携帯電話は“踊り場”ではない──。移動体通信事業者であるNTTドコモとKDDI、ソフトバンクモバイルの共通意見である。市場は成熟しているものの、今後はモバイルを切り口とした新しいサービスを次々と提供するというのだ。なかでも、3事業者が需要の掘り起こしとして狙っているのは法人市場だ。
通信事業者が可能性をアピール
このほど開催されたモバイルやワイヤレス関連製品の展示会「ワイヤレスジャパン2009」の初日。移動体通信事業者のNTTドコモとKDDI、ソフトバンクモバイルがそれぞれ登場した基調講演「移動体通信ビジネスと端末開発の将来ビジョン」があった。各事業者のテーマはさまざまだったが、講演の内容は共通して携帯電話が今後も大きな可能性を秘めているということ。個人の普及率が高いという点で、成熟期に入っている国内携帯電話端末市場の活性化を図る構えだ。なかでも、KDDIの小野寺正社長は、「携帯電話は決して“踊り場”ではない。むしろ日本経済を支えるマーケットとして、より発展していく」と語調を強めていたほどだ。
それぞれが新サービスをアピールしていたが、各社とも法人向け製品・サービスの創造に力を入れているようだ。「確かに、個人市場は普及率が高く、他社からシェアを奪うには障壁が高い。しかし、法人単位での契約は、まだまだ掘り起こせる。しかも、携帯電話を活用した個人ユーザーに対するサービス提供に向けたソリューション提案が行えるという点でも、大きな市場といえる」(ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長)。NTTドコモの山田隆持社長は、「産業機器をはじめとして、ITS(高度道路交通システム)や情報家電、放送、固定電話との融合サービスがポイントになってくる」という。
例えば、ITS関連で携帯電話を活用して自動車の整備をする仕組みを自動車メーカーに提供できる。加えて、「オープンOSでスマートフォンを次々と市場に投入していく。スマートフォンの販売を増やすためのポイントはアプリケーション」としており、今年度(10年3月期)中に、ユーザーが行うアプリケーションのダウンロードを簡素化する統合サービスモールを提供する計画だ。
KDDIは、無線LANとブロードバンド回線を組み合わせた「WiFi Win」をサービス化。これは、携帯電話をオフィス内で内線電話として活用するものだ。しかも、固定電話と組み合わせれば、通話料などのコスト削減につながることを訴えていく。また、「SaaSサービスが近い将来に台頭してくる」とみている。
ソフトバンクモバイルは、「今後は海外を視野に入れなければならない」(松本副社長)として、とくに携帯電話メーカーとのパートナーシップで海外で拡販できる端末の開発を進める。
法人市場で携帯電話を切り口としたシステム提案があることは間違いない。移動体通信事業者が力を入れていることからも、ビジネスチャンスにつながる可能性がありそうだ。(佐相彰彦)