その他
情報サービス産業 金融業界のIT投資に陰り
2007/12/17 14:53
週刊BCN 2007年12月17日vol.1216掲載
情報サービス産業の成長を支えてきた金融業界の投資に陰りがみえてきた。メガバンクの基幹業務システムの統合案件が2008年で一段落するためだ。金融業界向けの売り上げ比率が高い大手SIerでは、すでに“ポスト金融特需”を見据えた動きも出始めている。統合案件の終息によって一時的に受注環境が悪化。競争が激しくなり受注単価の下落や不利な条件で受注したことによるプロジェクトの不採算化など、思わぬところで影響が広がる可能性もある。金融への過度の依存を軽減するなど、ビジネスモデルの改革が急務だ。
“2009年問題”を乗り越えろ
07年までの情報サービス産業はメガバンクの統合プロジェクトなど大型案件に支えられて堅調に伸びてきた。しかし、08年は大型プロジェクトが相次いで一段落することから、09年に向けて情報サービス産業の伸びが鈍ると予測するSIerが多い。プロジェクトに端境期が生じるとSEの稼働率が下がり、収益を圧迫する。
メガバンクのシステム統合案件を直接的に手がける大手SIerは、「08年は20-30億円の減収を見込む」と打ち明ける。ほかにも統合案件絡みで億単位の減収を見込むSIerがあるとみられており、業界全体に与えるインパクトは小さくない。仕事が減ることで、受注単価の下落など、「情報サービス産業全体の景気に思わぬ悪影響を及ぼす引き金になる」(SIer幹部)といった危険性も指摘されている。
金融向けの売り上げ比率が大きい大手SIerからは、「仕事が減れば外注先の選別で乗り越えざる得ない」という声が聞こえてくる。野村総合研究所の藤沼彰久社長は、「景気が失速すれば協力会社への発注を見直すこともあり得る」と、ポスト金融特需を見据えた体制づくりの検討に入る。
“2009年問題”を乗り越えろ影響広がるとの指摘も
一般産業分野でリスク分散
将来的にパートナーシップを組んでメリットが得られる協力会社の選別が進む一方、選別から漏れたSIerは受注単価の引き下げで生き残りを図ろうとする動きが加速。価格競争の激化で不採算プロジェクトが再び増加する恐れもある。大手SIerのTISが不採算案件に業績の足を引っ張られているのは、受注環境が今よりよくなかった「4年前に受注した金融系の大型プロジェクトが主な原因」と岡本晋社長は語る。SIer側に不利な契約が不採算を長引かせた。
金融業に強い中堅SIerのアルゴ21の太田清史社長は「09年以降は覚悟しなければならない」と胸の内を明かす。そのうえでキヤノンシステムソリューションズと来年4月をめどに経営統合を決定。これが中長期の「成長に向けた突破口になる」と判断した。受注環境の変化は業界再編を促し、大手集約がより進むことも考えられる。
では、IT業界における“2009年問題”を乗り越えるためにはどうしたらいいのか。1つは金融業以外の一般産業分野を伸ばすことだ。幸いなことに郵政民営化で誕生した巨大金融機関のゆうちょ銀行やかんぽ生命保険のIT投資が08年以降に本格化。メガバンクも情報系システムの投資を拡大させるとの見方がある。「痩せても枯れても金融」(三菱総研DCSの後藤明夫社長)であるのも事実。新しく出てくる案件を手堅くこなしつつ、オリジナルの業務アプリケーションやサービスのシェア拡大による収益基盤を強化し、一般産業分野を伸ばすなどの対策を進めていく必要がある。
金融業界においても、既存の基幹業務システムの再利用や共同利用型への移行が進んでいる。情報サービス産業全体が潤うようなスクラッチ開発による「大型プロジェクトは減る」(TDCソフトウェアエンジニアリングの藤井吉文社長)とみられ、金融向けのシステム構築ビジネスは構造的な転換期にある。これまで一本調子で伸びてきた組み込みソフトにおいても携帯電話などの一部分野で失速感が強い。08年は中長期の戦略を練り直す必要に迫られそうだ。
情報サービス産業の成長を支えてきた金融業界の投資に陰りがみえてきた。メガバンクの基幹業務システムの統合案件が2008年で一段落するためだ。金融業界向けの売り上げ比率が高い大手SIerでは、すでに“ポスト金融特需”を見据えた動きも出始めている。統合案件の終息によって一時的に受注環境が悪化。競争が激しくなり受注単価の下落や不利な条件で受注したことによるプロジェクトの不採算化など、思わぬところで影響が広がる可能性もある。金融への過度の依存を軽減するなど、ビジネスモデルの改革が急務だ。
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