コンピュータソフトウェア協会(CSAJ、会長=和田成史・オービックビジネスコンサルタント社長)は、世界ですでに活用されているSaaS(ソフトウェアのサービス化)技術を利用した参加型プラットフォームを構築し、SaaS普及に向けた「実証実験」を開始する。Webサービス化していないアプリケーションでも参画でき、販売するまでの「ビジネスモデル」を構築。今後半年間、会員ISVなどから実験用ソフトを、「売り手」となるSIerや税理士なども募り、技術面や販売面などの問題点を洗い出す。国内のIT産業界に則したSaaS提供方法を具体的に示す。
既存アプリも利用可能な基盤で
販売面を含めた検証へ

今回の「SaaSビジネスモデル実証実験プラン」は、CSAJが今年4月に設立した「SaaS研究会」(主査=木下仁・アールワークス社長)が中心に企画し、運営・推進する。プラットフォームの核となる製品は、きっとエイエスピー(きっとASP)が海外から調達して提供しているSaaS提供用の製品などで構成。SaaS用サービスコンポーネント「PivotPath」やサーバーベースのシステムを提供するコンポーネント「GO─Global」、サーバー側からアプリケーションを配信し利用するツール「AppStream」などを組み合わせ、Webサービス化されていないソフトでもSaaS型の提供ができる環境を構築する。
実証実験で利用するインターネットデータセンター(IDC)は、木下主査のアールワークスなど数社が提供。同プラットフォーム上で提供するソフトの情報を集約し「売り手」に販売を促す「SaaSポータル」をASP用ポータルをもつITエージェントが構築する。
実証実験を企画したきっとASPの松田利夫社長は「日本のソフトはパッケージが中心。既存の仕組みを利用すれば、比較的簡単にSaaS提供できることを証明する」と、SaaS型のソフト提供を目論むが、APIやアダプタ開発に悩むISVでも、簡単に取り組める形を示し、日本型SaaSの普及モデルを考えるきっかけをつくることを目指すという。
実証実験には、すでに中堅中小企業に業務アプリケーションを提供する大手ISVが参加に名乗りを上げている。ただ、これらISVは、パッケージ型のソフトを販売するチャネルを膨大に抱え、SaaS提供に向け既存のチャネル網をどう再編するかに悩む。このため、実証実験では、「SaaSポータル」を開設し、SIerやサポート関連ベンダー、「士業」と呼ばれる税理士や公認会計士、中小企業診断士、ITコーディネータに製品のスペックなどを示し、具体的にエンドユーザーへ提供するスキームづくりも検証する。このほか、実験を通じて、データ統合・連携や契約の仕方、運用上の問題点など、技術的な課題を列挙し、解決策を探る。
今回のモデルは、例えばIDCを保有するプロバイダやISVのソフトをマルチベンダーで販売するSIerなどにも適用が可能。実証実験の進捗次第では、「SaaS提供プロバイダ」と呼べるプレイヤーが新たに登場し、SaaS環境を利用した新たなソフト流通モデルが普及することが予想される。