リースの新会計基準が4月から適用されることとなった。会計のグローバル標準への対応などを理由にファイナンスリースがオンバランス化(貸借対照表に計上)しなければならなくなり、リースの需要そのものが冷え込むのではという懸念も出ている。一方で、大手リース会社ではウェブサービスの機能アップデートによる既存顧客や新規顧客の取り込み、外資メーカーなどではオペレーティングリースを活用した営業戦略に力を入れる。

リース業界大手の三菱UFJリース(小幡尚孝社長)は「ポートフォリオ多様化を進めてきたことから、リース会計基準の変更に伴う需要減退の影響は限定的」(広報IR室シニアマネージャーの山西努氏)としている。だが、顧客がリース会社に期待するサービス品質は高まっており、それにどう応えていくかが重要だとも話す。「想定される顧客ニーズや負荷をヒアリングしたうえで、リース契約ポータルサイト『e-leasing Direct』をバージョンアップし、顧客が必要とする会計情報を無償提供している」(山西氏)。
同社はオペレーティングリースにも注力する。利用期間が柔軟に設定でき、ファイナンスリースよりも安く利用できるうえ、中途解約も可能であるため、顧客のニーズも高まっているからだ。ただ、このリース方式は残価設定にノウハウが必要で、一部のリース会社しか提供できない。同社は差別化の重点戦略分野としてオペレーティングリースの取り扱い機種を増やしていく。
ITメーカー系リース会社のNECリース(加藤奉之社長)では「リースの新会計基準の影響が出るのは必至」(高桑信雄執行役員営業推進部長)とみている。だが、特に新会計基準が適用されるからオペレーティングリースを提供しようというわけではない。同社は「メーカー目線に立ったファイナンスプログラムをいかに提供し、メーカーの営業面に貢献できるかどうかが重要」(高桑部長)だとしている。オペレーションリースにより機器の入れ替えサイクルを短縮することでメーカーの営業を支援し、リースの取扱高の増加につなげたい考えだ。国内メーカーはリースビジネスを意識していないことが多い。「国内メーカーは売り切りで儲けるビジネスモデルが多い。一方で欧米のメーカーでは独自にファイナンスプログラムを持っていて、顧客の囲い込みに役立てている」という。
NECリースの場合、オペレーティングリースで引き取った中古物件に関しては、オーストラリアの大手金融機関マッコーリーグループの日本法人マッコーリーキャピタルファイナンスジャパンと合弁することで需要をつかもうとしている。中古IT関連機器の販売やサービスを手がける会社を合弁で設立し、海外のリユース需要を取り込みたい考えだ。
外資系ストレージメーカーのEMCジャパン(諸星俊男社長)のグローバル・ファイナンシャルサービス部では多様なファイナンスプログラムを提供している。「EMCでは、オンデマンド(従量制課金)等の柔軟なファイナンスプログラムを推進し、顧客に経営の柔軟性を提供することに重点を置いている」(小川哲也・グローバル・ファイナンシャル・サービス部部長)という。新会計基準については1年前からカタログに変更点の説明や、セミナーも開催してきた。IT設備はリプレース時期が短くなってきていて、法定耐用年数に基づいたリースの契約期間では、システムが古くなる可能性もある。フレキシブルなメニューを用意することで、顧客企業の経営の柔軟性を支援することにもなる。「例えば、事業を立ち上げたばかりの頃は売り上げが立たないことも多い。徐々に業績が伸びてくる時期に合わせて支払うことも可能」(小川部長)という。同社はグループ企業のセキュリティ会社・RSAセキュリティやサーバー仮想化ソフトを手がけるヴイエムウェアとともにシナジーを図るべく、両社の製品のファイナンスプログラムについてもサポートしている。
短期での賃貸をビジネスとするレンタル業の動きはどうか。オリックス・レンテック(馬着民雄社長)では、「以前から、リースをグローバルスタンダードの会計基準に統一していこうという動きはあった」と語る。同社は新会計基準の適用に合わせてとりたてて新しい施策を打つわけではないが、「レンタルもオペレーティングリースに含まれる。ファイナンスリースの新会計基準に注目が集まるなか、当社は取り扱い商品の拡充など、顧客ニーズを汲み取りながらレンタル市場の拡大を図りたい」(社長室の加藤和彦アシスタントマネジャー)としている。
【KEYWORD】リースの種類と新会計基準
ファイナンス・リース取引とは、リース期間の中途解約ができないことなどを条件とする方式。今回の会計基準変更では、所有権移転外ファイナンスリースが、適用対象になり、売買契約として貸借対照表に計上しなければならないこととなった。だが、300万円以下の少額取引であるなど、一定の条件を満たす場合は例外措置として、現行の処理が可能。
オペレーティングリースは会計上では、ファイナンスリース以外の取引を指し、レンタルも含まれる。主に中古市場などの2次マーケットが見込める物件に対して、リース会社が期間終了後の物件の残存価値を評価し、その価値を基にしてリース料を設定する。柔軟なリース期間の設定が可能で、借り手側が月額リース料を抑えることができる賃貸借の色合いが強い取引だ。