OKIデータ(杉本晴重・社長CEO)はここ数年、中国市場で地道にチャネル開拓をしてきた。しかし、2007年度(08年3月期)は有力大手ディストリビュータを獲得できず、中国市場で初の減収減益になる憂き目を味わった。一転して、今期は大幅な業績アップを見込む。その理由は、地方税徴収向けで多い時には1日あたり100台の勢いで売れる有力ルートを開拓したことにある。
領収書システムの指定機器に
中国の制度改正に切り込み“特需”

中国にはこれまで、日本のように食事をした際に代金を受領したことを証明するために発行される明確な領収書が存在しなかった。あるのは1、5、10元単位の発票(パーピョ)と呼ばれる金額に応じて発行するレシート。パーピョは全国共通のモノだが、偽造が多く出回り、地方税徴収に問題が生じていた。
中国政府は、料理店などの新規開店が増える北京オリンピックに向けて、この悪弊を打破するために領収書発行システムを北京市を皮切りに導入。領収書発行機器としては、POSレジスターとドットインパクトプリンタ(SIDM)があるが、後者でOKIデータのSIDM「ML5100F」などが指定機器として採用された。
北京市で領収書発行の売上入力機器を扱う地方税指定業者「服務省」には、システムを購入したいというお客がひっきりなしに訪れ、従業員が応対に追われている。この指定業者を開拓したのは同社のプリンタ販売子会社である日沖商業(北京)有限公司(遠藤治彦・董事長=会長)だ。

この事務所では、POSレジとSIDMの機器販売やアフターサービス、新税制説明、相談などの業務を約140人の従業員が行っている。販売担当の女性は「機器のICカードに領収書発行の記録を残すことが義務化され、税務署とのデータ連携も行われるので、古いレジを使っている事業者はすべて機器を入れ替えることを義務づけられている。北京オリンピックを前にして、機器販売は2倍に成長している」と説明する。この事務所だけでSIDMを多い時に1日100台以上販売するそうだ。
こうした領収書発行システムの機器を販売する指定業者は、北京市内に6か所ある。遠藤会長によれば「このうち5か所を押さえることができた。黙っていてもSIDMの販売台数は伸びる」までにチャネル開拓が成功したと、鼻を高くする。今後は北京だけでなく、例えば「上海万博」などに向けて上海市にも同制度が適用されるため、「市場はまだまだ伸びる」と気を引き締める。
OKIデータのSIDMが領収書発行の指定機器になったことで、家電量販店での販売も順調だ。例えば北京郊外に位置する電気メーカーの販売店舗の集積地「電脳城」には、OKIデータのプリンタを扱う店舗がある。
中国最大のデジタルチャイナなどを流通卸先とするディーラーの店舗でOKIデータとエプソン製品を販売する責任者は「(領収書機器の指定プリンタになったことを)インターネットで情報を得た人がOKIデータの製品を見に1日に30人程度も訪れ、3台程度が売れる」と、大幅に販売台数が伸びたと喜ぶ。1つの「特定市場」を開拓したことで、大手ディストリビュータの日沖商業に対する見方も良い方向へ変化したようだ。(谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文)