その他
普及進まぬ「IPv6」 IPv4アドレス枯渇とは裏腹な実情
2007/09/24 14:53
週刊BCN 2007年09月24日vol.1204掲載
以前から騒がれているIPv6。普及具合は現段階でどの程度なのだろうか。関連団体の調べによると、普及率は1%にも達していない状況ということが明らかになった。IPv4アドレスが枯渇するといわれているにもかかわらずだ。関連団体はv4の枯渇状況の提示とv6を促すための活動に積極的な姿勢をみせる。一方、SIerやNIerなどベンダーにとってはv4からv6に変換可能なトランスレータの発売や、v6対応機器へのリプレース提案など、こうした状況が大きなビジネスチャンスに変貌する可能性が高い。(佐相彰彦●取材/文)
チャンスとみるベンダーも
■普及率は1%に届かず 「必要ない」が原因
IPv6の国内普及率はかなり低いようだ。インテック・ネットコアの荒野高志社長は、「なかでも、法人市場では普及していない」と指摘する。荒野社長は、日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)でIP分野担当理事を務めるなどIPv6のオーソリティのひとりとして有名だ。荒野社長によれば、「co.jpで割り当てられているIPv6アドレスは、現段階で0.3-0.4%程度」という。
なぜ低いのか。荒野社長は、「IPv6ならではのキラーアプリケーションが見いだせていない一方で、IPv4の技術が優れているため」とみている。インターネットユーザーに割り当てられているIPアドレスのほとんどがIPv4であるため、ベンダーにとってはIPv4対応のウェブサービスを提供することが当たり前になっている。なかには、強引にIPv4で開発するものもある。例をあげれば、IP電話サービス「スカイプ」だ。同サービスは、「NAT(IPアドレスを複数のコンピュータで共有する技術)」で実現しているが、本来ならばIPv6に適している。しかし、取得しているユーザーが少ないIPアドレス向けにサービスを提供してもビジネスにならない。「IPv4対応にせざるを得ない」のが実情というわけだ。
また、キラーアプリケーションが登場しないということはシステムを導入するユーザー企業にとっても「わざわざIPv6に変える必要はない」という意識を強めさせる。こうした状況であることから、なかなか法人市場ではIPv6が普及しないということだ。
関連団体はIPv6を普及させるため、これまでキラーアプリケーションの登場を訴えてきたという。しかし、IPv6が普及しなければ対応アプリケーションを開発しないという構造になるのが当然だ。そのため、「IPv6をインフラの観点から普及させることに切り替えている」という。そもそも、IPv6を普及させなけければならない理由は何なのか。それは、「IPv4アドレスの新規割り当てが2010年にはなくなる可能性が高い」からだ。こうした状況は、新規にアドレスを取得できないため、新しいウェブサービスを提供することが難しくなるということだ。地方やグローバルに拠点を広げた際、IPv4のアドレスを取得できないという問題が発生する。「IPv4に依存したネットワーク構成にしてしまうと、システムのユーザー企業にとってはIPv6取得時に抜本的なシステム変更を強いられるようになる」。また、IPv4依存のネットワークではNAT多用による管理コストの増大というリスクも出てくる。
■事業拡大の可能性あり 新規参入のケースも
今後3年以内にIPv4のアドレスが枯渇するという点で、IPv6関連がビジネス拡大の領域と捉え、新規参入したベンダーも出てきている。
組み込みソフト開発を主力事業とするサイレックス・テクノロジーでは、従来のネットワークをIPv6環境で利用できる機器「IPv6-IPv4Converter」を市場投入。同製品は、プロトコル変換技術でIPv6のネットワークで利用可能なゲートウェイ機能を搭載。「IPv4対応の機器しか導入していないユーザー企業にとってはIPv6が主流になった際に、新しい機器を導入するコストが発生する。それを解決するのが今回の製品」(広報関係者)としている。しかも、現段階で導入すれば「管理や運営がスムーズに行えるようになる」とアピール。売上高については、「今年度(07年12月期)は大きな成長を期待してはいない。しかし、3年後にはビジネスの柱になるだけのポテンシャルはある」という。
IPv6がインフラとして形成されるプロセスとして、荒野社長は「NTTのブロードバンドサービス『フレッツ光』では、IPv6アドレスを配布するケースが増えてきた」としている。また、マイクロソフトのOS「Vista」でも、一部の機能ではIPv6でなければ動かないものも搭載されている。
IPv6が主流になっても、IPv4が動かなくなることはないため、「急激に普及するかどうかは未知数。時間がかかるかもしれない」(荒野社長)。しかし、「90年代前半まで、『インターネットはパソコン通信と同じじゃないか』という見方が強かったが、今は違う。“イノベーションイネーブラー”は、いつのまにか主流になっているというケースが多い」のも事実。それが、2010年にIPv4が枯渇する可能性が高いといわれる要因。となれば、ベンダーにとってはIPv6を視野に入れたビジネスで拡大できるチャンスが訪れている状況ともとれる。
自社で提供する製品・サービスのなかにIPv6対応を選択肢の1つとして入れることも顧客企業が増える要因になるかもしれない。
以前から騒がれているIPv6。普及具合は現段階でどの程度なのだろうか。関連団体の調べによると、普及率は1%にも達していない状況ということが明らかになった。IPv4アドレスが枯渇するといわれているにもかかわらずだ。関連団体はv4の枯渇状況の提示とv6を促すための活動に積極的な姿勢をみせる。一方、SIerやNIerなどベンダーにとってはv4からv6に変換可能なトランスレータの発売や、v6対応機器へのリプレース提案など、こうした状況が大きなビジネスチャンスに変貌する可能性が高い。(佐相彰彦●取材/文)
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