機能拡張パッケージで囲い込みを
SAPジャパン(ギャレット・イルグ社長兼CEO)は、ERPやCRMなどのソフトを統合したスイート製品の新版「SAP Business Suite 7」を発表した。昨年末から一部ユーザーに限定して出荷していたが、5月に一般ユーザーにも出荷する。機能強化が簡単にできる「enhancement package」と呼ばれる拡張パッケージの適用範囲を広げることで、ERPのアップグレード推進と、ERP以外の製品拡販につなげようと目論んでいる戦略商品だ。

「SAP Business Suite 7」は、複数の基幹系アプリケーションを総合したスイート製品である。「SAP ERP」やCRMの「Customer Relationship Management」、SCMの「SAP Supplier Relationship Management」「SAP Supply Chain Management」「SAP Product Lifecycle Management」の5タイトルと業種別に用意したアプリで構成。SOA化しており、各アプリ共通のインタフェースを持つ。SAP製品のなかでもかなり大規模システム向けの製品だ。これらは、SAPの既存パートナーを通じて販売する。
このスイート製品の特徴は、「enhancement package(エンハンスメントパッケージ)」という機能拡張パッケージにある。ソフトの機能を拡張するにはアップグレード作業が必要となる。ただSAP製品は、企業にとっては止められないミッションクリティカルシステムで活用されるケースが大半で、しかもカスタマイズされている場合が多い。アップデートを可能な限り簡素化し、時間を短縮したいというニーズがユーザー企業側に根強くある。
「enhancement package」はこの要望に応える形で、稼働中システムへの中断を通常のアップグレード作業に比べて軽減させ、最小限に抑えることができるという。また、一般的なソフトのアップグレードよりも、拡張したい機能だけを選択して導入できるため、システムの膨張化も抑えることができる。「enhancement package」は、同時期に一括提供するのでIT投資計画も立てやすくなる。同パッケージは約150種類用意され、ユーザーは必要なものを選んで導入する。
すでに「SAP ERP」では、「バージョン6.0」から採用し、これまでに3個の「enhancement package」を提供、1800件以上のダウンロード実績がある。今回、それをERPだけでなくSCMなど他のアプリでも利用可能にしたわけだ。
田村元・バイスプレジデントカスタマーイノベーションセンター本部長は、「『SAP/R3』(現「SAP ERP」)とは比べ物にならないほど機能を豊富に揃えていながら、容易に機能拡張ができる」と強調。SAPジャパンによると、国内ではすでに40%のユーザーが「SAP ERP 6.0」にアップグレード済みという。「SAP ERP」のアップグレードを推進しながら、今回「enhancement package」を他アプリでも適用できるようにしたことで、他ソフトにもSAP製品の採用を勧め、ユーザーを囲い込むつもりだ。(木村剛士)