11年度に07年度並み回復予想も
「全体として3年は巻き戻った」――。大塚商会の大塚裕司社長は2月3日、決算会見の席上で「リーマン・ショック」以降の景気後退が業績に及ぼした影響の厳しさを吐露した。昨年2月に公表した期初予想も大幅に下回り、2008年度(08年12月期)の連結決算(1~12月)は本業の儲けを示す営業利益が前年同期に比べ9.9%減の270億円に後退。09年度(09年12月期)に関しては大塚社長初の「減収減益」予測を立てたものの、2011年度には07年度並みの水準に戻すと確約した。しかし、主力事業である機器販売の見通しは依然暗い。次なる「ストック・ビジネス」の構築が急務になりそうだ。
同社の08年度連結決算は、売上高が前年同期比0.5%減の4671億円、経常利益が同9.5%減の276億円、最終利益が同23.8%減の143億円で減収減益となった。ちなみに、期初に立てた業績予想は売上高が4890億円、営業利益が309億円で、それぞれ5%弱、13%弱も計画予算を下回ったことになる。大塚社長は「公表予算未達で前年度割れ。申し訳ない」と陳謝し、心中の苦しさが表情に現れていた。
業績低迷の原因は、他のSIerと同じく「リーマン・ショック」以降の景気悪化にある。この時期から国内企業のIT投資は「先送り」「抑制」と鈍り始めたのだ。同社の場合、ネット通販を含めた顧客1社当たりの売上高が96万6000円となり、前年度の116万4000円を大きく下回った。セグメント別にみると、プリンタやサーバーなど機器販売を含めたシステムインテグレーション(SI)事業が前年度比4.7%減だったのに対し、ネット通販「たのめーる」などサービス&サポート事業は同6.1%伸びた。
大塚社長は「当社の事業がSIだけだと仮定すると、(08年度の)営業利益は前年同期に比べさらに4.7%は減っていた」と、2ケタ減もあり得たという。社長就任から着々と拡大してきた「ストック・ビジネス」が100年に一度と言われる経済危機の影響を最小限に食い止めた形だ。
ただ、売上高の6割弱を占めるSI事業の立て直しは急務で、同事業が沈滞すれば2011年度の回復は望めない。会見後に記者の質問に答えた大塚社長は「サーバー統合・仮想化が進み、この環境を実現するために高パフォーマンスのサーバーが必要」と、サーバーのリプレース需要が一時的に発生するとの見通しを示す。さらに、別の取材で本紙が得た感触では、今年中に商用サービスを開始する「WiMAX」に関連した「新たなストック(サービス)」を求めていく考えも示唆している。(谷畑良胤)