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NECとウイングアーク 共同開発ソフトを生み出す 大が小の“勢い”拝借
2008/07/07 21:10
週刊BCN 2008年07月07日vol.1242掲載
NEC(矢野薫社長)と帳票ソフトウェア国内最大手のウイングアークテクノロジーズ(内野弘幸社長)は、NECがウイングアークの株式の一部を取得する形で提携した。NECはウイングアークの知名度を生かし、トップベンダーに比べ浸透度が低いミドルウェアの拡販を狙う。ウイングアークは、自社帳票製品を高可用性システムなどへ適用できるほか、BI(ビジネス・インテリジェンス)製品をNECを介して拡販できる。これを機に、ウイングアークがNECに製品仕様を公開しつつ高付加価値の新製品を共同開発する。大が小の“勢い”を借りてソフト事業を伸ばそうとする稀な例として注目が集まる。(谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文)
NECがウイングアークに出資
■ウイングアーク、IPOの布石?
NECは、ウイングアーク株式の70%を保有する投資ファンド、アドバンテッジパートナーズLLPから10%相当の株式を35億円で取得した。ウイングアークが「資本施策の一環として、最も取引高の大きいNECに買ってもらうことが最も美しい」(内野社長)と依頼したことがきっかけ。内野社長は「ノーコメント」と説明を避けたが、出資比率を見直すことで株式公開(IPO)に向けた動きの“第一歩”と見られる。
両社はこの先、各社が保有する連携性の高い運用管理・情報管理領域のソフト事業を強化する。NECは「(ウイングアーク製品の)インタフェースを開示してもらうことで、よりミッションクリティカル(高可用)性の高いシステムへ当社運用管理などと合わせ提供できるようになる」(山崎正史・第一システムソフトウェア事業部グループマネージャー)と、帳票システムや運用管理製品などを組み合わせ、安定稼働に適したシステムをこれまで以上に幅広い層へ提供できると判断した。
NECには、運用管理ソフト「WebSAM」など成長著しい自社ミドルウェアがある。しかし、外資系ベンダーや富士通などの競合ミドルウェアに比べ、市場浸透度が薄く見劣りするのは否めない。このため、帳票市場トップISVの知名度を借り、技術力を共有することで、自社ミドルウェアを伸ばす方針。さらに両社で「業界標準」とも呼べる製品を生み出せれば、新市場を開拓できるとみている。
これまでNECが国内ISVに出資した例は、ベンチャー企業だけ。すでに実績を上げてトップに位置するISVに出資するのは異例のことだ。「両社連携で必ず新しい付加価値が生み出せる」(NECの山崎グループマネージャー)と、NECのソフト事業を押し上げる効力に期待する。
■海外展開できるソフト提供へ
両社は2005年3月に協業関係を構築した。NECは、ウイングアークの帳票ソフト「Super Visual Formade(SVF)」や統合プリンタ制御ソフト「Report Director Enterprise(RDE)」をOEM販売してきたほか、両社で共同開発/製品化した帳票ソフト監視システム「WebSAM RDE 監視Pack Option」を提供するなど、協調関係を強めてきた。
ウイングアークは、帳票ソフトに加えて同社で売り出し中のBIツール「Dr.Sum EA」を、NECが提供するSI(システムインテグレーション)事業で活用されることに期待を寄せる。NECは現在、某大手外資系のBI製品をメインに提供しているが、「顧客に応じて棲み分けできるので、『Dr.Sum EA』も拡販できることになった」(山崎グループマネージャー)と、システム案件に応じた提供を開始する。ウイングアークの内野社長は、「NECグループ内での当社BIの取扱高が大きくなる」と、帳票ソフトに次ぐ主力製品の拡販に“大きな援軍”を得たと喜ぶ。
NECのソフト製品の売上高は約1000億円。今年度(09年3月期)以降は、自社ソフト事業で年率10%以上の増収を計画している。山崎グループマネージャーは「国内で市場を獲得しているISVと海外に通用する製品を開発し、日本のソフト産業全体を強くしたい」と、今後も国内有力ISVへの出資や提携を検討する。
海外では、米IBMや米HP(ヒューレット・パッカード)などが有力ISVを買収し、自社ソフトの充実を図っている。NECはこうした海外勢が行う“血なまぐさい”方法とは異なるやり方で、日本的な融和を図りつつ海外展開できるソフトの提供を狙っているように見える。NECの手法は、他の国内大手メーカーに広がりそうだ。
NEC(矢野薫社長)と帳票ソフトウェア国内最大手のウイングアークテクノロジーズ(内野弘幸社長)は、NECがウイングアークの株式の一部を取得する形で提携した。NECはウイングアークの知名度を生かし、トップベンダーに比べ浸透度が低いミドルウェアの拡販を狙う。ウイングアークは、自社帳票製品を高可用性システムなどへ適用できるほか、BI(ビジネス・インテリジェンス)製品をNECを介して拡販できる。これを機に、ウイングアークがNECに製品仕様を公開しつつ高付加価値の新製品を共同開発する。大が小の“勢い”を借りてソフト事業を伸ばそうとする稀な例として注目が集まる。(谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文)
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