SMB(中堅・中小企業)に対するブレード型サーバーの売り込みが本格化してきた。メーカー各社は新製品の市場投入や戦略強化を相次ぎ実施しており、新規顧客の開拓に力を入れる。各社とも市場シェアの拡大に躍起で、国内ブレードサーバー市場のシェア争いは、ますます“団子状態”の様相を呈しそうだ。
シェア争いは“団子状態”の様相

今年に入ってから“中堅向け”と銘打ったブレードサーバーの新製品を他社に先駆けて発売したのはNECである。100ボルト電源対応の小型タイプ収納ユニット「SIGMABLADE-M100V電源セットモデル」を7月に出荷した。
山科俊治・クライアント・サーバ販売推進本部長は、「これまで200ボルト電源のみで実現していたブレード導入の敷居を下げた」としている。さらに、価格キャンペーンを7月26日から12月28日まで実施。「競合と同程度の価格に設定した」という。販売体制では、10月からブレード特化のチームを組織化。こうした強化策で、今年度(2008年3月期)のブレードサーバーは前年度比20%以上の増加を狙う。
「これまでのブレードビジネスに変革をもたらす」。そう言い切るのは、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の上原宏・エンタープライズストレージ・サーバ統括本部インダストリースタンダードサーバ製品本部長だ。これは、9月に発売した中小規模システム向け「HP BladeSystem c3000エンクロージャ」で、タワー型からの置き換えを促すため。ブレードサーバーの置き換えは、ラックマウント型からのケースが多かった。「タワー型を導入しているSMBも対象にすることで、さらに需要が広がる」と予測する。同社は、サーバー1台とエンクロージャで50万円というキャンペーンを打ち出し、「垂直的に立ち上げる」と自信をみせる。
販売体制については、販売代理店への支援制度を刷新したことで13社から23社に増加。「一気に拡販する体制が整った」としている。
日本IBMは、「IBM BladeCenter S」を12月から出荷する。販売支援策として、リセラー向け教育を9月から開始しており、「(PCサーバーの販売代理店である)既存のパートナーが拡販する体制も整える」(ブランド・マーケティング&SMB担当ディレクターのジェイソン・ダイズ氏)ことで、中小規模向け事業の拡大を図る。
昨年度に発売した「BS320」でSMB向け事業拡大の体制が整いつつある日立製作所では、同製品の販売が順調なことから「今年度(08年3月期)上期に前年同期の2倍以上を達成した」(宇賀神敦・統合プラットフォーム販売本部長)と意気揚々だ。
今年11月には、SAS(シリアルアタッチドSCSI)対応のストレージとネットワークを市場投入する計画で「SMB向け仮想化ビジネスも本格化させる」としている。下期のブレードビジネスに関しては、「前年同期の1.5倍に引き上げる」考えだ。
他社と比べてブレードビジネスに消極的だった富士通は、8月に社長直轄の専門組織「ブレードサーバビジネスプロジェクト」を立ち上げた。
このプロジェクトの田中豊久シニアマネージャーは、「社内でブレードビジネスに力を入れていく機運が高まっている」と強調する。販売面での強化策については、代理店への支援策として優良20社を中心に教育プログラムの拡充や、検証センター設置によるサービスの創出、工場出荷時にシステムをセットアップするサービスなどを提供。価格面では、キャンペーンを積極的に打ち出す計画で「これまでも期間を定めて実施していたが、インパクトが弱かった。タイミングを見計らって定期的に実施する」方針だ。製品面では、システム運用管理の自動化機能を前面に押し出すほか、他社が先行する100ボルト電源に「今年度中には対応する」予定。これにより、前年度比で2倍以上の売り上げを維持する。
デルでは、現段階でブレードよりもラックマウントの販売に力を入れているが、「仮想化ビジネスの拡大に向けてブレードサーバーを近く市場に投入する」(桜田仁隆・エンタープライズ・マーケティング本部長)ことを明らかにしている。
IDC Japanによれば、国内ブレードサーバー市場で07年1-6月のメーカー別台数シェアは、NEC(25.7%)がトップを獲得。次いで、日本HP(22.7%)、日本IBM(22.1%)、日立(18.1%)、富士通(8.7%)などと続く。各社とも、「確実にトップを獲得する」と鼻息が荒い。SMBでのブレード導入が進んでいるだけに、シェア争いは一段と白熱しそうだ。