セキュリティ業界は好調な需要が継続し、2008年も「晴れ」の模様だ。07年を振り返ると、成熟市場となったウイルスソフトなど単機能のソフトに関しては大きな動きはみられなかった。だが、06年の新会社法に引き続き、今年、J-SOX法(金融商品取引法)が適用されることから、コンプライアンス対策や内部統制強化が本格化し、需要が伸びると業界ではみている。(鍋島蓉子●取材/文)

近年、高い伸長ぶりをみせるセキュリティ市場。この勢いは今年も止まらないとベンダー各社はみている。「ITをもっと安全にする必要がある。この1年が、ITがさらに導入されるかどうかの試金石」(シマンテックの木村裕之社長)。
4月以降、いよいよJ-SOX法が適用される。現在は文書化テンプレートへのニーズが高いというが、先進的な企業のなかには「IT全般統制」に着手しているところもあり、ITインフラ全般のソリューションを手がけるシマンテックでは「IT全般統制を真剣に検討する企業が増えてくれば、ビジネスチャンスが広がる」とみている。
昨年は、シマンテックが情報漏えい対策製品を手がける米Vontu(ボンツ)社を、また、トレンドマイクロが米Provilla(プロヴィラ)社を買収している。また、マカフィーも暗号化ソフトを手がけるオランダのSafeboot(セーフブート)社を買収している。コンプライアンスに関連してDLP(Data Loss Prevention=情報漏えい対策)に関心が高まっている。マカフィーでは、「情報漏えい対策製品を徹底的に伸ばしていきたい」(加藤孝博社長)としている。近いうちに買収した企業の技術を生かした製品が既存製品に組み込まれるなどして、新たに提供される動きが出てくるだろう。
トレンドマイクロでは最近、サーバーでクライアントを一元管理するセキュリティソフトが中堅・中小企業で売れ始めていると実感している。また、同社ではリコー、大塚商会、ソフトバンクBBとともに提供している、ASPサービスでの実績を上げている。「専門家はいないが、コンプライアンスの対策として守るべきものは守らねば、ビジネスには入っていけない」(大三川彰彦日本代表)としている。
J-SOX法は上場企業とその関連会社が適用対象となるが、上場企業と取引する中小企業も、法に準拠して体制の整備を求められる可能性が高い。こうした需要を見込み、今年のセキュリティ業界を「晴れ」と予想している。

コンプライアンス、内部統制などで市場が盛り上がり、関連するソリューション、特に情報漏えい対策(DLP)ソリューションの伸長が期待できる。また、サービスとしては、すでにSaaSを取り入れているベンダーのほか、これから日本市場での展開を計画しているベンダーもあり、各社の動きが注目される。
従来の単一機能ソフトという分野では伸びが期待できない。さまざまなセキュリティ製品・技術を組み合わせ、単一コンソールで一元管理できる統合型のセキュリティソリューションなどを各社が提供開始している。M&Aなども活発に行われたことから、買収した製品・技術を組み込んだソリューションがお目見えしそうだ。
全体としては上り調子で、大きな懸念材料は見あたらないという。しかし製品やサービスを導入することの必然性・重要性を顧客企業に啓蒙していく必要はまだある。提供するサービスや製品が、ユーザーにその価値を見出せてもらえなければ、導入には結びつかない可能性も出てくるかもしれない。