情報システムの修理・メンテナンスを手がける保守サービス会社の天気は「曇り」だ。以前から続くハード保守事業の低迷が08年も継続。業績拡大の足かせになり、はっきりしない空模様を作り出す。ただ、07年よりは明るい材料が多い。09年は「晴れ」へと変わる可能性を秘めており、08年が転換期になりそうだ。(木村剛士●取材/文)

ハードの保守サービス単価は、オープン化の進展による単価下落の影響を受け、ここ数年一貫して下がり続けてきた。08年も「下がるのは間違いなく、ハード保守だけでは業績拡大は難しい」と各社トップは口を揃える。07年と同様に、今年もハード保守事業は厳しい環境を強いられる。これがはっきりしない空模様の要因だ。
ただ、明るい材料も多い。各社ともにハード保守事業の提供体制の見直しと、保守以外のビジネスの拡大戦略を進めており、成果が着実に出ているからだ。
ハード保守事業体制では、拠点の統廃合や人員の最適化で、コストがかかりにくい筋肉質なサービス提供体制を築いた。07年では、富士通エフサスが東日本地域の保守サービス専門会社を設立したのが代表的な動き。富士通ビジネスシステム(FJB)との共同出資で、両社のリソースを組み合わせ、人員など重複していた部分を最適化した。それ以外のベンダーも06年以前に拠点の統廃合などで提供体制の見直しをほぼ終えており、各社とも07年までに保守サービス提供インフラの再構築が一段落した様子だ。
一方、ハード保守事業以外のビジネス拡大施策で力を注いでいたのが運用サービスだ。日立電子サービスは情報システム構築のグループ会社を05年に吸収。「2年間で運用サービス拡大の基盤を整えた」(百瀬次生社長)。富士通エフサスは、富士通のSEを約250人取り込み、SE力を強化。7月には社名を富士通エフサスに変更し、親会社との共同ビジネス体制をより鮮明にした。NECフィールディングは、常駐型運用サービスの専門会社を設立した。
遠隔地からの監視や常駐型の情報システム運用サービスはニーズが強い分野。需要が見込めるビジネス領域に各社共通して照準を合わせて、さまざまな施策を打ってきた。
保守サービスの提供体制見直しと運用サービス事業の強化は、ここ数年各社が共通して進めてきた戦略的施策。06年、07年の2年間で体制は整備できたようで、08年はいよいよ「攻め」に打って出る。ハード保守単価を補う事業モデルを確立できれば、09年は「晴れ」へと変わる可能性が高い。保守サービス会社は、08年に転換期を迎えそうだ。

各社が力を注いでいる情報システム運用サービスのニーズが強く、安定したビジネスに成長する可能性が高い。各社とも運用サービスの提供インフラの整備がひと段落しており、基盤は整っている。全国をカバーする保守サービス拠点と人員を活用し、提案活動を積極的に行えば、業績拡大につながりそうだ。
保守サービスの対象製品が増加。マルチベンダー化を推進し、親会社系列以外のハードとソフトでも保守サービスを提供できる体制を整備している。とくにソフトの保守サービス単価は、ハードに比べて高い。マルチベンダー化は、まだ拡大の余地が十分にあり、従来のハード保守事業の低迷を食い止める材料になっている。
ハードの保守サービス単価は、以前よりも下がり幅が小さくなってきたとはいえ、下げ止まっていない。拠点の統廃合や人員最適化、業務効率化などのコスト削減施策だけでは、成長は望めない。運用サービスやシステム構築などの保守サービス以外の事業モデルの確立し、結果を出すことが求められている。