国内ICT(情報通信技術)・流通業界における2008年の空模様は、「曇りのち晴れ」と、おおむね「好天」に恵まれそうだ。週刊BCNが業界78社の経営トップに08年の景気動向を天気にたとえて聞き取り調査し、全体の天気図をこう判断した。IT需要を下支えしてきた金融業界の投資先行きが懸念されるなど、一部に不透明感が漂う。しかし、「システム統合」や「情報と通信の融合」などに関連するニーズが増え、順調にIT需要が喚起されそうである。
一部で「雨」も、全体的に「好天」
ソフトウェア受託開発を主体とする
「開発系SIer」業界は07年、景気回復の後押しを受け、「ソフト開発需要に供給が追いつかない」ほど、活発な受注環境にあった。08年の前半頃までは、この「晴天」が続く。だが、後半以降は、金融業界の基幹業務システムを統合する案件が同年で一段落する「2009年問題」や、大手製造業がSIerを選別する兆候がみられ、急転して「雨」という荒れ模様になりそうである。
「販売系SIer」業界は、07年に引き続き雲行きが怪しい。サーバーの台数は伸びているが単価下落の影響で販売額が減少。基幹系サーバーは、競争も激化し安定的に案件を増やせそうにない。ブレードサーバーは、利用用途や購入顧客が限定的で、まだ母数が小さい。全体としては、依然「曇り」の天気が続く。しかし、「SaaS(Software as a Service)」といった新技術などを取り込んだ業容変革により、「悪天候」を「好天」に導く“術”は残されている。
同じように
「ディストリビュータ」業界は、ハードの単価下落に悩まされ、利益率を高める方策がみえない。しかし、前半は、「J─SOX法」の施行でセキュリティ需要などが見込まれ、「晴れ時々曇り」となろう。
SaaSやアウトソーシングなどの風が吹き、恩恵を受けそうなのが
「ネットワーク系販社」業界。ハードウェアや業務ソフトウェアに加え、ネットワーク機器やNGN(次世代ネットワーク網)など、通信環境を含めたシステム全体の新サービス創出が求められているためだ。これに伴って、機器販売やネットワークインテグレーション(NI)が伸び、同業界は「晴れ」に恵まれるだろう。
07年には「内部統制」強化の動きが“追い風”になると予測していた
「業務ソフトウェア」業界は、ERP(統合基幹業務システム)など基幹システムが、期待したほど伸びなかった。この「曇り」の天気は08年に入ってもしばらく続く。それでも、4月以降の「J─SOX法」適用を見据えた「見込み案件」は出てきた。これにマイクロソフトの次世代プラットフォーム出荷開始などが後押しし、後半以降「晴れ」となりそうだ。
「J─SOX法」適用に向け、需要増を最も期待しているのが
「セキュリティ」業界。コンプライアンス(法令遵守)などを重視する傾向が強まる大企業向け、中堅・中小企業向けもマイクロソフトの新サーバーOSに搭載される「検疫システム」など、新たな商材で、案件拡大が期待できるので「晴れ」となる。
「保守サービス」業界は、メインフレームをオープン化する流れが終息。保守サービス単価の下落は底を打ちそうで、厚い雲が去って薄雲に覆われた「曇り」に転じそう。「プリンタ」業界は、カラー機の伸び率が緩やかでモノクロ機の大型リプレースも一巡。「曇り」のまま推移すると見込まれる。
主要8業界の2008年の業界天気図
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