その他
成長期に入った「法人携帯市場」
2008/12/01 14:53
週刊BCN 2008年12月01日vol.1262掲載
法人市場で携帯電話機の販売を中心とした製品・サービス提供に拡大の機運が訪れている。個人向け携帯電話の販売に飽和感があるなか、通信事業者各社が法人向けビジネス拡大に着手し始めたことで、販社もまた、法人顧客の獲得に力を注いでいる。まずは、法人単位で端末加入する新規開拓を進め、ソリューション提案に結びつける方針だ。(佐相彰彦●取材/文)
まずは端末加入の新規開拓から
ソリューション準備の販社も
■市場は2013年には約8倍へ 法人加入数は2倍以上に拡大
携帯電話の法人加入数は、個人加入数と比べて低い状況にある。調査会社のシード・プランニングによれば、2008年9月末の時点で法人の加入数は約1338万。個人利用では普及率80%以上であることを踏まえると、導入が進んでいないのが実状だ。
法人加入が少ない理由の一つとして、プライベート利用の携帯電話を業務でも使うケースが一般的になっていることがあげられる。会社が社員に携帯端末を支給(貸与)せずに、「通信費」などと称して給与に上乗せし、通話料を負担しているのだ。従業員100人以下の中小企業にこうした手法を採用する場合が多い。営業など外出機会の多い担当者も、「(個人用と会社用の)2台を持つよりは、1台のほうが煩わしくなくてよい」という意識をもちがちだ。
しかし、最近では内部統制などの観点から法人支給のニーズが高まりつつある。通話料を明確化したり、情報漏えい対策を強化するためだ。プライベートの利用がほとんどの社員の携帯電話料金を会社が負担するのは問題だし、個人の携帯電話に取引先の情報を登録させるのも危険な面がある。万一紛失した際に、会社の管理下にない携帯電話なので対処するのが難しくなるからだ。こうしたことから、これまで法人単位では未加入だった企業が加入の必要性を意識し始めている。シード・プランニングでは法人の加入数が2013年度(14年3月期)までに現在の2倍以上となる2846万にまで増えると予測している。
携帯電話の販社にとって、法人顧客の獲得で得られるメリットは大きい。法人では、携帯電話を通話利用するだけでなく、グループウェアをはじめとしたCRM(顧客情報管理)など業務アプリケーションとの連携ニーズが高まる可能性があるからだ。セキュリティやメールソリューション、モバイルセントレックスなど内線利用、位置情報、業界に特化した独自ソリューションなどを含めた法人向け携帯電話市場は、シード・プランニングによれば07年度に1640億円程度だったのが13年度には8倍程度も膨らんだ1兆2761億円まで拡大するとみられる。
■“単品売り”小規模案件がベースに コンサルや提案で次のステップへ
法人向け携帯電話市場の急拡大を見込んで、法人顧客を囲い込もうとするベンダーの動きが見え始めている。
携帯電話販社の丸紅テレコムでは、「現段階では、ボリューム販売が足下のビジネスとして最適」(取締役の永澤均・法人・ソリューション事業本部長)と判断して、携帯端末の“単品売り”を軸としながら新規顧客の開拓に力を注いでいる。「これまで法人加入していなかった企業に対して、いきなりソリューションを提案しても反応が鈍い。今のところ、携帯電話で求められるのは、まず第一に音声通話。それ以外ではせいぜいメールの活用で十分といった現実的なニーズに対応していく」としている。同社は各通信事業者の1次販売代理店であることから大量の端末在庫を保有しており、現段階では翌日導入にも対応できることを売りとしている。こうした販売方針によって獲得したユーザー企業は2500社に到達している。
次のステップとして同社が着手するのがシステム案件の獲得だ。ネットワークインフラの構築も行えることから、「携帯電話をベースとして、さまざまなソリューションを創造できる」と自信を示す。法人が携帯電話を活用していれば、「必ず社内システムとの連携を求めるようになるだろう」とみており、獲得したユーザー企業に対してコンサルティングを含めた提案を進めているのだ。また、ベンダーサイドから業務アプリケーションとの連動性を高めたモバイルソリューションのメリットを訴えていくことで、「法人向け携帯電話ソリューション市場を早急に立ち上げたい」考えもある。
大塚商会では、モバイル端末に対する多様なニーズに対応。現段階ではモバイルセントレックスなどの「音声系」をはじめとし、SFA(営業支援)を視野に入れたグループウェア、顧客サービスの拡充目的のCRM、セキュリティなどが代表例となっている。これらのソリューションを社内システムのリプレースを含めて提案しているのだ。伊藤昇・マーケティング本部テクニカルプロモーション部長代理は、「携帯電話ソリューションを導入する際、ユーザー企業は管理面をポイントに置いている。こうしたニーズを捉えてアプリケーション面で取り入れたい要望を聞きながら提供している」という。ユーザー企業の導入形態については、「特定部門で導入するなどのパイロット的な案件が多い」そうだ。これは大規模プロジェクトにつながるような小規模案件をキャッチアップしていると考えられる。同事業の今年度(08年12月期)売上高は、前年度の2倍を見込んでいる。
法人向け携帯電話市場が急拡大するとの予測が出ているとはいえ、現段階ではソリューションに対するニーズは低い。導入するとしても、部門単位のテスト的なケースが多いのが実状のようだ。しかし、こうした状況を踏まえて、現段階では獲得利益が薄くても着実に携帯電話のユーザー企業を増やしていったベンダーが、1兆円規模市場に到達した時点で主導権を握ることになるだろう。
法人市場で携帯電話機の販売を中心とした製品・サービス提供に拡大の機運が訪れている。個人向け携帯電話の販売に飽和感があるなか、通信事業者各社が法人向けビジネス拡大に着手し始めたことで、販社もまた、法人顧客の獲得に力を注いでいる。まずは、法人単位で端末加入する新規開拓を進め、ソリューション提案に結びつける方針だ。(佐相彰彦●取材/文)
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