コラボレーションを生かしてユーザー企業が収益を上げていく仕組みを作るには、ITベンダーが製品間のコラボレーション機能を高めていかなければならない。さらには、ユーザー企業向けのシステムが多くのベンダー製品を組み合わせて実現しているのであれば、互換性を検証するなどベンダー間のコラボレーションも必要となる。米IBMが開催した「Lotusphere 2008」では、こうした時代の流れに合わせた取り組みをアピールしているようにみえた。

その大きな取り組みの一つが米SAPとの共同開発だ。両社初の共同ソフトウェア製品として、IBMの「ロータス・ノーツ」とSAPの「ビジネス・スイーツ」を統合したソフトウェアを発表した。コードネーム「Atlantic」と呼ばれる開発計画では、ノーツに慣れ親しんだユーザーに対して分かりやすく新しいスタイルで、情報やデータ、業務アプリケーションを提供していくことに力を注ぐという。直観的で使い勝手のよいインタフェースの開発で、ユーザーが重要なビジネス情報にアクセスできるようになれば、より多くの情報に基づいて意思決定できる。
また、ユーザー企業にとっては、一歩踏み込んだビジネス分析と情報能力が備わる。米IBMのロータスソフトウェア総責任者であるマイク・ローディン・ゼネラルマネージャーが訴える「次世代コラボレーションの時代に突入している。こうした流れに対して最適な環境を創出する」ことを実現するというわけだ。「Atlantic」に盛り込まれる機能については、SAPのワークフローやレポーティング、分析などをノーツクライアント内で利用できるようにする予定だ。初回版の出荷は2008年度第4四半期を計画している。
今回の協業は、IBMとSAPのビジネスにとって大きな意味を持つ。ワールドワイドでは、IBM製のロータスとSAP製の業務アプリケーションの両方を導入するユーザー企業が数多く存在する。米SAPのビシャール・シッカCTO(最高技術責任者)は、「今回の協業を合意したことで、当社とIBMとのパートナーシップを深めることができた。このことは、ユーザー企業を増大させる大きな原動力になるだろうと期待している。そういった点では、35年以上にわたって築き上げてきた協業関係の集大成の一つともみることができる。
なかでも、新規ユーザーの開拓市場として力を入れるのは日本だろう。日本は、業務アプリケーション分野で国産メーカーが強いとみられている。グループウェアに関しても、サイボウズなどがユーザー開拓に向けて力を注いでいる。こうしたなか、ロータスユーザーがサイボウズに乗り換えるケースもある。SAPに関しても、大企業での導入が中心で、SMB(中堅・中小企業)分野でのユーザー企業は決して多いとはいえない。そうしたなか、さまざまな顧客層にアプローチする環境を整えていくのが米IBMの最大の狙いだ。(佐相彰彦●取材/文)