5月14日‐16日に開催された情報セキュリティEXPOに合わせて、カスペルスキーラブス社（ロシア）のユージン・カスペルスキー最高経営責任者（CEO）兼アンチウイルス研究所所長が来日した。同氏と日本法人の川合林太郎社長に市場戦略について聞いた。同社は昨年6月から国内の法人向け市場に本腰を入れ始め、5年以内に市場でのナンバー3になることに意欲を見せる。

　同社は昨年6月、企業向け統合型セキュリティ製品「Kaspersky Open Space Security（カスペルスキー オープンスペース セキュリティ）」を発売した。「この製品を発売した時点からパートナーも本格的に販売に力を入れ始め、シェアも伸びてきている」と川合社長は感触を語る。同製品では、従来のライセンス体系を一新した。ハードウェアごとに1ライセンスだったものをユーザーが利用しやすいライセンス体系を整えた。「販売側にとっても売りやすい武器となるようなものを提供することができた」（川合社長）と自信のほどを示す。

　現在日本法人は、アンチウイルスエンジンを供給するOEM、法人向けライセンス販売、コンシューマ向けパッケージソフトの3事業を手がけている。売上比率はコンシューマが5割弱、OEMが3割強、1割が法人向けとなっている。また、カスペルスキーラブスのグローバルでのOEM、コンシューマ、法人向けライセンス事業の売上比率を見ると、「ロシア本社はコンシューマ50％、法人50％でOEMはほとんどない状況だ。ドイツはコンシューマが50－60％弱、40％ほどがエンタープライズ、残り10％がOEM。米国は競合セキュリティソフトが多いため、ほとんどOEMだ。コンシューマ10％未満、法人向けにいたっては1ケタ台」（カスペルスキーCEO）という。

　国内のセキュリティ市場では後発に当たるが、カスペルスキーCEOは「日本だけではなく、ワールドワイドでも常に後発だった」と、意に介さない様子だ。「本社のあるロシアでも、1997年当時は他社が80％のシェアを占めていた。現在ではカスペルスキーが50％になっている。欧州でも今はドイツ、スペインで1番手、フランスで2番手ぐらいのシェアを獲得している」と力強く語る。日本でもシェアを伸ばしたいと意欲を燃やしている。シェア拡大のためには、製品の性能と品質に加え「OEMの実績や信頼、販社にとって売りやすいビジネスモデルを確立していくことが重要」との考えだ。同社は5年以内に法人向け市場のナンバー3に入ることを目標としている。

　カスペルスキーCEOは「日本市場には非常に魅力を感じているし、力を入れようと考えている。日本のビジネスがうまくいかないからといって、すぐに撤退はしない。地道な努力を積み重ねていく。日本のユーザー、およびユーザーに販売をしている代理店が安心して使用、販売できる体制を整えていきたい」と語った。