NEC(矢野薫社長)は、新たに「NGN(次世代ネットワーク網)ミドルウェアパートナープログラム」を開始した。NGN対応のソフトウェア開発を加速するため、世界のミドルウェアベンダーと協力してSIP(通信制御プロトコル)ミドルウェアの共通APIを策定。この共通APIは、来年度(2009年3月期)の第1四半期内に「世界標準」のドラフト版として世界に提示する。 また、NGN向け「サービスプラットフォーム(基盤)」の精度アップや「接続性検証環境」などを提供した技術研究を本格化。第2四半期からは、同基盤上でソフトを開発するISV(独立系ソフトベンダー)やSIer、ネットワークベンダーなどのパートナーを募り、NGN時代の企業向けサービス提供で世界の主導権を握る。
今夏にNGNパートナー制度新設
同プログラムではまず、SIPミドルウェアをもつ世界的なWebアプリケーションサーバーベンダーの日本オラクルやマイクロソフトなど10社と共同で、SIPミドルウェアの共通API(開発名Kairos=カイロス)を策定する。NECは3月25日、共通APIの「叩き台」を各ベンダーに提示。第1四半期内には「世界標準」としてまとめる。
今回策定する共通APIを利用すれば、SIPの通信手段や技術の詳細を知らないITベンダーでも、NGN環境向けアプリケーションの開発が容易にできることになる。NECは、NTTが3月末に国内でNGNの商用提供を始めたことから、「NGNの取り組みは世界でも日本が先行する。当社で培ったノウハウと技術基盤を活用して、世界のIT業界で共通的に利用できるAPIに仕上げる」(広崎膨太郎・取締役執行役員専務=4月1日付で代表取締役執行役員副社長)として、先導的な役割を果たすことを目指す。
同社は「NGN事業」を成長の柱として位置づけ、世界のITベンダーと協業の動きを活発化させている。また、他社に先駆けてSIPサーバー「CX6820」やネットワーク制御基盤「NC9000シリーズ」など、ハードウェア製品を揃えている。ミドル層では自社Webアプリケーションサーバー「WebOTX」のSIP対応版を提供し、ISVなどとNGN対応の企業向けシステムの開発を始めている。
同プログラムと並行して、すでに販売を開始している「サービスプラットフォーム」を既存のソフトウェアパートナーなどとブラッシュアップする。企業がネットワークを活用し他の企業や個人、グループ企業などへサービスを提供できる基盤だが、「接続性検証環境」などを利用してSIP対応の「WebOTX」と組み合わせた企業向けシステムを順次開発していく。これに、「世界標準」となりそうなSIPミドルウェアの共通APIが固まれば、NGN対応の企業向けシステムで世界の主導権を握ることができそうだ。
NECの社内には4月1日付で、NGNミドルウェアの推進組織として横断的な専属部署「次世代ネットワークサービス推進センター」を新設する。第2四半期以降には、NGN対応のこれら基盤やミドルウェアなどを利用した企業システムを開発する新たなパートナーとして国内のISVやSIer、ネットワーク関連のメーカーやネットワークインテグレータ(NIer)などを募り、新パートナー制度を開始する。また、海外のITベンダー向けのパートナープログラムも計画している。
広崎専務は、「企業向けNGNは、まず中堅大企業向けに普及するだろう。例えば、受託ソフト開発ベンダーでも当社のNGN環境を利用して、システムをサービス提供することができる」とアピールする。
「NGN事業」の売上高は、昨年度約2000億円に達する見通し。NECは、NGN対応の企業システム構築で中核的な地位を確立するため、ハードとソフトの両面で製品開発・販売体制を固め、中期的に現状の2倍の4000億円に引き上げることを目指す。