その他
広がりみせるか IT業界の「成果報酬型契約」
2008/06/23 14:53
週刊BCN 2008年06月23日vol.1240掲載
ITサービスで成果報酬型へのシフトを促進する動きが顕著になってきた。経済産業省は「人月ベース契約」からの脱却を目指し、「パフォーマンスベース契約に関する研究」の報告書を今春公表。一方で、ITベンダーからは、BPOやASP・SaaS、情報システム運用など多方面で、成果報酬型契約でビジネス展開するケースが増えてきた。情報システムを開発して顧客先に納めるビジネスではまだ先かもしれないが、ITサービスの分野では成果報酬型契約が徐々に浸透、軽視できない存在になりつつある。(木村剛士●取材/文)
経産省が調査・研究加速
■人月単価方式から脱却 ユーザーの成果を軸に
経済産業省は今春、「情報システムのパフォーマンスベース契約に関する研究」の報告書をまとめ公表した。狙いは、人月単価契約からの脱却──。情報システム開発に費やした人数と月数に応じて、対価をユーザー企業がITベンダーに支払う仕組み(人月単価)から、システムやサービスの「パフォーマンス」に応じてユーザー企業が対価を支払う仕組みへのシフトを促進するためだ。つまり、システムにいくら人と年月がかかったかではなく、ITを利用することで、ユーザー企業がどの程度の成果を見込めるかで価格を設定、契約する考え方だ。
日本のIT産業では、システム開発・構築の分野では従来から人月単価が一般的で、今もその状況に大幅な変化はない。しかし、人月単価ベースでは、ITベンダーがユーザー企業にIT投資対効果を示しにくいなどの問題がある。結果的にユーザー企業がIT業界への不信感を募らせ、ITビジネス活性化の足を引っ張るのを経産省は危惧している。そのため、約2年前からパフォーマンスベース契約を促すための調査・研究を進めていたのだ。
今回はその第一弾の位置づけで、同省では今後、事例の収集・検証を引き続き進め、将来的にはガイドラインの策定などに結び付ける計画。成果報酬型へのシフトをさらに加速させるつもりだ。
■必要性は感じるものの… 成果報酬型の実現はまだ先
今回の報告書は、問題提起や現状分析が中心で、パフォーマンスベース契約へのシフトを抜本的に促すまでの内容ではない。業界関係者からは「人月単価からの脱却は確かに必要だが、まだ先の話」との声が大半を占める。必要性は感じながらも中長期的に取り組む問題で、直近の実ビジネスには関係ないともとれるコメントが多い。
ただ、すでにこの成果報酬契約に基づくサービスを提供している複数のITベンダーが登場している。この報告書でも、成果報酬型契約のサービスを先進事例と捉え、8件を紹介している。
例えば、Webシステム開発のベンチャー企業であるキールネットワークスでは、ソフトを含めたSNSサーバーをユーザー企業にまず無償提供し、ユーザー企業の売上高をともに一定の対価を徴収する契約で、サービス展開している。
また、ASPサービス提供などのシルバーエッグ・テクノロジーでは、ECサイトなどで活用するリコメンド(推奨)ソフトをASP方式で提供。料金は同ソフトで推薦した商品売り上げの5-10%を徴収する形式に設定。初期費用を一切とらない。このほか、NECネクサソリューションズが既存パッケージをASP・SaaS化し、料金は顧客の業績変動に合わせて上下する仕組みでビジネス展開している。
ITを「所有」することから「利用」する考えが浸透し、ITのサービス化が進めば、過去のビジネスモデルや契約形態が受け入れられなくなる可能性は高い。「まだまだ先の話」ではあるかもしれないが、成果報酬型という新形態への準備を進める必要はありそうだ。
ITサービスで成果報酬型へのシフトを促進する動きが顕著になってきた。経済産業省は「人月ベース契約」からの脱却を目指し、「パフォーマンスベース契約に関する研究」の報告書を今春公表。一方で、ITベンダーからは、BPOやASP・SaaS、情報システム運用など多方面で、成果報酬型契約でビジネス展開するケースが増えてきた。情報システムを開発して顧客先に納めるビジネスではまだ先かもしれないが、ITサービスの分野では成果報酬型契約が徐々に浸透、軽視できない存在になりつつある。(木村剛士●取材/文)
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