プリンタ会社のOKIデータ(杉本晴重・社長CEO)は、年間のCO2排出量を英国スコットランドのアセンブリ(仕向け先の仕様変更)拠点を中心に欧州全体で42%削減した。削減後に残ったCO2を吸収する「カーボンオフセット」として植林活動も実施した。同様の活動は東芝なども展開している。OKIデータのワールドワイドでの売上高が約50%を占める欧州地域は、環境対策の先進地域。こうした活動を実施することで域内にブランド認知を高めるなどの狙いがありそうだ。現在、国内や中国、タイなどに点在する生産拠点でもCO2削減活動を積極化。同社は、継続して世界で環境負荷低減を進める。(谷畑良胤・特派員)
排出分を植林で吸収
■年間1400トンのCO2削減
サハリンよりも緯度が北に位置する英国スコットランド第2の都市、エジンバラ。その郊外のカンバノールド地区に、OKIデータの欧州子会社でOKIデータUK(OUK)のアセンブリ拠点がある。現在の社屋は、「環境配慮型社屋」として2005年11月に旧社屋の西側に新設した建物。一部2階建てで建築面積は約1万8000平方メートルに及ぶ。この拠点を中心に欧州や一部アフリカ、インドをエリアにもつOUKは、各国にあるディストリビュートセンターなどの事務所や物流など22事業所で環境対策を講じて年間のCO2排出量を42%削減することに成功した。このうち、同拠点では、1400トンのCO2削減と6800万円の光熱費削減を実現している。
OKIデータはこのほど、欧州全体で環境対策を施したあとに残った4046トンのCO2排出量を吸収するため、カーボンオフセット(CO2埋め合わせ)活動の事業を展開する英CO2balance(CO2バランス)社と契約し、同量のCO2を吸収するため、英国内で植林活動を実施した。同拠点で環境対策の責任者であるアルマンド・ワトソン・消耗品事業部マネージャーは「法的な義務は何もないが、企業責任として環境対策に取り組んでいる」と、欧州地域で環境対策が浸透していることを感じさせる。
植林は、CO2バランス社が取得したイングランド北西部に位置するカンブリア地区内の4エーカー(1万6187平方メートル)の斜面に、白樺やポプラ、柳など約4500本を植えた。同社が植林したすぐ横には、同じくCO2バランス社と契約する東芝の植生地がある。
OUKの袋畑芳久・副社長は「CO2削減に積極的に取り組むことで、維持費などのコスト削減もでき社会貢献もできる」と、環境対策を強化してきた理由を説明する。
■地道な努力の積み重ねで
欧州で排出するCO2は、大半をカンバノールドのアセンブリ拠点で占める。このため、同拠点では新社屋を建設してから2年程度でさまざまな対策を講じた。同地域は、「1日に天候が3回は変わる」という気候風土。8月上旬の取材当日は、弱い雨でTシャツに上着が必要な気温だったが、前日は快晴で気温が高かったという。同拠点では、夏場に湿気が少ない特有の気候を生かし、温度センサーにより自動的に窓を開閉して外気を工場内に循環させたり、自然光が工場内に届くよう設計してある。これにより夏期の強制冷房廃止や冬期の暖房用燃料を重油からガスへ全面的に切り替えるなどで、旧社屋に比べ電力消費を43%削減した。
ワトソン・マネージャーは「夜中、窓を開けて社屋を冷やしておくなど、地道な努力を積み重ねた」と語る。同拠点では、このほかにもトナーなど消耗品を顧客や販売会社を経由して無償回収し、委託先のリサイクルパートナーで道路の舗装などに役立つ材料にリサイクルする活動を開始。OKIデータの世界拠点ではOUKでの取り組みを参考に環境対策が本格化している。
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