富士通サポートアンドサービス(Fsas、前山淳次社長)は、保守・サポート会社から富士通の「中核会社」へとポジションを移す。富士通本体のSEを大量投入し、システム提案・構築から運用・保守まで、ITインフラのライフサイクル全体を一元的に担う。富士通の「システムプラットフォーム事業」は昨年度、「サーバーなどの価格低下の影響を受けた」(黒川博昭社長)ことで収益が減少。ITインフラ販売だけに頼らず、Fsasの付加価値サービスで同事業の改善を狙う。(谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文)
社名を「富士通エフサス」に
■多段階の構造を解消 Fsasは2004年10月に上場を廃止し、富士通の100%子会社に移行した。それまで、グループ全体では、本体や富士通SE子会社を含めた保守パートナー87社がからみ、「他段階のサポート」体制になっているという弊害があった。「ユーザー企業への出動や問題解決までの所要時間などの満足度が万全ではなかった」(前山社長)と、「スピードNo.1」を掲げ改革を断行してきた。
現在までには、本体の「コールセンター」など保守・サポート事業をFsasへ移管。昨年10月には、全国8か所にあるFsas運営の「LCM(ライフサイクルマネジメント)センター」を富士通グループの拠点へと衣替えし、グループ共通の「LCM総合メニュー」の提供を開始。5月には、体制構築の「集大成」として、本体の先進技術研究をする「共通システム技術」と、サーバーとソフトウェアなどを検証・融合する「プラットフォームソリューションセンター」のSE各130人をFsasに異動させ、「インフラテクノロジーセンター」を新設している。
■年率2ケタ成長を目指す ITライフサイクルの「下流」である従来の運用・保守・サポートに、システム提案・構築の「上流」を加えて、Fsasがグループ内の「インフラSE工場」と称する役割を担い、富士通のユーザー企業を一元的に担当する。主に、富士通の主要ユーザー企業である大手企業約400社のITインフラを手がける。
富士通ビジネスシステム(FJB)やPFUなど保守パートナー87社に対しては、「ITインフラ販売にプラスして、他のサービスを拡大できるように支援する」(前山社長)ほか、中堅・中小企業に対しては、子会社のエフサス・テクノや地場SIerと連携してサービスを提供していく方針だ。
富士通のハード販売である「システムプラットフォーム事業」の連結営業利益は昨年度、75億円で前年度に比べ170億円も減少。ハード販売と保守・サポートを有機的に統合、新たな付加価値を提供し、利益率を改善することが必須となっていた。
Fsasの事業のうち、昨年度は、「運用サービス」の売上高が前年度比115%増の380億円、「システム構築サービス」が同104%増の420億円。今回の再編によって、前山社長は「両事業の絶対値を上げ、年率2ケタ成長させることを目指す」ことができる体制が整ったと自信を見せる。
国内の保守・サポートビジネスは、それを必要とする大企業を中心に、同社や他の保守ベンダーのサービスが行き届き、大きな成長が期待できない状況にある。一方、サーバーやパソコン、ネットワーク機器などハード販売は、低価格競争で高収益が望めなくなっている。ハード販売と保守・サポートを一元化する動きは、競合他社にも波及しそうである。
前山淳次社長に聞く
案力あるCE育成
──Fsasを変革する理由は?
前山 サービスの提供などが多段階な構成を経る形で、ユーザー企業に必ずしも満足を与えていなかった。この課題の解決が大きな理由だ。
──競合他社と比べどうなのか?
前山 当社のベンチマークによると、上場廃止前はNECフィールディングに比べ、出動や問題解決の所要時間などで下回る部分があった。現在は、1-2位を確保できている。
──不足部分をどう補ってきたか?
前山 CE(カスタマー・エンジニア)の能力を上げ、言われたことをちゃんとするだけでなく、自ら問題に気づき提案できる人材に育てた。
──富士通本体の顧客と自社顧客の割合は変化するのか?
前山 大半は本体顧客の請け負い。この比率は変わらないが、ITインフラのライフサイクル全体に関する提案をして、絶対値を上げる。
──社名を「富士通エフサス」に変更する(7月1日付)が、理由は?
前山 上場当時は本体との違いを鮮明にするため「Fsas」とした。今回の再編で、富士通を代表する企業になったため、富士通ブランド色にする。